技能実習・特定技能

★特集=こんなに違う送出機関の費用

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2019年07月26日

送出機関には「当たり外れ」があり、送出機関ごとに費用や日本語教育の内容が大きく違います。知人だけに頼らず自分で情報を集めて送出機関を選ぶだけで、日本に行くための支出や借金を大きく減らせる可能性があります。また、日本語をある程度身に付けてから日本に行く方が、実習先での仕事も円滑に進み、日本で良い人間関係や良い思い出をつくれる可能性が高まります。

1.送出機関によって数千ドルの違い?

日本で技能実習をするためにはベトナムの送出機関に依頼しなければなりません。多くの人が親戚や友人・知人、学校の先生などの紹介で送出機関を選んでいます。しかし、どの送出機関に依頼するかによって技能実習で得られる実益が千ドル単位で変わります。また、日本語をほとんど理解できない状態で日本に行くと、実習先でつらい思いをすることが多くあります。

技能実習生の両親の知識と行動次第で実習生の日本での生活も3年間で得られる実益も大きく変わってきます。それでは、実例を見て行きましょう。

2.「高い方が良い」は本当?

「安い費用の送出機関は信用できない」「友人が使った送出機関なら間違いない」と考える人がいます。はたして本当にそうでしょうか? 下記の表は、KOKORO編集部が技能実習生や元実習生に直接取材した「3年間の収支」です。表の内容を分析してみると、意外なことがわかります。

◆送出機関への支払額と技能実習3年間の送金額の実例(差額順)

実習開始年 A:送出機関に支払った額 B:日本からベトナムへの送金額か
送金見込額(3年分)
収支(B-A) 実習現場
2018 140,000,000 ₫ ¥3,500,000 778,229,550 ₫ 638,229,550 ₫ 建設
2018 140,000,000 ₫ ¥3,500,000 778,229,550 ₫ 638,229,550 ₫ 建設
2017 95,000,000 ₫ ¥3,000,000 667,053,900 ₫ 572,053,900 ₫ 農業など
2019 105,000,000 ₫ ¥3,000,000 667,053,900 ₫ 562,053,900 ₫ 食品工場
2017 124,000,000 ₫ ¥3,000,000 667,053,900 ₫ 543,053,900 ₫ 工場
2018 135,000,000 ₫ ¥3,000,000 667,053,900 ₫ 532,053,900 ₫ 養鶏場
2018 135,000,000 ₫ ¥3,000,000 667,053,900 ₫ 532,053,900 ₫ 工場
2016 145,000,000 ₫ ¥2,800,000 622,583,640 ₫ 477,583,640 ₫ 食品工場
2019 115,000,000 ₫ ¥2,500,000 555,878,250 ₫ 440,878,250 ₫ パン工房
2015 90,000,000 ₫ ¥2,000,000 444,702,600 ₫ 354,702,600 ₫ 工場
2018 100,000,000 ₫ ¥2,000,000 444,702,600 ₫ 344,702,600 ₫ いちご園
2016 220,000,000 ₫ ¥2,500,000 555,878,250 ₫ 335,878,250 ₫ 食品工場
2014 142,000,000 ₫ ¥2,000,000 444,702,600 ₫ 302,702,600 ₫ 工場
2017 187,500,000 ₫ ¥2,000,000 444,702,600 ₫ 257,202,600 ₫ 食品工場
2015 180,000,000 ₫ ¥1,500,000 333,526,950 ₫ 153,526,950 ₫ 工場
2018 150,000,000 ₫ 失踪 失踪 少ない 建設
2017 147,000,000 ₫ 失踪 少ない 工場

・取材:KOKORO  ※100円=22,235VND(2021年1月26日現在)

赤で囲った部分が「日本からベトナムへの送金額(3年分)」から「送出機関への支払い額」を引いた収支(実益)です。その額が大きい順に並べました。この表から次のようなことがわかります。

「高ければ良い」は本当?

黄色を付けたケースは送出機関の費用が特に高かった5例です。一番高かったのは⑪(220,000,000ドン)で、⑨(90,000,000ドン)や②(95,000,000ドン)の2倍以上かかりました。しかし、3年間でベトナムに送金できた額は、逆に②が⑪を約111,000,000ドン上回りました。⑨も、送金額は⑪より少なかったのですが、実益では⑪を上回りました。

安い送出機関で平均以上の実益

この表で送出機関に支払った費用の平均は約140,000,000ドンです。⑦を除いて、収支の大きかった上位10例は送出機関の費用が平均以下でした。

青い色を付けたケースは送出機関の費用が特に安かった5例です。送出機関の費用は平均より25,000,000~50,000,000ドン安く、3年間の収支(実益)は平均以上でした。

多額の借金は失踪につながりやすい

⑮と⑯では実習生が失踪しました。訪日前の借金が多いと実習生の重荷になり、失踪につながりやすくなります。失踪すると、仕事も生活も不安定で、多くの場合、3年分の送金総額は低くなります。そして、在留期間が切れるとオーバーステイ(犯罪)になります。

3.高い費用の理由

ベトナム政府の規定では、送出機関による日本語教育費は約520時間に対し590万ドン以下、送出手数料は3,600ドル(USD)以下(3年契約の場合)となっています。しかし、実際の支払いはこれよりかなり高くなっています。費用が高くなる要素には次のようなものがあります。金額は日越の複数の関係者への取材でわかった相場です。

①日本の監理団体(組合)へのキックバック=実習生1人につき1,000~1,500ドル(USD)

②日本の監理団体や受入企業への接待費=実習生1人あたり数百ドル(USD)

③実習生を送出機関に紹介してくれる人(ブローカー)への支払い=実習生1人につき500~1,500ドル(USD)

多くの場合、日本の監理団体(組合)が技能実習生の受入会社(求人)を探し、その求人をベトナムの送出機関に紹介します。送出機関が求人1人につき監理団体の幹部に1,000ドル(USD)~1,500ドル(USD)相当の謝礼をキックバックする事例がまん延しています。また、監理団体や受入会社の幹部がベトナムに視察や面接に来ると、送出機関が接待をします。

こうした費用が実習生から送出機関への支払いに上乗せされると、費用が高くなります。しかし、最近はキックバックを支払わない送出機関やキックバックを受け取らない監理団体も少しずつ増えてきました。こうした送出機関や監理団体は、費用が適切なうえ、実習生の面倒もよくみてくれる傾向があります。

それでは、そのような送出機関や監理団体を探すにはどうしたらよいでしょうか。次ページ以降でお伝えします。