文化

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2020年11月3日 文化

食べたらすぐに横になる…とても気持ちの良いことですが、日本ではやめておきましょう。 

霊柩車を見かけたら親指を隠す

およそ1年前の雨の日、私は娘のために傘を持って学校にいき、一緒に歩いて家に帰りました。帰り道、私は娘やその友だちの後ろを歩いていました。

黒い車が私たちのそばを横切ろうした時、娘の友だちの1人が突然「親指を隠せー!」と叫んだのです。彼女は急いで両手を背中に回し、他の友だちもそれに続きました。私と娘だけ、その時何が起きたか、何をすべきだったかを理解できていなかったのです。

後から聞いて初めて分かったのですが、日本の子どもは大人たちに「霊柩車を見かけたら親指を隠して」と教わるようなのです。日本人にとって親指というのは、“一家の代表”や(書いて字の通り)“両親の指”と言われており、葬式や縁起が良くないことを思い起こさせる霊柩車を見た時、“両親を守らなきゃ”という責任感から親指を隠すと言われています。また昔は、霊魂が親指から侵入するのを防ぐために親指を隠す、あるいは親指を握ることで気を高めて身を守るとも考えられていました。その考えが現代に伝わり、親指を隠すことが“親”と結びつき、「親の死に目に会えない」「親が早死にする」などといった風習に変わっていったとも伝えられています。

この親指を隠すという独特の風習をもう少し掘り下げてみると、かなり昔からあるものだとわかりました。日本の古い民話によると、「夜道を歩く時は『親指を隠す』。そうすると狐に化かされない」とか、疫病を避けるには両手の親指を中に握るとよい…とも言われているようです。

今でも多くの大人が霊柩車を見ると、自然と親指を隠してしまうそうです。風習を信じる気持ちが自然と根付いているんですね。

湯飲みの茶柱は幸運の前兆

お茶をいれる。湯のみに注ぎ、香りや味を楽しむ…お茶をいれる過程は一種の芸術であり、優雅でリラックスできる時間であります。いれたときの香り、湯気、そして茶の色合い…これに勝る素晴らしい至福が他にあるでしょうか。

しかし突然、急須から茶の葉や茎のカケラが出てきてしまい、あなたの湯のみに入ったとき、あなたはどうするでしょうか。つまんで捨ててしまう以外に選択肢はないのでは?

ベトナムではそれでOKですが、日本では好まれることではありません。もし湯のみの中に小さい茶の茎が一本、立ち上がるように浮いてきたら、それは「茶柱」と日本では呼ばれているのです。日本では、この茶柱が湯のみの中で立てに浮いた状態になることを「茶柱が立つ」と呼びます。

日本人にとって「茶柱が立つ」のは幸運の前兆であり、一族に繁栄と健康をもたらすのだと信じられてきました。しかし、茶柱には俗信もあり、その昔お茶の商人が質が良くないため売れ残る二番茶を売りやすくために吹聴した話が元になっているとも言われています。

数年前、あるコマーシャルを見ました。年寄り夫婦が自宅でお茶を楽しんでいます。夫が自分の湯のみの中に茶柱を見つけ、うれしそうな顔をしてそっと妻の湯のみと入れ替えたのです。最近体調が優れない妻を気遣う夫の、夫婦愛にあふれた感動の映像でした。

食べた後すぐに寝ない

お腹が張ったり、目の筋肉が緊張してしまったとき、ベトナムではその解消のために昼食後に短時間の昼寝をとるのが最善とされています。しかし日本の子どもたちの中には(おかしなことに)食べた後すぐに寝ると「牛になる」と信じている子たちが多いのです。

実はその妙な話は、大人たちが子たちに行儀よく振舞ってもらうために大昔から用いているものなのです。

日本人は昔、(イスではなく)木の床や畳に座って食事をしていました。そのため食後すぐにゴロンと寝そべることも多かったそうです。年配者からみるとそれは怠惰で失礼な行為と思われていたため、昔の人たちは子どもたちに「牛になるぞ」と言って怖がらせ、寝そべることをしないよう戒めたそうです。

現在では、食べてすぐ寝てしまうことは“太りやすい行動”であるとも言われています。多くの人たちは、食べてすぐ寝るのは体重をいち早く増やしたい「お相撲さん」だけの特権だと(冗談めかして)言っています。日本人は特に体形を維持することに熱心ですので、体重が増えてしまうことをとても恐れているのです。

(Thach Long)