文化

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2020年07月28日 文化

     2016年8月の蒸し暑い日に日本に到着したばかりの私は、成田国際空港から大学の寮までが遠くて疲れてしまい、つい「喉が渇いた」と口走ってしまいました。その時のこと。入学生の手伝をしている先輩がサッと冷たい水を1本差し出してくれたのです。私はビックリしつつ「えぇ!?どこで買ったんですか?ここは田舎で、コンビニもスーパーもないけど…」と質問しました。すると「そこですよ」と先輩が笑いながら線路沿いにある自動販売機を指して答えてくれました。

     高校生の時、サッカー場の隣に自動販売機が設置されたというニュースを聞き、とても嬉しくなって早速買いに行ったのです。ただ残念ながらいくらお金を入れてもペットボトルは出て来ませんでした。だから、日本ではどんな田舎でも自動販売機が手軽に使えるのを知ってすごくビックリしました。

     自動販売機が一番多い国は日本というわけではなく米国なのですが、人口比で言うと日本が世界一だそうです。23人に1台の自動販売機が設置されています。毎年の自動販売機の売上は50億円で、世界一になります。

     自動販売機は、慌ただしい日本社会の中で生活の重要な一部となっていると言えます。なぜなら、年中無休24時間でいつでも購入できるからです。サラリーマンも学生さんも朝早くから通勤や通学のため電車に間に合おうと、家で朝ごはんも食べずに駅まで全力で走っていることが多いですね。それでは元気いっぱいの1日が始まりません。だけど、駅のホームにある自動販売機でパンを買って食べれば、お腹も満たされて仕事をズムーズに進められます。

     また、日本の自動販売機から日本人の優れた技術力や創造力も感じることができます。世界最初の自動販売機ができたのは19世紀のイギリスだと言われていて、タバコやお菓子や飲み物が売られていましたが、現存する日本最古の自販機は、発明家の俵谷高七による「自働郵便切手葉書売下機」で、切手と葉書の販売だけでなくポストの機能も備えたアイデア製品だったのです。

     今では、日本ならではの技術力が生かされ、色んな種類の自動販売機があります。バナナやおでんやピザなども自動販売機で購入できます。更に、冷たい飲み物も温かい飲み物も一つの自動販売機で売られているのは日本だけなのです。冬、気温が氷点下に下がった時、暖かいコーヒーを1本買って電車を待ちながら飲むのは最高です!また日本の自動販売機はデザイン性も高く、ロボットやピカチュウなどのキャラクターを使った可愛いデザインがあり、利用する人を楽しませてくれます。

     私には自動販売機に関する忘れられない思い出がもう一つあります。ある日アルバイトを終えた私は、疲れ切って終電で寝てしまい、全く知らない田舎町の駅で駅員さんに起こされました。人気も少なく24時間のレストランもない所に着いてしまい、1人で朝まで駅で寝らなければないこととなり、とても怖くて悲しくなりました。

     その時、私と同じように寝過ごしてしまった日本人の男性が、自動販売機で買った温かいレモンティーとコンビニからもらった段ボールを私に差し出しました。「これを飲んで。暖かくなるよ!」。そのレモンティーは、不安で落ち込んでいた私を救ってくれました。それから私は、日本も日本人も、そして自動販売機も以前に増して親しみを感じ、愛するようになったのです。