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今回の先輩

Nguyen Thi Lua (グエン・ティ・ルア)さん

1992年生まれ、タイビン省出身
2010年 6月 Vu Thu高校卒業
2013年 1月 広島県で技能実習
2016年 1月 ベトナムに帰国
2017年10月 未来の杜学園日本語科入学
2019年 3月 未来の杜学園日本語科卒業
2019年 4月 公立大学法人宮城大学入学
MAIL: Nguyenlua1705@gmail.com

はじめに

 外国人が日本の大学で留学するためには、日本学生支援機構(JASSO)の「日本留学試験(EJU)」を受け、その成績を大学に提出しなければなりません。ここでは、私がどうやって日本の公立大学に入ったのかについて紹介します。また、私が大学に入る前、日本語学校に通いながらベトナム人の仲間たちと一緒に勉強したり旅行に行ったりして充実した日々を過ごしたことや以前の技能実習時代の生活、「技能実習には当たり外れがある」といったことについてもお伝えします。

日本の公立大学に入学

宮城大学のキャンパス。
まだ新しく、モダンでおしゃれな建物です。【2019年7月撮影】

 私は2019年4月に宮城大学に入学し、事業構想学部で経営関係の勉強をしています。大学の講義と自習、アルバイト、自炊、買い物などが私の生活パターンで、長期休みには友人と旅行に行くなどして息抜きをしています。4年間で大学を卒業し、日本で就職するのが夢です。

日本での生活とアルバイト

アルバイト先の飲食店では、格安でまかないの食事を出してもらえることも多いです。

 日本語がある程度話せると、様々なアルバイトができます。私は居酒屋の店員(接客、ドリンクバー)とコンビニの店員(レジと品出し)をかけ持ちしていますが、日本の法律が留学生に許可している労働時間(毎週28時間/長期休暇時は40時間)を守っています。

 そして、今年度は日本学生支援機構(JASSO)経由で奨学金(文部科学省外国人留学生学習奨励費)を頂いており、大変助かっています。お金の余裕はありませんが、支出を節約して何とかやり繰りしています。就職したらもっと給料がもらえるので、それまでの辛抱です。

※留学生向け奨学金 https://www.jasso.go.jp/ryugaku/study_j/scholarships/brochure.html

私の家計簿(1カ月の平均)

※100円=21,590 VND(2019年9月25日現在)

収入(合計98,000円~178,000円)

アルバイト2件(コンビニ店員、居酒屋店員)50,000円~130,000円
※大学の長期休暇(夏休みなど)のときは、アルバイトを長くできる。
※大学の試験のときや一時帰国時は、あまりアルバイトができない。
日本政府の奨学金48,000円

支出(合計 93,800円~105,300円)

家賃 5,000円
※1人暮らし
※ワンルーム、トイレ、シャワー&バス
※古いアパートだが、内部は改装済み。
所有者が外国でのボランティア経験があり、留学生向けに安く貸している。大学の先輩ベトナム人に教えてもらった。
光熱費 7,000円
※電気・水道・ガスの合計
インターネット4,300円
携帯電話5,000円
食費・雑費25,000~35000円
※バイト先の飲食店で格安で食べる日もある
※大学になるべく弁当を持参しランチ代を節約
※外食、衣類、教材費など含む
授業料 45,000円
ガソリン代 2,500~4,000円
※日本の運転免許を取得しミニバイクで移動

差額(貯金)平均30,000~40,000円

※大学の試験などでアルバイトがあまりできない場合や緊急の出費があった場合、貯金を取り崩して生活する月もある(=その月の差額はマイナス)。
※ベトナムへの仕送りはなし。貯まったお金は主に旅行や一時帰国、保険などに使う。

運に恵まれ家庭的な職場に(技能実習)

広島県での技能実習時代、週末はいつも、ベトナム人の技能実習仲間と一緒に「日本のお父さん、お母さん」の家に入り浸りでした。

 2013年に技能実習で日本に初めて来ました。先に日本で技能実習をしたいとこの女性から「よい会社で働けて、給料もよかった」と聞いたのがきっかけです。私の技能実習先は広島県呉市のパイプ製造会社「株式会社 セイエン」で、約30人の職場でした。私は主に製品検査を担当しました。
※「セイエン」 http://seien21.com/seihin.html

 「セイエン」の人たちは皆やさしく、仕事を親切に教えてくれました。ミスをした時の注意の仕方も穏やかでした。毎月の給料から税金や社会保険料、寮費を差し引いた残りの額(=手取り額)は毎月10万円~15万円。私が送出機関等に支払うためにベトナムで借りたお金は約3億ドン(約140万円)でしたが、日本に来て1年で返済できました。しかし、実習先にはいわゆる「当たり外れ」があり、私の幼なじみの男性は毎月の手取り額が7~11万円で、私と同額の借金を返すのに1年半かかりました。彼の職場は雰囲気も悪く、上司の指導も乱暴だったそうです。

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運良く親切で家庭的な実習先に

 私が勤務(実習)した「セイエン」の経営者は私たちのこうした経済事情をよく理解し、毎日最低1時間は残業をさせてくました。そして、忙しいときは、平日の残業が2時間に増えたり土曜日出勤(午前8時~午後5時)もあったりし、給料がさらに増えました。

 また、会社は私たちがCD教材を使った日本語学習をできるように、終業後も使えるパソコンを貸してくれました。そして、日本語能力試験(JLPT)の際には、社長の弟さんが往復約3時間かけて車で私たちを試験会場に送り迎えしてくれました。「遠い国から来て働いてくれているんだから、大事にしてあげよう」という気持ちが経営者にも日本人従業員らにも感じられ、あたたかい家庭的な雰囲気でした。当時、技能実習生は中国人男性が2人、ベトナム人女性が6人いましたが、そういう気遣いを感じ、皆、やる気を出して働いていました。

日本でのお父さん、お母さん

 職場のある年配の女性は私たち実習生をいつも自宅に招いてくれました。私たちはこの女性を「お母さん」、その旦那さんを「お父さん」と呼び、毎週のように数人でこのご夫婦の家におじゃまし、「お母さん」と一緒にご飯を作って食べたり、テレビを見たり、おしゃべりをしたりしました。また、「お父さん」は私たちをよく車で買い物や観光に連れて行ってくれました。本当に楽しい日々でした。

 社長もとてもいい人で、私たちが3年間の技能実習を終えて帰国するとき、「勉強や将来の仕事に使いなさい」と言って好きなパソコン(新品)を1台ずつ買ってくれました。私はそのパソコンを今も使っています。

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3年間の実習を終えて帰国する際、「これからの勉強や仕事に使いなさい」と私たち一人一人に社長が買ってくれたパソコン。大事に使っています。

対照的だった幼なじみの実習先

 一方、私と同じ送出機関で同期だった幼なじみの男性が勤務した福井県内の実習先(繊維工場)では、毎月の手取りが7~11万円しかなく、お金に困って万引きに手を染め、警察に逮捕された同僚もいたそうです。仕事中に失敗すると、「ばか!」などと乱暴な言葉で怒鳴られることも多く、精神的にもつらかったそうです。幼なじみは、もう日本には来たくないようです。

送出機関や紹介エージェントへの支払い

 私が訪日前に借りた3億ドンの主な使途ですが、ハノイの送出機関を紹介してくれた人(紹介エージェント)に約3,000万ドンを支払い、送出機関には授業料、教科書代、寮費、渡航手続き費用、飛行機代などを支払いました。また、日本に行くときに「保証金」として送出機関に約1億ドンを預けさせられました。これは、私たちが技能実習を途中でやめたり日本で失踪したりした場合に没収されるお金です。私は3年間の技能実習を終えて帰国後、この1億ドンを返してもらいました。

【編集部からのアドバイス】
 技能実習制度では、送出機関が仲介者(紹介エージェント)から実習生を紹介してもらったり仲介者の手数料受け取りを認めたりすることは禁じられています。送出機関が保証金を預かることも禁止です。また、日本への往復の旅費についても技能実習先(受入企業)が負担することになっています。こうした費用については、契約前に十分に確認し、金額が不透明な場合は、送出機関の選択も検討しましょう。在ベトナム日本国大使館は、他の送出機関を探す際には、仲介者に頼らず送出機関に直接コンタクトするよう勧めています。

※外国人技能実習機構(OTIT)が公表している送出機関の一覧
https://www.otit.go.jp/files/user/190906-3.pdf


 技能実習制度では、送出機関が仲介者(紹介エージェント)から実習生を紹介してもらったり仲介者の手数料受け取りを認めたりすることは禁じられています。送出機関が保証金を預かることも禁止です。また、日本への往復の旅費についても技能実習先(受入企業)が負担することになっています。こうした費用については、契約前に十分に確認し、金額が不透明な場合は、他の送出機関の選択も検討しましょう。在ベトナム日本国大使館は、他の送出機関を探す際には、仲介者に頼らず送出機関に直接コンタクトするよう勧めています。

※外国人技能実習機構(OTIT)が公表している送出機関の一覧
https://www.otit.go.jp/files/user/190906-3.pdf

頑張った日本語学習と再訪日

 私はハノイの送出機関で日本語を7カ月間勉強してから訪日し、訪日後も目標を立てて勉強しました。月~金曜日の夜9時~12時と土曜日に勉強しました。そして、訪日して1年目に日本語能力試験(JLPT)のN3に、2年目にN2に受かりました。3年目のN1には失敗しましたが、2017年に再訪日後、最初に受けた試験でN1に合格しました。

 ベトナムに帰国後しばらくは、送出機関の日本語センターで日本語の教師をしていました。しかし、日本での3年間がとても楽しかったのと、技能実習時代の勉強のおかげで日本語もかなり話せたので、もう一度日本に行こうと思いました。技能実習の送出機関での同期で技能実習先の職場も近かった親友のフエさんも一緒に再訪日しました。

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 「未来の杜学園」を選んだのは、この学校なら技能実習経験者でも留学の在留資格を比較的取りやすいと聞いたからです。「セイエン」での技能実習の先輩から「未来の杜学園」のことを教えてもらい、あとはインターネットで入学の仕方を調べました。ハノイで英語、数学、日本語の試験を受け、卒業後は大学進学を目指すことを条件に入学を認めてもらいました。

※「未来の杜学園」 http://ss-nihongo.com/vi/index.html

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大学進学のための勉強

 日本の大学に留学するためには、日本学生支援機構(JASSO)の「日本留学試験(EJU)」(年2回)を受け、その成績を大学に提出しなければなりません。文系の私は「日本語」「総合科目」「数学」を受けましたが、最初はあまりよい成績ではありませんでした。しかし、ベトナム人留学生8人が週2回集まって一緒に勉強するグループに入れてもらってから学力が上がり、半年で成績が大きく伸びました。この仲間たちとは飲み会をしたり小旅行に行ったりもしました。宮城大の受験では、EJUの成績を提出し作文の試験と面接を経て合格しました。

※「EJU」 https://www.jasso.go.jp/en/eju/index.html

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 この勉強仲間のことですが、先輩のベトナム人大学生(女性)がフェイスブックで呼びかけた交流会に集まったベトナム人の日本語学校生らが週2回、公共施設「仙台国際センター」の会議室に集まって一緒に勉強しており、私も後から入れてもらいました。同じ日本語学校の人も違う日本語学校の人もいましたが、国公立大学を目指す人ばかりでした。普段の会話はベトナム語ですが、勉強会の間は日本語だけでやり取りをしました。呼びかけ人のベトナム人大学生も私たち後輩に日本語の指導をしてくれたり、面接練習で面接官役をやったりしてくれました。日本に住むベトナム人が情報交換するためのフェイスブックのページがたくさんありますので、日本に来たらチェックして交流会などのイベントを探してみることをお勧めします。

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↓「総合科目」ではこの問題集を使いました。
https://www.ask-books.com/jp/eju/

小旅行で日本を満喫

 留学のために再訪日してからは、友人たちと一緒にあちこちに旅行をしています。日本語学校時代は大学受験を控え長い旅行はできませんでしたが、近場の観光地を軒並み制覇しました。前から行きたかった「蔵王」、風情のある「銀山温泉」、「山寺」の紅葉、青い海――詳しくは以下の写真でご覧ください(^_^)

将来は日本で長く働きたい

 私は当面のお金を稼ぎたくて技能実習で日本に来ましたが、3年間の実習生活で日本が本当に好きになったので、また日本にやって来ました。留学から就職までは少し時間がかかりますが、日本で専門学校や大学を卒業して就職する場合には、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得できますので、技能実習と違って勤務年数の制限がありません。これは、ベトナムで短大卒以上の学歴がある場合にも取得できます。

 技能実習の場合は、本文で紹介したように、実習先(受入企業)よって当たり外れがあります。私はいい職場に恵まれて本当によかったと思っていますが、よい技能実習先に当たるかどうかは運に左右される側面も大きいです。しかし、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で働く場合は、自分に合った職場を選べますし、場合によっては転職することもできます。私は日本が本当に好きなので、できるだけ長く日本に住みたいと思っています。神戸の大学に通っている親友のフエさんも同じ思いで、今はお互い離れていますが、将来、日本の同じ地域で務めることが私たちの夢です。

技能実習の送出機関以来の親友のフエさん(左)とツーショット。
将来は、 日本の同じ地域で就職するのが夢です。
【仙台市内で2018年12月撮影】