
日本に留学するベトナム人の数人に1人が日本語学校を卒業できずに帰国しています。
日本で生活に困ったベトナム人が犯罪組織に引き入れられるケースが増えています。
技能実習で期待していたほど給料がもらえないケースや残業代が支払われないケースもあります 。
一方で、日本の留学や技能実習で学歴や日本語能力を身につけ、いい仕事に就いたり、将来の可能性を広げたりしている先輩もいます。
先輩たちはどうやって成功したのでしょうか?先輩達の体験とノウハウをあなたに伝えます。
1992年生まれ、ハイフォン市出身
2009年5月 THUY SON 高校 卒業
2009年9月 ベトナムの外国語学校入学
2011年7月 千葉県内の日本語学校入学
2013年4月 千葉県内の専門学校
「ニホン国際ITカレッジ」入学
2016年4月 開知国際大学入学
2020年3月 開知国際大学卒業見込み、千葉県の会社に就職予定
私は日本に来て8年目で、千葉県の日本語学校から専門学校と大学に進学し、来年、千葉県の会社に就職します。最初は苦しい留学生活でしたが、日本語が上達すると、まじめな仕事ぶりを評価してくれる人も増え、たくさんの方々から親切にしてもらいました。
最近は、ベトナムから日本への留学生や技能実習生が大きく増えました。一方で、「日本では、学校に行きながらアルバイトで毎月20万円~30万円(約4300万ドン~6500万ドン)を簡単に稼げる」と聞かされて、準備もせずに来日し、アルバイトで体を壊す人や進級できずに日本語学校を中退する人、専門学校や大学に進学せずにベトナムに帰国する人も多くいます。
しかし、1、2年間の滞在だけでは日本のよさは分かりませんし、進学しないと給料も上がりません。これから日本に来るベトナムの後輩留学生たちに、十分な情報を持ってしっかりと準備をし、日本でいろいろな経験をしてほしいと思っています。
ここでは、
▽日本語学校の授業や寮生活は学校によって大きく違う
▽日本語を話せないとよいアルバイトがない
▽アルバイト先での会話で日本語が上達する
▽都心から少し離れた郊外での暮らしがリーズナブル
▽留学生を優遇してくれる大学がある――といったことについて書きます。
特に、私が日本で経験したアルバイトの内容や条件、アルバイト先の環境が日本語の上達に関係することなどを詳しく書きます。
これから日本に来るあなたの成功のために必要な情報を拾い読みしてくださいね(^_^)
日本に行こうと思った理由
私は2009年5月にハイフォンの高校を卒業し、大学受験に失敗しました。そこで、同年9月、ベトナム北部の外国語学校に入りました。その学校で日本留学の説明会に参加したのをきっかけに日本語の勉強を始めました。日本の大学卒の初任給は20万円(約4300万ドン)以上で、ベトナムよりずっと高いです。また、日本語を話せれば、アルバイトで貯金もできます。日本でお金を貯めて両親を日本旅行に招待しよう。そんなことを考えて日本留学を決めました。
外国語学校を卒業して2011年7月に来日し、千葉県内の日本語学校に入りました。渡航や日本語学校への入学の手続きは外国語学校がやってくれました。留学の初期費用として両親に約110万円(約2億3700万ドン)を出してもらいました。
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初期費用は、今なら、よく調べればもっと安くできますが、当時はベトナムからの留学生も技能実習生もほとんどおらず、情報がありませんでした。しかし、両親からお金を出してもらったのはこの時だけで、あとは日本でのアルバイトと奨学金(=返済不要)だけでやり繰りしてきました。
日本語学校での生活は学校によって大きく違います。これから日本に行く人は、このサイトに今後掲載されるいろいろな先輩の体験談などでよく情報を集め、しっかりと準備・選択してから日本に行くことをお薦めします。
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日本で最初は苦しかった
日本語学校の寮は学校によって大きく違います。私の住んだ寮はあまりよくありませんでした。10平方㍍に満たない小さな部屋に2人で住み、家賃は1人2万2000円(約475万ドン)。台所もトイレもシャワーも部屋の外にあって共同使用で、シャワーは10分・100円(約2万1000ドン)の有料でした。シャワー代を節約するために、台所でバケツ数個に湯をくみ、シャワー室で体を洗う寮生もたくさんいました。
※ちなみに今は自分で部屋を借りて快適に暮らしています
私の家計簿(1カ月の平均)
※100円=21,600 VND(2019年6月17日現在)
収入(合計120,000円~130,000円)
アルバイト2件(いずれも飲食店) | 130,000円 |
支出(合計110,000円~120,000円)
家賃 | 57,000×0.5=28,500円 ※同居のいとこと折半 ※個室×2、広い台所兼居間×1、トイレ、シャワー&バス ※南柏駅まで自転車で10分 |
光熱費 | 12,000×0.5=6,000円 ※同居のいとこと折半 ※電気・水道・ガスの合計 |
インターネット | 5,000×0.5=2,500円 |
携帯電話 | 2,500円 ※LINE PHONE(格安sim) |
食費・雑費 | 40,000×0.5=20,000円 ※同居のいとこと折半 ※バイト先の飲食店で格安で食べる日もある ※大幅ディスカウントされた総菜を買うことが多い ※いなかなので、農産物の安い直売店が近い (友達の車で買いに行く) ※衣類は量販店のバーゲンで安く買う |
交通費 | 3,500円 |
授業料 | 42,000円 |
その他(保険) | 5,000円 |
差額(貯金)平均10,000円
※長期休み(夏休み、春休み)はアルバイトを長く出来るので、1カ月の収入は160,000~180,000円になり、貯金が増える。
私は訪日前にあまり日本語を勉強せず、あいさつ程度の日本語しかできませんでした。今思えば、ベトナムでもっと日本語を勉強して日本語能力試験(JLPT)の4級(N4)を取得してから留学を始めれば、もっと効率がよかったと思います。
私の場合、日本語がほとんど分からないので、学校からアルバイトを紹介してもらえず、最初は収入がありませんでした。
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最初の仕事は、隣の埼玉県の弁当工場での仕事でした。弁当の調理や盛りつけで、あまり会話しなくてもできる仕事です。週に3、4回出勤して月給約12万円(約2590万ドン)でした。
労働条件は厳しく、勤務は深夜0時から朝6時まで。電車と送迎バスで通いましたが、遠いので、寮を22時過ぎに出て翌朝8時に帰宅する生活でした。その後、学校の授業(午前9時~12時30分)がありましたが、居眠りばかり。学校をずる休みすることもありました。授業後も夕方まで眠り、夜はまたアルバイトに出かけます。アルバイトは20時開始のときもあり、そのときは17時に家を出ました。出勤日は決まっておらず、その日の14時~17時に会社からメールが来ます。メールが届けば休みで、メールが届かなければ出勤です。土日も同じ状況だったので、予定が立てられませんでした。
また、50人以上のベトナム人留学生が働く職場だったので、日本語を使いません。授業は居眠り、職場はベトナム語なので、この職場で働いた9カ月間、日本語があまり上達しませんでした。
ところで、専門学校や大学に進学できずに帰国する留学生仲間もいましたが、私はアルバイト先の先輩留学生から「日本語学校だけで終わらず、日本で大学に進学した方が絶対にいい。大学を出たら、将来の給料がずっと高くなる」と常々教えられていました。「進学するためには、今の生活を続けていてはだめだ」と思いましたが、日本語が上達しないので、なかなか別のアルバイトに就けませんでした。
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アルバイト先で日本語上達
しかし、少しずつ勉強して日本語の力をつけ、日本語学校から別のアルバイトを紹介してもらうことができました。大手食品メーカーの工場勤務で、製品をチェックして選別する仕事でした。勤務は16時~20時30分で、週5回、時給950円(1カ月の給料は約9万円=約1943万ドン)。職場は寮から自転車で約30分でした。
しかも、外国人は同じ学校の3、4人だけで、日本人の従業員と話す機会がたくさんありました。
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物流センターでアルバイトをしていた2013年4月、日本語学校を1年半で卒業して専門学校「ニホン国際ITカレッジ」に進学(3年間)しました。本当は大学に進みたかったのですが、学力がまだ十分ではなかったので、まず専門学校に進みました。
専門学校時代は、日本語の先生(日本人)との接触を増やしたり、かけ持ちのアルバイトも日本語を話す機会の多いアルバイトを選んだりしました。かけ持ちのアルバイトは、日本語が読めるようになっていたので、お店の張り紙をみて電話をし、面接を受けるなどして見つけました。あるラーメン店では、週2、3回の勤務でしたが、深夜で時給が高いので、月6万円(約1295万ドン)もらうこともありました。こうして、私は専門学校在学中に日本語能力試験の2級(N2)に合格しました。
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両親を日本に招待
専門学校を卒業した2016年3月には、卒業式に合わせてハイフォンから両親を日本に招待し、私の家に3週間ほど泊まってもらいました。韓国人と結婚した姉とおい(=姉の息子)も韓国からやって来て合流し、浅草や皇居、鎌倉の大仏などを一家で観光しました。
私は専門学校で3年間皆勤(=無遅刻・無欠席)で学費も滞納したことがなかったので、卒業の時に学校から表彰されて10万円をもらいました。両親の招待には、そのお金とアルバイトで貯めたお金を使いました。念願の親孝行が出来た瞬間でした。
大学進学 そして就職内定 いなか暮らしのすすめ
2016年4月、晴れて千葉県柏市の「開知国際大学リベラルアーツ学部」に入学しました。今は4年生で、来年春、ベトナム人の先輩から紹介された千葉県の運送会社に就職する予定です。
私が開知国際大学を選んだ理由はいくつかあります。
柏市に近い大学をインターネットで検索すると、ほかにもたくさんの大学が出てきましたが、留学生への対応が一番よかったので、この大学を選びました。皆さんもよく調べて学校を選んでくださいね。
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最後に
留学するには、信頼できるウェブサイトなどで情報を収集し、きちんと選択と準備をしてから訪日することが大切です。日本語学校の授業も寮生活も学校によって大きく異なります。また、日本語が少しはできないと、よいアルバイトが見つかりません。日本に行く前に日本語能力試験の4級(N4)を取得できれば可能性が広がります。
日本に行ってからは、アルバイト先で会話しながら日本語の上達を目指してください。また、いくつかの職場を経験すれば、自分に合ったよい職場も見つかります。
大学に進学する際は、都心だけでなく郊外やいなかの大学も調べてみてください。留学生に有利な大学、暮らしやすい地域がきっと見つかります。いずれにしろ、日本に行ってからアルバイトばかりでなく、しっかり勉強をすることが大切です。
冒頭にも書きましたが、「日本に行けば、学校に行きながらアルバイトで毎月20万円~30万円を簡単に稼げる」とだまされて来日する人もいます。しかし、実際には留学生は週28時間(夏休みは別)しか働けません。それに、アルバイトばかりで進学せずに帰国しても給料は増えません。
そして、1年半や2年の短い滞在では日本のよさは分かりません。日本語を話せず一つか二つのアルバイトしか経験せずに帰国すると、親切な職場に巡り会う機会がない場合もあります。留学で日本に行くからには、専門学校や大学に進学し、学力を身につけて日本やベトナムで就職するというしっかりした目標を持って行ってほしいと思います。
私が日本にきて一番印象深いのは電車やバスなどの公共交通です。時間も正確でスピードも速く、どこにでも行けます。交通以外のインフラが整っていて便利で空気もきれいです。これからも日本での生活を楽しみたいと思っています。
これから留学する皆さんは、しっかり情報収集をして自分なりのキャリアプランを立て、きちんと準備をしてから日本に行ってくださいね。