体験談(留学・高度)

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By KOKORO(毎日新聞社+VAIJ主催、在ベトナム日本国大使館など後援)

今回の先輩

フィン・ティ・タオ・ニさん
  • 2013年 6月フーバイ高校卒業
  • 2013年 9月フエ外国語大学日本言語文化学科入学
  • 2016年 4月ダイワアカデミー(日本語学校)入学
  • 2017年 12月フエ外国語大学卒業
  • 2018年 3月ダイワアカデミー卒業
  • 2018年 4月エール学園デュアルビジネスコース入学
  • 2019年 3月エール学園卒業
  • 2019年 4月ニコニコのり入社

< 1995年10月生まれ、フエ市出身 >

はじめに

京都・伏見稲荷大社で〈2019年〉

フエ外国語大学のプログラムで日本に留学したタオニさん。同じ時期に留学した同郷の仲間と過ごす一方、アルバイト先では日本人に囲まれて働き、日本語力を磨いた。外国人留学生の就職に強い大阪の専門学校に進み、充実した就活支援を受けて働きやすい職場に就職。日本でのOLライフを満喫するタオニさんの体験談を紹介する。

日本留学のきっかけ

フエ外国語大学で〈2014年〉

フエ外大と提携する日本の日本語学校で得た単位が大学の単位として認定される留学プログラムがあり、3年生のときに応募しました。同学年の数人がこのプログラムで日本に留学しました。

フエの海岸で〈2014年〉

留学を決めたのは、大学で日本語以外に日本での生活習慣や商習慣なども勉強し、先生からも日本の話をたくさん聞き、「もっと日本を知りたい!」という気持ちが抑えられなくなったからです。

◇留学先の大阪〈いずれも2016年〉

留学生の就職に強い専門学校へ

私の誕生日。日本語学校のルームメートと寮でケーキ を食べてから焼き肉店へ。〈2017年10月〉

最初は2年で帰国の予定でしたが、日本が大好きになったので、就職を目指しました。日本語学校で2年間学んだ後、外国人留学生の就職に強い大阪の専門学校「エール学園」を日本語学校から紹介され、受験しました。

エール学園「デュアルビジネスコース」

焼き肉店でも誕生日ケーキ〈2017年10月〉

たまにベトナムに一時帰国〈フエで2017年4月〉

日本での就職活動

大阪市内で〈2019年2月〉

エール学園に入ると、すぐに就職活動(就活)が始まりました。エールは就活指導が充実していて、日本の企業で働く際の注意点も教えてもらいました。提携企業が多く、学校の就活イベントにもたくさんの企業が参加していました。

インターンシップ先もエールから紹介してもらい、化粧品会社で1カ月間(週3回)、ニコニコのりで2カ月間(週3回)、インターンを経験しました。ニコニコのりでは、インターンの面接で会社に行くと、約40人の社員が一斉に立ち上がって「いらっしゃいませ」と言ってくれたので、びっくりしました。採用型のインターンと体験だけのインターンがありましたが、ここは採用型で、最初の1カ月が終わると、同社からエールに採用の連絡が届きました。

エール学園の仲間とは卒業後もたまに食事会〈2019年7月〉

就活を始めたころは、面接で不合格になることも何度かありましたが、自分のよくないところを探し、直そうとしました。そして、自分のことを把握して自信を持って就活を続けると、いくつかの会社から内定をいただくことができました。

日本語の勉強

大阪府堺市内の公園で〈2017年4月〉

私は2016年4月に訪日し、同じ年の12月に日本語能力試験(JLPT)N2に合格し、その2年後にN1に合格しました。訪日前にN3を取得して、訪日後は授業以外に毎日最低でも2時間、アルバイトのない日は3、4時間、勉強しました。
自宅での勉強には下記の教材を使いました。
・「新完全マスター」シリーズ(語彙、漢字、文法、読解など) ・「パターン別徹底ドリル」シリーズ ・「日本語パワードリル」シリーズ
また、You Tubeで日本語日常会話やビジネス日本語の動画を見てヒアリングの練習をし、シャドーイングもしました。「シャドーイング」「日本語」で検索するとそのような動画がヒットします。そして、バイト先のコンビニや居酒屋での同僚やお客さんとの会話が生きた日本語練習になりました。

アルバイト

アルバイト先の同僚とボーリング〈2016年11月〉

日本語学校の紹介でコンビニでアルバイトを始め、3年間勤めました。私は、ある程度アルバイトをした方が日本語の力がつくと思います。ただし、訪日前に日本語をしっかり勉強し、日本語を使う仕事に採用されることが大事です。

そういう仕事では、生きた日本語を学べます。例えば、何かほしいときに使う言葉として、学校では「いただけませんか」という言葉しか学びません。しかし、お店では「ちょうだい」「ください」「もらっていいですか?」など、さまざまな言い方を学びます。また、間違った日本語を話すと、職場の仲間が教えてくれます。

日本でどんな食べ物がはやっているかなど生活情報も分かります。コンビニでミニサイズの冷凍チャーハンを買って店の電子レンジで温めて持ち帰るお客さんが多かったので、私はある日、お客さんに「これはこのまま食べられるのですか」と聞いてみました。「そうだよ。おいしいよ」との返事で、それからは、私も急ぐときはそれを買って温め、学校の授業前などに食べました。

日本での生活

アルバイト先の居酒屋で食べたまかない

日本に行くために用意したお金は約100万円です。また、アルバイトだけでは学費と生活費をまかなえないので、その後、母からさらに約40万円を送ってもらいました。就職後、私から母に送金(1年間で約80万円)するようになり、これからも続けていこうと思います。
◎訪日時の約100万円の内訳
・1年分の学費(主に授業料):70万円 ・半年分の家賃:12万円 ・飛行機代:6万円 ・布団、教科書など:10万円
アルバイトは、コンビニ(レジ係、3年間)、居酒屋(キッチン+接客、2年間)、通訳(1年間)。留学2年目は、日本学生支援機構(JASSO)から奨学金(毎月3万円)をいただきました。  

私の家計簿(1カ月の平均) ※留学1年目

※100円=21,671ドン(2020年6月14日)

収入(合計90,000円~100,000円)
アルバイト1件

90,000円~100,000円

※コンビニ

支出(合計115,000円~120,000円)
家賃

20,000円

※3ベッドルームに6人暮らし

※Wi-Fi込み、水道費込み

学費(授業料、教材費など)

60,000円

光熱費

2,000円

※電気・ガスの合計

携帯電話

8,000円

食費

20,000円

※バイト先の居酒屋で食べるまかないは無料

雑費

5,000円~10,000円

※衣類、教材、交通費、たまに外食など

差額・貯金(▲20,000円~▲30,000円)
差額

▲20,000円~▲30,000円

※仕送りや長期休暇時のアルバイトで補てん

同郷の友だちと過ごす日本の休日〈2019年〉

日本を楽しむ

就職後も留学生仲間と休日を過ごすことが多い〈2020年1月〉

一緒に留学した大学の同期など同郷の友人やエール学園時代の友人と休日に集まったり、京都・神戸に観光に行ったりしています。京都では、嵐山や金閣寺、伏見稲荷大社などがベトナム語のネット検索で上位に出ます。私の一番のお気に入りは嵐山で、紅葉がきれいです。

京都・嵐山〈2019年11月〉

将来のことは分かりませんが、もし日本人と結婚したら、ずっと日本に住むことになると思います。日本の次のような点が好きです。
好きな飲食店 回転寿司 ※大阪・難波の「大起水産」など
好きな食べ物 すし、たこ焼き、おでん
生活が便利① 買いたいものが何でも買えます。例えば、化粧品はドラッグストアで何でもそろいます。フエでは、欲しい化粧品がどこに売っているかネットで調べ、その業者が信用できるかどうかも調べなければならなりませんでした。
生活が便利② 電車が便利。コンビニが多い。
生活が便利③ 市役所で手続きが分からない場合でも、担当者の説明が親切。店の対応も丁寧。
生活が快適 空気がきれい。四季があり、春・秋の天候がよい。

伏見稲荷(駅前で着物をレンタル)〈2019年3月〉

伏見稲荷〈2019年9月〉

仕事の内容と将来

甲子園球場で先輩や同僚と野球観戦〈2019年〉

今の職場が大好きです。大阪本社ではベトナム人は私1人で、福岡にはベトナム人が17人(正社員2人、技能実習生15人)います。大阪ではベトナム人は1人ですが、皆さんが親切にしてくれます。例えば、会議でだれかが説明した後、私に「分かりましたか」と聞いてくれたり、生活で困っていることがないかを聞いてくれたりします。 昨年は、職場の先輩や同期と一緒に3、4回、阪神甲子園球場(兵庫県)にプロ野球を見に行きました。野球のルールはあまり分かりませんが、お祭りのような応援で、球場の雰囲気を楽しめます。

会社の近くで先輩や同期と飲み会〈2019年〉

私の仕事内容は、技能実習生のために資料を翻訳するほか、採用や勤務管理、備品管理、電話応対など、日本人と同じです。もし当社が将来ベトナムに進出した場合は、ベトナムに関わる担当をさせていただければと希望しています。

休日にエール学園時代の友人と和歌山県のアドベンチャーワールドへ〈2019年〉