体験談(留学・高度)
Vol. 13 仕事をやめ思い切って日本留学

今回の先輩

ファム・キム・ホンさん
1979年生まれ、ホーチミン市出身
1997年 GIA DINH高等学校卒業
1997年 Dai Hoc Bach Khoa Ho Chi Minh(ホーチミン市工科大学)建設学部水資源学科 入学
2002年 Dai Hoc Bach Khoa Ho Chi Minh卒業
2003年 SAWACOの子会社 入社
2005年 SAWACOの子会社 退社
2005年 東京の日本語学校 入学
2007年 東京の日本語学校 卒業
2007年 ニャットベット社 入社
2008年 ニャットベット社 退社
2008年 東神開発ホーチミン市駐在員事務所 入社
2015年 東神会社ホーチミン市駐在員事務所 退社
2015年 独立(YUMIYAコンサルテイング会社設立+フリーランスの通訳)
Mail: Hongphamnv12@gmail.com

ファム・キム・ホンさん
1979年生まれ、ホーチミン市出身
1997年 GIA DINH高等学校卒業
1997年 Dai Hoc Bach Khoa Ho Chi Minh(ホーチミン市工科大学)建設学部水資源学科 入学
2002年 Dai Hoc Bach Khoa Ho Chi Minh卒業
2003年 SAWACOの子会社 入社
2005年 SAWACOの子会社 退社
2005年 東京の日本語学校 入学
2007年 東京の日本語学校 卒業
2007年 ニャットベット社 入社
2008年 ニャットベット社 退社
2008年 東神開発ホーチミン市駐在員事務所 入社
2015年 東神会社ホーチミン市駐在員事務所 退社
2015年 独立(YUMIYAコンサルテイング会社設立+フリーランスの通訳)
Mail: Hongphamnv12@gmail.com
はじめに
日本の大企業や行政などがベトナムで主催する大きなイベントに行くたび、同じような顔ぶれの日本語通訳者たちを見かける。トップ通訳のグループで、ホンさんはその1人だ。ホンさんはホーチミンの超一流大学を出て就職後、キャリアアップを思い立って語学留学のために日本に渡った。まだ日本留学が少なかったころだ。ホンさんが日本で送った生活や、帰国後に日本語を生かして取り組んできた仕事はどういうものだったのか――以下にホンさんの体験談を紹介する。

日越マッチングイベントで通訳仲間とホンさん(左から4人目)【2019年10月】
魅力いっぱい、通訳の仕事
私は、日本の行政や企業が行う会議やセミナー、交流会、ビジネスマッチングイベント、社内研修、事業拠点の開所式などで通訳や司会をさせて頂く機会がよくあります。例えば、横浜市とホーチミン市人民委員会との会議(=人材関連)や広島県とカントー市人民委員会との会議(=環境関連)といった行政の会議では、テレビニュースに私も一緒に映ることもあります。

日越の医療人材協力に関するフォーラムで通訳
【フエで2018年12月】
通訳するときは、依頼者の立場や事業内容、会議目的をよく理解したうえで、分かりやすく正確に言葉やニュアンスを伝えるよう努力しています。その結果、繰り返し指名してくださる依頼者も増えました。
例えば、日本のある大きな市はこの2、3年間で約10回、私を指名してくださいました。ただ、最初に人材会社やイベント会社から顧客を紹介して頂いた場合、2回目以降もその会社を通して頂くようにしています。ここでも信頼が大事です。

左:日系企業の工場開所式で司会【ブンタウ省で2019年】
右:通訳仲間の結婚式で司会【ホーチミン市で2019年】

友人の結婚式で通訳仲間と【ホーチミン市で2019年6月】
留学後、日系企業でコンサル業
私のもう一つの仕事はコンサルタントです。留学を終えて帰国後、オーダーメイドの着物を売る小さな会社に入りました。社長が日本人女性で、私は副社長として、生産スケジュールの管理や会計など幅広く担当しました。ただ、もう少し大規模な経営管理を勉強したかったので、約1年後に社外役員にしてもらい、不定期に出社する形に変えました。
次に務めた「東神開発」は百貨店・高島屋の子会社で、ショッピングセンター開発や不動産を手がけています。当初は日本人3人の駐在員事務所でしたが、だんだん大きくなって関連現地法人(コンサルティング会社)ができ、直属の日本人上司と一緒にそこに異動しました。ここでは、日本企業がベトナムで事業を行う際に市場調査をしたりベトナム側の提携先を探したりする業務を担当しました。
ベトナム人感覚と経験を生かしたコンサル
コンサルの仕事はやりがいがあり、手取り月給も24,000,000ドンあったのですが、上司が2014年に日本に帰ったのを機に東神開発に戻り、職場の雰囲気が変わったこともあって翌年退社しました。
そして、コンサル業で独立し、最初は顧客が少なかったので、主に通訳で生計を立ててきました。紹介で通訳業務が増え、かかりきりでしたが、2019年からは、大好きなコンサルにも力を入れ始めています。日本企業の現地法人設立支援などこの年だけで数件の受注があり、日本語力と帰国後の経験を生かして取り組んでいます。

ホイアンにて【2019年7月】
日本企業がベトナムで事業を進める際、日系のコンサル会社や顧問と一緒にやることが多いのですが、コンサル会社や顧問の知識、感覚、事業理解などが依頼者の求めに達していないケースがよくあります。私は通訳としてこういうケースを目にしてきましたが、私の顧客に対しては、ベトナム企業の文化やマインドと日本企業のマインドとの橋渡しをし、コンサルと通訳の両方の経験を生かして事業推進のために最大限お役に立ちたいと思っています。

友人と夕食会【ホーチミン市で2020年1月】
就職後、日本留学に踏み切る
さて、私が日本に留学したいきさつを少し話します。私は大学を出てSAWACO(ホーチミン市水道局)の支部に就職しましたが、自分が成長する機会があまりないと感じていました。そんな時、東京の日本語学校の生徒募集の仕事をしていた知人に誘われました。
大学時代に1年余り、地元の日本語学校で週3回日本語を習い、就職後もドンズー日本語学校の社会人コースに1年あまり通ったので、この機会に日本語を本格的に身につけて将来の仕事につなげようと考え、訪日しました。そして、東京では、マンションの1室(ワンベッドルーム、台所は別室)にベトナム人3人、スリランカ人1人で一緒に住みました。

日本語学校のクラスメートたちと【2006年】
わたしの家計簿
※2005年~2007年
※100円=21,943 VND(2020年3月31日現在)
収入(合計約120,000~130,000円)
アルバイト(居酒屋) | 計90,000~100,000円 ※税金を引いた後の手取り額 ※夏休みなど長期休暇時は少し増える |
仕送りなど | 30,000円 ※ベトナムから持って行ったお金と母からの仕送り |
支出(合計 約120,000~130,000円)
寮費・光熱費 | 35,000円 ※1DKに4人暮らし、1室に2段ベッド2台 ※電気・ガス・水道の料金込み |
携帯電話 | 0円< ※当時はあまり普及していなかった |
学費 | 65,000円 |
食費 | 20,000円 ※自炊 |
雑費 | 5,000円~10,000円 ※留学生仲間とたまに日帰り旅行 |
差額(貯金) なし

日本語学校の行事で旅行【2005年夏】
日本語上達のために
日本での最初のアルバイトは学校からの紹介で、スーパーでの仕事でした。倉庫から品出しをしたり賞味期限が近づいた食品に割引のシールを貼ったりする仕事ですが、日本人との会話が少なかったので、半年間でやめました。しかし、当時は留学生のアルバイト先が少なく、求人雑誌を見て電話しても日本語が下手なので面接にこぎつけるが困難でした。
そこで、ハローワークに行って、担当者から「仕事を探しているベトナム人留学生がいますが、どうですか」と電話してもらい、面接を受けて合格しました。居酒屋で、お客さんの注文を聞いたり料理を運んだりしました。店長や店員との会話も多く、日本語の練習になったので、帰国するまでここで働きました。

アルバイト先(スーパー)の忘年会で店長と握手【東京で2005年12月】
日本語学校では、アルバイトで疲れて授業中に眠る人も多くみかけましたが、なんとしても日本語を身につける覚悟で留学したので、私は眠らないようにがんばりました。また、学校が休みの土日は、近くの公共図書館に行って勉強しました。
また、東京で仕事を定年退職した日本人のボランティア数名が毎週水曜に1時間半ぐらい外国人と会話する日本語サークルを開いていました。私はこの日はバイトを入れず、毎週ここに行きました。日本人教師1人、外国人4、5人の少人数教室でした。これ以外に、ボランティアによる無料の料理教室にも参加しました。これらの教室やアルバイト先での会話が日本語力の向上に大きく役立ちました。後輩の留学生の方々も、できるだけ日本人と話す機会を見つけてください。

ボランティアによる無料料理教室で【東京で2006年11月】
元日本留学生クラブ(Japanese Universities Alumni Club in HCM)

帰国後はホーチミン市元日本留学生クラブ(Japanese Universities Alumni Club in HCM)に友人の紹介で入りました。ここには1,000人以上のメンバーと数十人の中心メンバーがおり、JASSOの日本留学フェアの運営や通訳を手伝ったり、独自のイベントを行ったりしています。仲間同士の交流も盛んです。

いずれもJUACHの新年会で【ホーチミン市で2019年2月】

JASSOの日本留学フェアでJUACHのメンバーと
【ホーチミンのRex Hotelで2019年10月】

JASSO日本留学フェアの様子【2019年10月】
将来につながる留学を
今、日本でベトナム人による犯罪が増えています。日本語の準備をせず軽い気持ちで留学しても、よいアルバイトには就けません。そして、お金に困った留学生を悪いグループが窃盗などの犯罪に誘います。こうしたことにならないよう、自分が将来どうなりたいのかよく考えてから留学しましょう。
目の前のお金を稼ぐよりも、自分の将来や家族のことをよく考え、将来の仕事につながる成果を得るように努力しましょう。具体的には、まずは、日本語学校で平均以上の成績をとれるようにがんばってください。


いずれも通訳仲間とホーチミン市内で【2020年1月】
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Vol.72 親切な先輩たちと快適な地方生活
ティエンさんとアインさんはベトナムの大学で建築を学んだ後、約1年間日本語を勉強し、エンジニアとして日本に行きました。先輩たちは仕事をていねいに教えてくれますし、プライベートでも食事や観光に連れて行ってくれます。大都会ではありませんが、ショッピングも便利で山も海も近い高知は住みやすい町です。やさしい人たちに囲まれて2人は楽しく暮らしています。 今回の先輩 Nguyễn Thị Kiều Tiên(グエン・ティ・キエウ・ティエン)さん 2019年 9月ミエンタイ建設大学卒業〈ビンロン省〉 2019年 10月日本語センター〈ホーチミン市〉 2020年 12月エンジニアとして訪日〈高知県〉 〈1996年生、ヴィンロン省出身〉 Lê Thị Loan Anh(レ・ティ・ロアン・アインさん) 2019年 9月ミエンタイ建設大学卒業〈ビンロン省〉 2019年 10月日本語センター〈ホーチミン市〉 2020年 12月エンジニアとして訪日〈高知県〉 〈1996年生、ドンタップ省出身〉 このページの内容 •仕事の内容 •職場の先輩たちとの交流 •来日前の日本語学習 •日本に来た理由 •高知での暮らし •来日後の日本語学習 •社長インタビュー 仕事の内容 ――どのような仕事をしていますか? ● ティエン、アイン 橋を点検し、修繕が必要な部分を図面で描く仕事をしています。ベトナムの大学で建築を学び、そのときにCADの使い方も勉強したので、今の仕事で役立っています。 事務所で図面を描く仕事が7割、現場で橋の点検をする仕事が3割ぐらいです。車でいろいろな地域に連れて行ってもらうので、気分転換にもなります。 ※CAD:Computer Aided Designの略。コンピュータに手伝ってもらいながら設計図を作るソフト。 先輩と一緒に後ろの橋を点検 金づちで橋をたたいてコンクリートの劣化を調査 職場の先輩たちとの交流 ――職場の日本人との交流はありますか? 会社主催の食事会と二次会〈2021年〉 ● ティエン、アイン ベトナム人は私たち2人だけですが、先輩の皆さんがよく話し相手になってくれます。橋の点検に向かう車の中や休憩のときに先輩たちと話しますし、事務所でもよく話をします。皆さん、冗談をたくさん言ってくれるので、毎日楽しいですよ。 会社が主催する食事会もあります。お店でやることもあれば、会社のガレージでバーベキューをすることもあります。 休日に先輩たちとお出かけ〈高知市内〉 先輩たちは仕事をていねいに教えてくれますし、ゴミの分類の仕方や電車の乗り方など生活で分からないことも親切に教えてくれます。 先輩たちが私たちを夕食に連れて行ってくれたり、休みの日に車で観光に連れて行ってくれたりすることもあります。先輩たちからごちそうになることも多いので、私たちもときどき先輩たちに贈り物をしています。 先輩とお出かけ〈どちらも高知市〉 来日前の日本語学習 ――来日前にどれぐらい日本語を勉強しましたか? 「つばき」の外国語センターで ⚫ティエン、アイン ホーチミン市の「つばき人材育成有限会社」の外国語センターで13カ月間、朝から晩まで勉強しました。この期間は寮に住みました。新型コロナの影響で予定より5カ月長くセンターにいました。 ・1日に90分の授業4回と自習4時間(計10時間) ・自習は教室で行い、質問に答えるために先生が付き添います。 「つばき」に支払ったのは全部で50万円分(約86,800,000 VND)です。ここに授業料、寮費、飛行機代、在留資格取得費がすべて含まれています。 つばき人材育成有限会社 日本に来た理由 ――なぜ日本に来ようと思ったのですか? 「つばき」の仲間たち ⚫ティエン 卒業論文を書いているときに大学の先生から「日本の会社が外国人社員を募集している」と聞き、「つばき」を紹介してもらいました。つばきの経営者の女性に会ってみると、親切で明るい人だったので、この会社にお願いしようと思いました 「つばき」を紹介される前にベトナムの会社への就職が内定していましたが、日本は発展した国なので、日本で働くことは貴重な経験になると思い、日本を選びました。日本で働けば、大学生の妹に学費を十分に支援することもできます。 大学を卒業 ⚫アイン 大学の先生から「つばきは日本でのサポートがよい」と説明されました。実際、「つばき」は日本にも事務所があり、責任者がときどき会いに来てくれます。また、責任者の奥さんは頼りになるベトナム人で、困ったことがあったらLINEや電話で相談できます。 私の実家は貧しい農家です。日本で働けば、ベトナムで働くよりたくさんお金を稼げるので、両親を助けることができます。私たちの大学には日本で働きたい人がたくさんいます。 高知での暮らし ――高知での暮らしは好きですか? 休日に2人でカフェへ ⚫ ティエン ・高知は日本の中では小さな都市ですが、それなりに発展していて、お店も充実しています。 ・自宅からAEONや他のショッピングモールまで近く、とても便利です。 ・会社の先輩たちとの交流もあり、楽しく生活しています。 ⚫ アイン ・徒歩や自転車で行ける場所に複数のスーパーやマクドナルドがあります。 ・高知は天気の良い日が多いですし、海も近く、ステキな町です。 ・やさしい人が多いです。 高知市 高知市内の市場 私たちの家計簿(1カ月の平均) ※100円=約17,360 VND(2022年6月17日現在) 収入: ¥185,000 手取り給与 ¥185,000 *税金、社会保険を引いたあとの金額 支出: ¥70,500 寮費(1人の負担額) ¥12,500 *2ベッドルームに2人暮らし *会社が家賃の半額を補助し、残りを2人で折半 水道・ガス・電気・Wi-Fi ¥10,000 食材費 ¥30,000 外食費・雑費 ¥18,000 差額: ¥114,500 *約7割をベトナムの実家に送金 来日後の日本語学習 ――来日後は日本語をどれくらい勉強していますか? KIAの先生や仲間と花見〈2022年〉 ● ティエン 先輩たちともっとコミュケーションを深めたいので、日本に来てからも毎晩1~3時間、日本語の勉強をしています。2022年7月にJLPT(日本語能力試験)のN2を受験します。勉強で覚えた言葉を職場で使うので、頭に残ります。使い方が間違っていると、先輩たちがやさしく教えてくれます。 ● アイン 毎晩、家で2時間勉強する以外に毎週2回、KIA(高知県国際交流協会)の日本語クラス(無料)で勉強しています。水曜は教室で授業を受け、木曜はオンライン授業です。KIAにはベトナム人やミャンマー人、フィリピン人などの生徒もいて、友だちになりました。お互い日本語で話しています。 社長インタビュー 坂元社長(左)と私たち ティエンさんとアインさんが働くインフラマネジメント社の坂元陽祐(さかもと・ようすけ)社長にインタビューしました。 ――ティエンさんとアインさんの働きぶりを教えてください。 社長 2人とも大学で建築学やCADの使い方を学んでいるので、すぐに会社の戦力になりました。地方都市にはCADを使える新入社員はあまりいないので、大変助かりました。 ――外国人を雇用したきっかけは何ですか? 社長 経営者仲間で技能実習生を雇っている人たちから「外国人はまじめによく働いてくれる」と聞いていました。当社の場合、なるべく長く働いてくれる人材が欲しかったので、技能実習生ではなく外国人エンジニアを採用してみました。 インフラマネジメント社 ――ティエンさんとアインさんのコミュニケーション力はどうですか? 社長 2人は新型コロナの影響で来日が5カ月遅れました。その分、ベトナムで日本語をしっかり勉強してきてくれたので、最初から日本語が少し話せました。そのため、仕事を教えやすかったですし、先輩たちともすぐに仲良くなれました。 ――ティエンさんとアインさんが職場に与えた影響は? 社長 2人ともまじめで明るくて礼儀正しいので、みんなからかわいがられています。おかげで社内が明るくなりました。私はこれからも外国人社員を増やそうと思っています。 ティエンさんとアインさんはベトナムの大学で建築を学んだ後、約1年間日本語を勉強し、エンジニアとして日本に行きました。先輩たちは仕事をていねいに教えてくれますし、プライベートでも食事や観光に連れて行ってくれます。大都会ではありませんが、ショッピングも便利で山も海も近い高知は住みやすい町です。やさしい人たちに囲まれて2人は楽しく暮らしています。 今回の先輩 Nguyễn Thị Kiều Tiên(グエン・ティ・キエウ・ティエン)さん 2019年 9月ミエンタイ建設大学卒業〈ビンロン省〉 2019年 10月日本語センター〈ホーチミン市〉 2020年 12月エンジニアとして訪日〈高知県〉 〈1996年生、ヴィンロン省出身〉 Lê Thị Loan Anh(レ・ティ・ロアン・アインさん) 2019年 9月ミエンタイ建設大学卒業〈ビンロン省〉 2019年 10月日本語センター〈ホーチミン市〉 2020年 12月エンジニアとして訪日〈高知県〉 〈1996年生、ドンタップ省出身〉 このページの内容 •仕事の内容 •職場の先輩たちとの交流 •来日前の日本語学習 •日本に来た理由 •高知での暮らし •来日後の日本語学習 •社長インタビュー 仕事の内容 ――どのような仕事をしていますか? ● ティエン、アイン 橋を点検し、修繕が必要な部分を図面で描く仕事をしています。ベトナムの大学で建築を学び、そのときにCADの使い方も勉強したので、今の仕事で役立っています。 事務所で図面を描く仕事が7割、現場で橋の点検をする仕事が3割ぐらいです。車でいろいろな地域に連れて行ってもらうので、気分転換にもなります。 ※CAD:Computer Aided Designの略。コンピュータに手伝ってもらいながら設計図を作るソフト。 先輩と一緒に後ろの橋を点検 金づちで橋をたたいてコンクリートの劣化を調査 職場の先輩たちとの交流 ――職場の日本人との交流はありますか? ● ティエン、アイン ベトナム人は私たち2人だけですが、先輩の皆さんがよく話し相手になってくれます。橋の点検に向かう車の中や休憩のときに先輩たちと話しますし、事務所でもよく話をします。皆さん、冗談をたくさん言ってくれるので、毎日楽しいですよ。 会社が主催する食事会もあります。お店でやることもあれば、会社のガレージでバーベキューをすることもあります。 会社主催の食事会と二次会〈2021年〉 先輩たちは仕事をていねいに教えてくれますし、ゴミの分類の仕方や電車の乗り方など生活で分からないことも親切に教えてくれます。 先輩たちが私たちを夕食に連れて行ってくれたり、休みの日に車で観光に連れて行ってくれたりすることもあります。先輩たちからごちそうになることも多いので、私たちもときどき先輩たちに贈り物をしています。 休日に先輩たちとお出かけ〈高知市内〉 先輩とお出かけ〈どちらも高知市〉 来日前の日本語学習 ――来日前にどれぐらい日本語を勉強しましたか? ⚫ティエン、アイン ホーチミン市の「つばき人材育成有限会社」の外国語センターで13カ月間、朝から晩まで勉強しました。この期間は寮に住みました。新型コロナの影響で予定より5カ月長くセンターにいました。 ・1日に90分の授業4回と自習4時間(計10時間) ・自習は教室で行い、質問に答えるために先生が付き添います。 「つばき」に支払ったのは全部で50万円分(約86,800,000 VND)です。ここに授業料、寮費、飛行機代、在留資格取得費がすべて含まれています。 つばき人材育成有限会社 「つばき」の外国語センターで 日本に来た理由 ――なぜ日本に来ようと思ったのですか? ⚫ティエン 卒業論文を書いているときに大学の先生から「日本の会社が外国人社員を募集している」と聞き、「つばき」を紹介してもらいました。つばきの経営者の女性に会ってみると、親切で明るい人だったので、この会社にお願いしようと思いました 「つばき」を紹介される前にベトナムの会社への就職が内定していましたが、日本は発展した国なので、日本で働くことは貴重な経験になると思い、日本を選びました。日本で働けば、大学生の妹に学費を十分に支援することもできます。 「つばき」の仲間たち ⚫アイン 大学の先生から「つばきは日本でのサポートがよい」と説明されました。実際、「つばき」は日本にも事務所があり、責任者がときどき会いに来てくれます。また、責任者の奥さんは頼りになるベトナム人で、困ったことがあったらLINEや電話で相談できます。 私の実家は貧しい農家です。日本で働けば、ベトナムで働くよりたくさんお金を稼げるので、両親を助けることができます。私たちの大学には日本で働きたい人がたくさんいます。 大学を卒業 高知での暮らし ――高知での暮らしは好きですか? ⚫ ティエン ・高知は日本の中では小さな都市ですが、それなりに発展していて、お店も充実しています。 ・自宅からAEONや他のショッピングモールまで近く、とても便利です。 ・会社の先輩たちとの交流もあり、楽しく生活しています。 ⚫ アイン ・徒歩や自転車で行ける場所に複数のスーパーやマクドナルドがあります。 ・高知は天気の良い日が多いですし、海も近く、ステキな町です。 ・やさしい人が多いです。 休日に2人でカフェへ 高知市 高知市内の市場 私たちの家計簿(1カ月の平均) ※100円=約17,360 VND(2022年6月17日現在) 収入: ¥185,000 手取り給与 ¥185,000 *税金、社会保険を引いたあとの金額 支出: ¥70,500 寮費(1人の負担額) ¥12,500 *2ベッドルームに2人暮らし *会社が家賃の半額を補助し、残りを2人で折半 水道・ガス・電気・Wi-Fi ¥10,000 食材費 ¥30,000 外食費・雑費 ¥18,000 差額: ¥114,500 *約7割をベトナムの実家に送金 来日後の日本語学習 ――来日後は日本語をどれくらい勉強していますか? ● ティエン 先輩たちともっとコミュケーションを深めたいので、日本に来てからも毎晩1~3時間、日本語の勉強をしています。2022年7月にJLPT(日本語能力試験)のN2を受験します。勉強で覚えた言葉を職場で使うので、頭に残ります。使い方が間違っていると、先輩たちがやさしく教えてくれます。 ● アイン 毎晩、家で2時間勉強する以外に毎週2回、KIA(高知県国際交流協会)の日本語クラス(無料)で勉強しています。水曜は教室で授業を受け、木曜はオンライン授業です。KIAにはベトナム人やミャンマー人、フィリピン人などの生徒もいて、友だちになりました。お互い日本語で話しています。 KIAの先生や仲間と花見〈2022年〉 社長インタビュー ティエンさんとアインさんが働くインフラマネジメント社の坂元陽祐(さかもと・ようすけ)社長にインタビューしました。 ――ティエンさんとアインさんの働きぶりを教えてください。 社長 2人とも大学で建築学やCADの使い方を学んでいるので、すぐに会社の戦力になりました。地方都市にはCADを使える新入社員はあまりいないので、大変助かりました。 ――外国人を雇用したきっかけは何ですか? 社長 経営者仲間で技能実習生を雇っている人たちから「外国人はまじめによく働いてくれる」と聞いていました。当社の場合、なるべく長く働いてくれる人材が欲しかったので、技能実習生ではなく外国人エンジニアを採用してみました。 坂元社長(左)と私たち ――ティエンさんとアインさんのコミュニケーション力はどうですか? 社長 2人は新型コロナの影響で来日が5カ月遅れました。その分、ベトナムで日本語をしっかり勉強してきてくれたので、最初から日本語が少し話せました。そのため、仕事を教えやすかったですし、先輩たちともすぐに仲良くなれました。 ――ティエンさんとアインさんが職場に与えた影響は? 社長 2人ともまじめで明るくて礼儀正しいので、みんなからかわいがられています。おかげで社内が明るくなりました。私はこれからも外国人社員を増やそうと思っています。 インフラマネジメント社
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Vol.71 留学で好きになった香川で就職
今回の先輩 チャン・レ・クイン・ニさん 2017年9月 フエ外国語大学入学 2017年9月日本語センターで勉強(6カ月) 2018年1月 フエ外国語大学中退 2018年4月 日本語学校入学〈香川県〉 2020年4月 専門学校入学〈香川県〉 2022年4月 就職予定〈香川県〉 〈1999年生、フエ市出身〉 フエ出身のクイン・ニさんは4年間留学した香川県が大好きになり、就職も同県の会社を選びました。同じ専門学校の留学仲間もほとんどが香川での就職を選び、これからも支え合って暮らしていきます。ニさんが地方都市での留学の魅力をお伝えします。 〈このページの内容〉 • 大学を中退して日本に留学 • 留学にかかった費用 • うちの学校のここが好き • 香川県のここが好き • 日本のここが好き • 日本語学習 • アルバイトと「私の家計簿」 • 日本で就職活動 • まとめ 大学を中退して日本に留学 私は子どものころから、日本のアニメ番組や漫画(ドラえもんやコナンなど)が好きで、そこに出てくる日本の景色や文化に強くひかれていました。しかし、高校で英語を教えていた母の勧めもあって外国語大学の英語学部に入りました。しかし、やはり英語にはあまり興味を持てず、大学の日本文化部で日本語や茶道、華道に接するうち、日本への興味がさらに強くなりました。 そこで、両親と相談して地元の日本語センターで勉強を始め、大学は退学しました。こうして、私は大学入学の半年後、香川県高松市の日本語学校で留学を始めました。 留学にかかった費用 私が留学するときに最初にかかった費用を表にまとめました。費用は両親が貯金から払い、留学2年目の授業料も両親が全部払ってくれました。その後、私が日本語能力試験(JLPT)N2に合格したので、3年目(専門学校)の授業料は少し安くなりました。また、学校での成績が良かったので、学校が紹介してくれた奨学金(月35,000円×1年)を受給でき、3年目は両親の援助なしで学費と生活費をまかなうことができました。 ◆ 留学センター *紹介手数料、在留資格の取得手数料など 60,000,000 ₫ ◆ フエの日本語センター(6カ月) 3,000,000 ₫ ◆ 飛行機代 12,000,000 ₫ ◆ 日本語学校の入学金 13,600,000 ₫(70,000円) ◆ 日本語学校の1年の授業料 127,000,000 ₫(650,000円) ※2022年3月12日の為替レートで換算 うちの学校のここが好き 日本語学校のクラスのクリスマス会〈2019年〉 私の学校は香川県で一番留学生が多い「穴吹(あなぶき)ビジネスカレッジ」です。最初の2年間は日本語学科、次の2年間は国際ビジネス学科で学びました。ここを選んだのは、フエの留学センターから推薦されたのと、同校の先輩留学生から「生活や就職活動のサポートが手厚い」「奨学金も充実している」と聞いたからです。私が実際に体験した事例を紹介します。 ・新型コロナでアルバイトが減った留学生を支援するため、学校が企業などに呼びかけて米や野菜を集め、生徒に毎月支給。 ・私の首にしこりができて1日だけ入院したとき、担任の先生が見舞いに来て4時間ぐらいそばにいてくれた。途中で私が眠っても、目覚めたらまだ先生がいた。 ・留学生の大半が学校から紹介された会社に就職 external link 穴吹ビジネスカレッジ 香川県のここが好き 留学仲間と自転車で海へ 香川県で暮らしてみて、私も同級生の多くもここが大好きになりました。香川の魅力を紹介します。 ・物価が安い ・雨が少なく晴れた日が多い ・自転車でどこへでも行ける ・安くておいしいうどん屋さんが多い 香川県はうどんで有名で、別名「うどん県」とも呼ばれています。私と友人たちも毎朝一緒に店でうどんを食べています。東京や大阪にも遊びに行き、楽しく過ごしましたが、住むには人が多すぎるように感じました。ゆったり暮らすには地方都市の方が適しているように思います。 高松市の大きな商店街 香川県のうどん 日本のここが好き 学校のイベントで桜の花見 日本のスーパーで店員がお客さんから何かを聞かれて自分が分からない場合、「私は分かりませんので、担当者をお呼びします。少しお待ちください」と答えます。これは、専門学校の授業で学ぶことですが、実際に日本の店ではそのように対応しています。ベトナムなら「わかりません」ですまされることも多いですが、日本では親切で責任感のある店員が多いです。 日本人はお礼やおわびをていねいに言うことでも有名です。スーパーのレジ担当はどの客に対しても「いらっしゃいませ」と声をかけます。また、私が居酒屋でアルバイトをしたときは、お客様が帰るときに相手が見えなくなるまでおじぎするように指導されました。 それから、桜の花見や夏の花火大会、秋の紅葉などの場面がアニメや漫画によく出てきますが、実際に日本で体験すると、本当にステキで感激しました。 日本語学習 JLPT合格者の写真と名前を学校内で掲示 私は日本に来て毎日、学校で5時間、家で3時間、勉強しました。しかし、1年目に受けたJLPT・N3は不合格でした。そこで、毎日の勉強に加え、学校の仲間5人で日曜日に一緒に勉強しました。そのときは、N1の先輩留学生が私たちを指導してくれました。 こうして、留学2年目にN3とN2に合格しました。N2になったため、3年目(専門学校)の授業料は少し割り引いてもらえました。 ◆私が使った教材 語彙(ごい) 「耳から覚える」シリーズ 「総まとめ」シリーズ 文法 「耳から覚える」シリーズ 「新完全マスター」シリーズ 読解 「新完全マスター」シリーズ 漢字 「漢字マスター」シリーズ 試験直前 「日本語パワードリル」シリーズ オンライン external link News Web Easy(NHK) アルバイトと「私の家計簿」 アルバイト先の居酒屋で 私はコンビニやスーパー、飲食店などでアルバイトをしました。飲食店では、店長やアルバイト仲間との会話が多く、お客さんも「ベトナム人ですか?」などとよく話しかけてくださいました。このため、日本語会話の練習になりました。 留学4年目は遠方の食品工場で働きました。コンビニの弁当を盛り付ける仕事です。ここにはベトナム人技能実習生もいますし、約100人の外国人アルバイトもいます。そのうち約60人(ベトナム人約40人とネパール人、中国人)が工場で交代で働いています。私は働き始めて1週間後に会社から指名されてこの60人のリーダーになり、作業以外に外国人アルバイトの監督や通訳も担当しました。 仕事は深夜0時~朝6時で、週4回です。20~40人が高松から会社のバスに乗り、約80分かけて工場に行きます。監督役を務めたことを就職活動の応募先で話すと、幹部の方が興味を持ってくださり、その会社から内定をもらうことができました。 私の家計簿(1カ月の平均) ※100円=18,663 VND(2022年4月1日現在) 収入:100,000~140,000円 アルバイト2件(食品工場、スーパー) ¥100,000~¥140,000 支出:120,000円 家賃(2人でシェア、水道代込み) ¥22,000 授業料(割引後) ¥50,000 電気・ガス ¥3,000 携帯電話(ソフトバンク) ¥2,800 Wi-Fi ¥4,000 食材費 ¥28,000 雑費・外食費 ¥10,000 毎月の差額:10,000円 日本で就職活動 私は家族の意向で留学後に帰国する予定でしたが、その問題が解決したので、最終学年の途中であわてて就職活動(就活)を始めました。日本では、就活サイトを利用してエントリーシートや履歴書を会社に提出し、書類審査にパスしたら面接を受ける方法が主流です。わが校でも県外に就職したい人はその方法が中心ですが、香川県で就職したい場合は、学校からの紹介が中心です。 ① 学校が紹介した企業をグループで訪問 ② その企業に入りたい場合は、履歴書を提出 ③ 書類審査にパスしたら面接 私は、家族の意向で最初は履歴書を出しませんでしたが、8月から本格的に就活を始めました。そして、学校の紹介で10月に面接を受けた会社から11月に内定をいただきました。同社は金属製品メーカーで、私は技能実習生の管理やサポートを担当します。私の就活については下記のブログをお読みください。 external link 留学生の就活体験記_02(2022年卒業) まとめ 同郷の友人を訪ねて京都へ旅行 私は充実した留学生活を送ることができ、学校のサポートで就活でもあまり苦労せずに内定をいただくことができました。落ち着いたいなか暮らしが好きな私にとって香川県はぴったりの留学先でした。そして、同級生たちも皆この町が好きになり、日本で就職する同級生26人のうち24人が香川県の会社から内定をいただきました。卒業してからも仲間とときどき会えるので、みんなで喜んでいます。 近所の公園でピクニック 高松市内で 今回の先輩 チャン・レ・クイン・ニさん 2017年9月フエ外国語大学入学 2017年9月日本語センターで勉強(6カ月) 2018年1月 フエ外国語大学中退 2018年4月 日本語学校入学〈香川県〉 2020年4月 専門学校入学〈香川県〉 2022年4月 職予定〈香川県〉 〈1999年生、フエ市出身〉 フエ出身のクイン・ニさんは4年間留学した香川県が大好きになり、就職も同県の会社を選びました。同じ専門学校の留学仲間もほとんどが香川での就職を選び、これからも支え合って暮らしていきます。ニさんが地方都市での留学の魅力をお伝えします。 〈このページの内容〉 • 大学を中退して日本に留学 • 留学にかかった費用 • うちの学校のここが好き • 香川県のここが好き • 日本のここが好き • 日本語学習 • アルバイトと「私の家計簿」 • 日本で就職活動 • まとめ 大学を中退して日本に留学 私は子どものころから、日本のアニメ番組や漫画(ドラえもんやコナンなど)が好きで、そこに出てくる日本の景色や文化に強くひかれていました。しかし、高校で英語を教えていた母の勧めもあって外国語大学の英語学部に入りました。しかし、やはり英語にはあまり興味を持てず、大学の日本文化部で日本語や茶道、華道に接するうち、日本への興味がさらに強くなりました。 そこで、両親と相談して地元の日本語センターで勉強を始め、大学は退学しました。こうして、私は大学入学の半年後、香川県高松市の日本語学校で留学を始めました。 留学にかかった費用 私が留学するときに最初にかかった費用を表にまとめました。費用は両親が貯金から払い、留学2年目の授業料も両親が全部払ってくれました。その後、私が日本語能力試験(JLPT)N2に合格したので、3年目(専門学校)の授業料は少し安くなりました。また、学校での成績が良かったので、学校が紹介してくれた奨学金(月35,000円×1年)を受給でき、3年目は両親の援助なしで学費と生活費をまかなうことができました。 ◆ 留学センター *紹介手数料、在留資格の取得手数料など 60,000,000 ₫ ◆ フエの日本語センター(6カ月) 3,000,000 ₫ ◆ 飛行機代 12,000,000 ₫ ◆ 日本語学校の入学金 13,600,000 ₫(70,000円) ◆ 日本語学校の1年の授業料 127,000,000 ₫(650,000円) ※2022年3月12日の為替レートで換算 うちの学校のここが好き 私の学校は香川県で一番留学生が多い「穴吹(あなぶき)ビジネスカレッジ」です。最初の2年間は日本語学科、次の2年間は国際ビジネス学科で学びました。ここを選んだのは、フエの留学センターから推薦されたのと、同校の先輩留学生から「生活や就職活動のサポートが手厚い」「奨学金も充実している」と聞いたからです。私が実際に体験した事例を紹介します。 ・新型コロナでアルバイトが減った留学生を支援するため、学校が企業などに呼びかけて米や野菜を集め、生徒に毎月支給。 ・私の首にしこりができて1日だけ入院したとき、担任の先生が見舞いに来て4時間ぐらいそばにいてくれた。途中で私が眠っても、目覚めたらまだ先生がいた。 ・留学生の大半が学校から紹介された会社に就職 external link 穴吹ビジネスカレッジ 日本語学校のクラスのクリスマス会〈2019年〉 香川県のここが好き 香川県で暮らしてみて、私も同級生の多くもここが大好きになりました。香川の魅力を紹介します。 ・物価が安い ・雨が少なく晴れた日が多い ・自転車でどこへでも行ける ・安くておいしいうどん屋さんが多い 香川県はうどんで有名で、別名「うどん県」とも呼ばれています。私と友人たちも毎朝一緒に店でうどんを食べています。東京や大阪にも遊びに行き、楽しく過ごしましたが、住むには人が多すぎるように感じました。ゆったり暮らすには地方都市の方が適しているように思います。 留学仲間と自転車で海へ 高松市の大きな商店街 香川県のうどん 日本のここが好き 日本のスーパーで店員がお客さんから何かを聞かれて自分が分からない場合、「私は分かりませんので、担当者をお呼びします。少しお待ちください」と答えます。これは、専門学校の授業で学ぶことですが、実際に日本の店ではそのように対応しています。ベトナムなら「わかりません」ですまされることも多いですが、日本では親切で責任感のある店員が多いです。 日本人はお礼やおわびをていねいに言うことでも有名です。スーパーのレジ担当はどの客に対しても「いらっしゃいませ」と声をかけます。また、私が居酒屋でアルバイトをしたときは、お客様が帰るときに相手が見えなくなるまでおじぎするように指導されました。 それから、桜の花見や夏の花火大会、秋の紅葉などの場面がアニメや漫画によく出てきますが、実際に日本で体験すると、本当にステキで感激しました。 学校のイベントで桜の花見 日本語学習 私は日本に来て毎日、学校で5時間、家で3時間、勉強しました。しかし、1年目に受けたJLPT・N3は不合格でした。そこで、毎日の勉強に加え、学校の仲間5人で日曜日に一緒に勉強しました。そのときは、N1の先輩留学生が私たちを指導してくれました。 こうして、留学2年目にN3とN2に合格しました。N2になったため、3年目(専門学校)の授業料は少し割り引いてもらえました。 JLPT合格者の写真と名前を学校内で掲示 ◆私が使った教材 語彙(ごい) 「耳から覚える」シリーズ 「総まとめ」シリーズ 文法 「耳から覚える」シリーズ 「新完全マスター」シリーズ 読解 「新完全マスター」シリーズ 漢字 「漢字マスター」シリーズ 試験直前 「日本語パワードリル」シリーズ オンライン external link News Web Easy(NHK) アルバイトと「私の家計簿」 私はコンビニやスーパー、飲食店などでアルバイトをしました。飲食店では、店長やアルバイト仲間との会話が多く、お客さんも「ベトナム人ですか?」などとよく話しかけてくださいました。このため、日本語会話の練習になりました。 留学4年目は遠方の食品工場で働きました。コンビニの弁当を盛り付ける仕事です。ここにはベトナム人技能実習生もいますし、約100人の外国人アルバイトもいます。そのうち約60人(ベトナム人約40人とネパール人、中国人)が工場で交代で働いています。私は働き始めて1週間後に会社から指名されてこの60人のリーダーになり、作業以外に外国人アルバイトの監督や通訳も担当しました。 仕事は深夜0時~朝6時で、週4回です。20~40人が高松から会社のバスに乗り、約80分かけて工場に行きます。監督役を務めたことを就職活動の応募先で話すと、幹部の方が興味を持ってくださり、その会社から内定をもらうことができました。 アルバイト先の居酒屋で 私の家計簿(1カ月の平均) ※100円=18,663 VND(2022年4月1日現在) 収入:100,000~140,000円 アルバイト2件(食品工場、スーパー) ¥100,000~¥140,000 支出:120,000円 家賃(2人でシェア、水道代込み) ¥22,000 授業料(割引後) ¥50,000 電気・ガス ¥3,000 携帯電話(ソフトバンク) ¥2,800 Wi-Fi ¥4,000 食材費 ¥28,000 雑費・外食費 ¥10,000 毎月の差額:10,000円 日本で就職活動 私は家族の意向で留学後に帰国する予定でしたが、その問題が解決したので、最終学年の途中であわてて就職活動(就活)を始めました。日本では、就活サイトを利用してエントリーシートや履歴書を会社に提出し、書類審査にパスしたら面接を受ける方法が主流です。わが校でも県外に就職したい人はその方法が中心ですが、香川県で就職したい場合は、学校からの紹介が中心です。 ① 学校が紹介した企業をグループで訪問 ② その企業に入りたい場合は、履歴書を提出 ③ 書類審査にパスしたら面接 私は、家族の意向で最初は履歴書を出しませんでしたが、8月から本格的に就活を始めました。そして、学校の紹介で10月に面接を受けた会社から11月に内定をいただきました。同社は金属製品メーカーで、私は技能実習生の管理やサポートを担当します。私の就活については下記のブログをお読みください。 external link 留学生の就活体験記_02(2022年卒業) まとめ 私は充実した留学生活を送ることができ、学校のサポートで就活でもあまり苦労せずに内定をいただくことができました。落ち着いたいなか暮らしが好きな私にとって香川県はぴったりの留学先でした。そして、同級生たちも皆この町が好きになり、日本で就職する同級生26人のうち24人が香川県の会社から内定をいただきました。卒業してからも仲間とときどき会えるので、みんなで喜んでいます。 同郷の友人を訪ねて京都へ旅行 近所の公園でピクニック 高松市内で
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Vol.69 京都で暮らした1年間
今回の先輩 グエン・ティ・オアインさん 2017年 高校卒業 2017年ハノイ国家大学・外国語大学・日本言語文化学部入学 2019年 明治大学の交流プログラムに参加〈東京、3週間〉 2020年 京都大学留学〈1年間〉 2021年 帰国 2022年 大学卒業(3月) 〈1997年生まれ、ハノイ出身〉 オアインさんは大学で初めて日本語を勉強し、成績が良かったので、国費で京都大学に1年間留学しました。彼女の学習方法や留学プログラムの内容、京都のお勧めの観光名所を紹介します。 〈このページの内容〉 • 日本語学習:私の工夫 • ハノイで日本人学生と交流 • 短期交流で初めて日本へ • 日本入国と留学生寮 • 新型コロナ禍での大学のプログラム • 地域のベトナム人との交流 • 私の好きな京都のスポット • まとめ 日本語学習:私の工夫 日本語力を生かして日本語センターで講師のアルバイト 私は日本のアニメやドラマが好きで、そこに出てくる日本の文化や景色にひかれました。そのため、大学で日本語や日本について勉強しようと思いました。大学で初めて日本語を学び、2年のときに日本語能力試験(JLPT)N3に合格、3年のときにN2に合格しました。 授業以外では、毎日2、3時間、自習(宿題と授業の復習)をしました。また、Netflixで日本のアニメやドラマを見てリスニングの練習をしました。 ・友だち4人とNetflixの費用をシェア ・特に好きなのは「千と千尋の神隠し」「となりのトトロ」「5→9~私に恋したお坊さん~」など ・1回目はベトナム語の字幕付きで見て、2回目以降は日本語の字幕付きで見る ベトナムで日本人学生と交流 日本の大学生たちをニンビン省チャンアンに案内〈2019年〉 ハノイ国家大学には日本の大学生向けの短期交流プログラムがたくさんあります。私は大学2、3年のとき、多くのプログラムにボランティアで協力し、日本人学生とたくさん交流しました。 ・各プログラムの期間は1、2週間 ・日本各地の大学や外国語専門学校の学生が参加(大学ごとにプログラム) ・内容は簡単なベトナム語会話や文化交流など ・観光もあり、私たちボランティアが日本人学生たちをエスコート プログラムで友だちになった学生のうち数人とは、私が日本に留学したときに再会しました。中には、東京から京都に会いに来てくれた友人もいました。 短期交流で初めて日本へ 明治大学の学生たちと東京観光 私は大学2年生が終わった2019年6月に3週間、明治大学の短期交流プログラムに参加するために初めて来日しました。 ・この年は、私の学部から7人、ハノイ大学から3人が参加(成績優秀者) ・日本への飛行機代のみ自己負担 ・3週間の宿泊費と授業料は明治大学が負担 ・JASSOから1人80,000円の奨学金 このプログラムでは、明治大学の学生たちが私たちと一緒に研究をし、東京の案内もしてくれました。また、富山県の観光地に外国人観光客を誘致するための動画を制作したり、三味線(しゃみせん=日本の伝統楽器)を体験したり、神社で巫女(みこ)の服装や神楽舞(かぐらまい)を体験したりしました。 私たちが制作したFacebookページと動画 日本入国と留学生寮 寮の私の部屋 大学で私の成績は同学年約200人の中で2番でした。そのため、大学から国費留学の推薦をもらってハノイの日本国大使館で試験を受け、2020年9月から1年間、京都大学に留学させてもらえました。 新型コロナ対策で、日本入国後、成田空港近くのホテルで15日間隔離されました。その後、京都大学や大学院に留学するベトナム人3人と一緒に夜行バスで京都に行き、留学が始まりました。国費留学なので授業料は無料です。日本政府から十分な奨学金ももらっているので、アルバイトはしませんでした。 ・住居は大学の留学生寮:同じ棟に同級生11人(中国人5人、ベトナム人2人、ロシア・イギリス・インド・ルーマニア各1人) ・寮での共通言語は日本語 ・大学へは地下鉄とバスで通学(約30分)。春と秋は自転車だけで通学。 新型コロナ禍での大学のプログラム 京都大学の授業で書道の練習 大学では、新型コロナ対策でオンライン授業の方が多かったのですが、感染拡大が落ち着いている時期には対面授業もあり、週4回以上大学に行きました。授業はすべて日本語で、「日本の政治と法律」「現代日本の社会問題」「日本語概論」などがありました。留学生向けの特別授業が大半ですが、日本人と一緒に受ける授業も少しありました。 楽しみだったのは「日本文化研修プログラム」で、書道や和菓子作りなどを体験しました。日本の高校生ともオンラインで交流しましたが、通常なら学校を訪問するはずだったので、残念でした。観光名所への研修旅行も、本来は1泊2日のはずが、コロナの影響で日帰りになりました。 京都大学 しかし、先生や留学生仲間とは授業でたくさん交流しました。アカデミック・プレゼンテーションの授業では、研究結果をプレゼン資料にまとめて発表します。私は日本の家族関係に関する問題やベトナムの大気汚染の問題などを研究しました。この授業では同級生(留学生)と日本語でたくさん議論をし、日本語の文献を調べ、日本語の資料を作成します。そして、寮で発表の練習(日本語)もします。 また、日本人学生で留学生サポートをする人もいるので、その人たちともよく会話をしました。このように、日本語を使う機会はたくさんありました。 地域のベトナム人との交流 VYSA京都の仲間と三室戸寺を観光〈2020年11月〉 大学以外ではVYSA京都の活動に参加しました。京都・大阪や周辺のベトナム人大学生や大学院生、社会人が参加しています。新型コロナの影響で多くのイベントが中止になりましたが、コロナが少し落ち着いていた2020年11月に20人あまりで京都府の三室戸寺(みむろとじ)と平等院に行きました。 VYSAの活動で知り合った友だちと電車を乗り継いで奈良県の長谷寺(はせでら)に行ったこともあります。不便な場所にありますが、とてもステキなお寺でした! 在日ベトナム学生青年協会 私の家計簿(1カ月の平均) ※100円=19,900 VND(2022年3月10日現在) 収入:120,000円 日本政府の奨学金 ¥120,000 支出:110,000円 家賃(留学生寮) ¥13,000 授業料(無料) ¥0 電気・ガス・水道 ¥6,000 携帯電話(SIM使わず) ¥0 Wi-Fi ¥1,000 食材費・外食費 ¥40,000 教材費、交通費、雑費 ¥50,000 差額:10,000円 ※旅行などに利用 私の好きな京都のスポット 蹴上げインクライン 私は留学中、祇園や清水寺、八坂神社、平安神宮、鴨川など、京都市内のさまざまな観光名所に自転車で行きました。また、寮に近い南禅寺や蹴上(けあげ)インクライン、平安神宮などには、よく歩いて行きました。これらの名所を私なりにランキングすると次の通りです。 ① 鴨川:特に桜の咲く季節は本当にきれいです。川を眺めているだけで気持ちが落ち着きます。 ② 平安神宮と岡崎公園:巨大な鳥居と疎水(水路)沿いの散歩道を楽しめます。桜もたくさんあります。 ③ 南禅寺と蹴上インクライン:蹴上は超有名インスタスポット。南禅寺は四季を通じて趣があります。 ④ 祇園エリアと八坂神社 ⑤ 清水寺 鴨川 平安神宮 まとめ 奈良県の長谷寺 新型コロナの影響で留学プログラムの多くが制限または中止され、旅行にもほとんど行けませんでした。しかし、日本のトップ大学の一つで留学し、京都という素晴らしい町に住めたことは、かけがえのない経験になりました。 私は帰国して半年後の2022年3月に大学を卒業し、ハノイのIT企業で働いています。将来は、大学で日本語を教えることが夢です。これからも日本や日本語と関わっていきたいと思います。 今回の先輩 グエン・ティ・オアインさん 2017年高校卒業 2017年ハノイ国家大学・外国語大学・日本言語文化学部入学 2019年 明治大学の交流プログラムに参加〈東京、3週間〉 2020年 京都大学留学〈1年間〉 2021年 帰国 2022年 大学卒業(3月) 〈1997年生まれ、ハノイ出身〉 オアインさんは大学で初めて日本語を勉強し、成績が良かったので、国費で京都大学に1年間留学しました。彼女の学習方法や留学プログラムの内容、京都のお勧めの観光名所を紹介します。 〈このページの内容〉 • 日本語学習:私の工夫 • ハノイで日本人学生と交流 • 短期交流で初めて日本へ • 日本入国と留学生寮 • 新型コロナ禍での大学のプログラム • 地域のベトナム人との交流 • 私の好きな京都のスポット • まとめ 日本語学習:私の工夫 私は日本のアニメやドラマが好きで、そこに出てくる日本の文化や景色にひかれました。そのため、大学で日本語や日本について勉強しようと思いました。大学で初めて日本語を学び、2年のときに日本語能力試験(JLPT)N3に合格、3年のときにN2に合格しました。 授業以外では、毎日2、3時間、自習(宿題と授業の復習)をしました。また、Netflixで日本のアニメやドラマを見てリスニングの練習をしました。 ・友だち4人とNetflixの費用をシェア ・特に好きなのは「千と千尋の神隠し」「となりのトトロ」「5→9~私に恋したお坊さん~」など ・1回目はベトナム語の字幕付きで見て、2回目以降は日本語の字幕付きで見る 日本語力を生かして日本語センターで講師のアルバイト ベトナムで日本人学生と交流 ハノイ国家大学には日本の大学生向けの短期交流プログラムがたくさんあります。私は大学2、3年のとき、多くのプログラムにボランティアで協力し、日本人学生とたくさん交流しました。 ・各プログラムの期間は1、2週間 ・日本各地の大学や外国語専門学校の学生が参加(大学ごとにプログラム) ・内容は簡単なベトナム語会話や文化交流など ・観光もあり、私たちボランティアが日本人学生たちをエスコート プログラムで友だちになった学生のうち数人とは、私が日本に留学したときに再会しました。中には、東京から京都に会いに来てくれた友人もいました。 日本の大学生たちをニンビン省チャンアンに案内〈2019年〉 短期交流で初めて日本へ 私は大学2年生が終わった2019年6月に3週間、明治大学の短期交流プログラムに参加するために初めて来日しました。 ・この年は、私の学部から7人、ハノイ大学から3人が参加(成績優秀者) ・日本への飛行機代のみ自己負担 ・3週間の宿泊費と授業料は明治大学が負担 ・JASSOから1人80,000円の奨学金 このプログラムでは、明治大学の学生たちが私たちと一緒に研究をし、東京の案内もしてくれました。また、富山県の観光地に外国人観光客を誘致するための動画を制作したり、三味線(しゃみせん=日本の伝統楽器)を体験したり、神社で巫女(みこ)の服装や神楽舞(かぐらまい)を体験したりしました。 私たちが制作したFacebookページと動画 明治大学の学生たちと東京観光 日本入国と留学生寮 大学で私の成績は同学年約200人の中で2番でした。そのため、大学から国費留学の推薦をもらってハノイの日本国大使館で試験を受け、2020年9月から1年間、京都大学に留学させてもらえました。 新型コロナ対策で、日本入国後、成田空港近くのホテルで15日間隔離されました。その後、京都大学や大学院に留学するベトナム人3人と一緒に夜行バスで京都に行き、留学が始まりました。国費留学なので授業料は無料です。日本政府から十分な奨学金ももらっているので、アルバイトはしませんでした。 ・住居は大学の留学生寮:同じ棟に同級生11人(中国人5人、ベトナム人2人、ロシア・イギリス・インド・ルーマニア各1人) ・寮での共通言語は日本語 ・大学へは地下鉄とバスで通学(約30分)。春と秋は自転車だけで通学。 寮の私の部屋 新型コロナ禍での大学のプログラム 大学では、新型コロナ対策でオンライン授業の方が多かったのですが、感染拡大が落ち着いている時期には対面授業もあり、週4回以上大学に行きました。授業はすべて日本語で、「日本の政治と法律」「現代日本の社会問題」「日本語概論」などがありました。留学生向けの特別授業が大半ですが、日本人と一緒に受ける授業も少しありました。 楽しみだったのは「日本文化研修プログラム」で、書道や和菓子作りなどを体験しました。日本の高校生ともオンラインで交流しましたが、通常なら学校を訪問するはずだったので、残念でした。観光名所への研修旅行も、本来は1泊2日のはずが、コロナの影響で日帰りになりました。 京都大学の授業で書道の練習 しかし、先生や留学生仲間とは授業でたくさん交流しました。アカデミック・プレゼンテーションの授業では、研究結果をプレゼン資料にまとめて発表します。私は日本の家族関係に関する問題やベトナムの大気汚染の問題などを研究しました。この授業では同級生(留学生)と日本語でたくさん議論をし、日本語の文献を調べ、日本語の資料を作成します。そして、寮で発表の練習(日本語)もします。 また、日本人学生で留学生サポートをする人もいるので、その人たちともよく会話をしました。このように、日本語を使う機会はたくさんありました。 京都大学 地域のベトナム人との交流 大学以外ではVYSA京都の活動に参加しました。京都・大阪や周辺のベトナム人大学生や大学院生、社会人が参加しています。新型コロナの影響で多くのイベントが中止になりましたが、コロナが少し落ち着いていた2020年11月に20人あまりで京都府の三室戸寺(みむろとじ)と平等院に行きました。 VYSAの活動で知り合った友だちと電車を乗り継いで奈良県の長谷寺(はせでら)に行ったこともあります。不便な場所にありますが、とてもステキなお寺でした! 在日ベトナム学生青年協会 VYSA京都の仲間と三室戸寺を観光〈2020年11月〉 私の家計簿(1カ月の平均) ※100円=19,900 VND(2022年3月10日現在) 収入:120,000円 日本政府の奨学金 ¥120,000 支出:110,000円 家賃(留学生寮) ¥13,000 授業料(無料) ¥0 電気・ガス・水道 ¥6,000 携帯電話(SIM使わず) ¥0 Wi-Fi ¥1,000 食材費・外食費 ¥40,000 教材費、交通費、雑費 ¥50,000 差額:10,000円 ※旅行などに利用 私の好きな京都のスポット 私は留学中、祇園や清水寺、八坂神社、平安神宮、鴨川など、京都市内のさまざまな観光名所に自転車で行きました。また、寮に近い南禅寺や蹴上(けあげ)インクライン、平安神宮などには、よく歩いて行きました。これらの名所を私なりにランキングすると次の通りです。 ① 鴨川:特に桜の咲く季節は本当にきれいです。川を眺めているだけで気持ちが落ち着きます。 ② 平安神宮と岡崎公園:巨大な鳥居と疎水(水路)沿いの散歩道を楽しめます。桜もたくさんあります。 ③ 南禅寺と蹴上インクライン:蹴上は超有名インスタスポット。南禅寺は四季を通じて趣があります。 ④ 祇園エリアと八坂神社 ⑤ 清水寺 蹴上げインクライン 鴨川 平安神宮 まとめ 新型コロナの影響で留学プログラムの多くが制限または中止され、旅行にもほとんど行けませんでした。しかし、日本のトップ大学の一つで留学し、京都という素晴らしい町に住めたことは、かけがえのない経験になりました。 私は帰国して半年後の2022年3月に大学を卒業し、ハノイのIT企業で働いています。将来は、大学で日本語を教えることが夢です。これからも日本や日本語と関わっていきたいと思います。 奈良県の長谷寺
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Vol.67 N2合格→無試験で大学合格
今回の先輩 ト・ティ・タイン・ヴァンさん 2018年 高校卒業〈ホーチミン〉 2019年 日本語学校入学〈北海道〉 2020年 日本語能力試験N2合格 2021年 札幌学院大学入学〈北海道〉 〈2000年生まれ、ホーチミン市出身〉 ベトナムで14カ月間、日本語をしっかり勉強してから日本に留学したヴァンさん。来日して2年目でJLPT・N2に合格したため、大学に面接だけで入学できました。ヴァンさんの留学生活を紹介します。 〈このページの内容〉 • 留学前の日本語学習 • 来日後の日本語学習 • 親切な人たちに囲まれてアルバイト • N2合格→無試験で大学入学 • 留学の費用と家計簿 • ベトナム人コミュニティ • 北海道での暮らし • 落とした財布が戻ってきた! • トピックス <!-- --> 留学前の日本語学習 日本に向けて旅立つ前、空港で家族とお別れ〈2019年〉 日本語センターで14カ月間勉強 母の勧めで留学を決め、高校3年のときから14カ月間、ホーチミンの日本語センターで日本語能力試験(JLPT)N4レベルまで勉強しました。毎日、学校で7時間、自宅で3時間勉強しました。 北海道に決めた理由 東京の日本語学校に入ろうとしましたが、在留許可を取れなかったので、半年後に、北海道の日本語学校に入る前提で再トライしました。すると、在留資格を取れました。私と同じように東京の学校がだめだったので地方に変更するという人はたくさんいます。 来日後の日本語学習 自宅で漢字の勉強 私の来日後の日本語学習について紹介します。 ・来日(2019年4月)→N3合格(2020年12月)→N2合格(2021年12月) ・使った教材:みんなの日本語、「新完全マスター」シリーズ、「総まとめ」シリーズ、「耳から覚える」シリーズなど ・日本語学校でも大学でもなるべく日本語で会話(友人や先生と) ・新型コロナで登校する機会が減ったときは、YouTubeの日本語ニュースや日本語のアニメやドラマ(ベトナム語字幕付き)でも勉強 親切な人たちに囲まれてアルバイト カニ料理店 ・最初のアルバイト(1年間)。皿洗い。 ・学校からの紹介 ・時給は高いが、とても忙しかった。あまり日本語を話さない。 ・その後、居酒屋でも働いたが、帰宅が夜遅いので、2カ月で退職 スーパーマーケット ・おかずをパックに入れる仕事(1年間) ・先輩留学生からの紹介 ・平日は13:00~17:00、土日は7:00~16:00 ・会話が多く、日本語が上達した。 ・余ったおかずをもらえることもあった。 スーパーでは、若者は自分だけで、おじいさんやおばあさんの先輩の皆さんがとても親切にしてくれました。昼休みや休憩のときにご飯やお菓子を食べながらたくさん話をしました。私の誕生日にはケーキを買ってくれ、お祝いの歌も歌ってくれました。大学進学後は、自宅から遠くなったので退職しましたが、今でもおばあさん3、4人とLINEで連絡を取り合っています。 大学に入ってからは、食品工場で深夜勤務(週3回、21:00~6:00)をしました。時給は高かったのですが、勉強に支障があるのですぐにやめました。今はバインミー店で働いています。 N2合格→無試験で大学入学 大学の留学生仲間とキャンパス(右) 私が通っている札幌学院大学では日本留学試験(EJU)の日本語(400点満点)の得点が 200点以上かJLPT・N2なら、筆記の入学試験を免除されます。私はEJU194点でしたが、N2だったので、面接だけで大学に入れました。 日本語学校が開いたオンラインの大学説明会に地元の約10大学が参加しました。その中で、この大学は成績優秀者への授業料割引(奨学金)が充実していました。GPA2以上なら授業料30%引き、3以上なら75%引きです。 大学の授業はすべて日本語です。毎週課題があり、パソコンでレポートを作ります。漢字を選ぶのが難しく、辞書アプリで調べながらがんばっています。 external link 日本語の辞書アプリはどれがいい? 留学の費用と家計簿 日本語学校で 留学の最初にかかった費用 ・日本語学校の1年目の授業料や飛行機代など(約1,000,000円) ・日本語センターへの手数料(240,000,000 VND) ・両親が貯金から払った。 日本での授業料など ・日本語学校(年間):¥760,000 ・大学(年間):¥1,104,000-¥340,000=¥764,000(私の成績に応じて減額) ・今は節約生活。就職したら旅行をしたい。 私の家計簿(1カ月の平均) ※大学1年のときの家計簿 ※100円=約19,800 VND(2022年3月4日現在) 収入:¥80,000~¥90,000 アルバイト1件(飲食店) ¥80,000 支出:¥136,000 家賃(ワンルーム) ¥18,000 授業料(割引後) ¥67,000 電気・ガス・水道 ¥13,000 携帯電話(LINEモバイル) ¥3,000 Wi-Fi ¥4,000 健康保険 ¥4,000 食材費 ¥12,000 外食費・交通費・雑費 ¥15,000 毎月の差額:▲¥46,000~¥56,000 ※仕送りと夏休みなどに長く働いて補てん ベトナム人コミュニティ ベトナム人との交流は日本語学校の同級生が中心ですが、VYSA北海道の活動にも参加しています。最初は、2019年10月に札幌市内の公園で開かれた「ベトナムフェスティバルin 札幌」=写真=で、アオザイを着て踊ったりベトナム料理を売ったりしました。VYSAのFacebookを見て友人と一緒に申し込みました。準備や練習のために何度も集まり、打ち上げ会にも参加しました。 これをきっかけにVYSAのイベントによく参加しています。ベトナム人の友だちが増えますし、先輩留学生にいろいろなことを教えてもらえます。イベントのとき以外にも飲み会があります。 external link 在日ベトナム人学生青年協会(VYSA) 北海道での暮らし ときどき大雪の日があります スクーター 日本でスクーターの運転免許を取って乗っている友だちが東京や大阪に3、4人います。私もスクーター購入を検討しましたが、北海道では冬に路面が凍ってバイクに乗れないので、あきらめました。 留学生に自転車プレゼント 札幌市は留学生に自転車をプレゼントしてくれます。学校を通じて申請します。ただし、かぎはかけましょう。来日して1年目、自転車にかぎをかけずにアパートの前に置いていたら、夜に盗まれました。日本は安全な国ですが、最低限の注意は必要です! 落とした財布が戻ってきた! ある日、買い物帰りに地下鉄の駅で財布を落としました。帰宅して気付き、駅に戻って駅員さんに言うと、次の日に地下鉄から「財布が見つかりました」と電話がありました。駅で受け取り、中に入っていた現金20,000円や在留カードは無事でした! 日本で初めて一人暮らしを体験し、最初は苦労もありましたが、バイト先でおばあさんたちにやさしくしてもらったり、財布を落としても見つかったりして、日本が大好きになりました。日本人はやさしいですし、仕事にまじめにとりくみ、規則も守ります。卒業後もできるだけ長く日本で働きたいと思っています。 トピックス ハオハオ大好き 日本に来るときにインスタントラーメンのハオハオ60袋をスーツケースに入れて持ってきました。日本の税関で、「これは何に使うのですか」と英語で聞かれ、「自分で食べます」と答えました。どきどきしましたが、大丈夫でした。今は日本にベトナム食材店が増え、ハオハオも手に入りやすくなりました。 苦手な料理をがんばる 来日して初めて料理をするようになりました。よく作るのはチャーハンとインスタントラーメンです。そんな私に母はベトナムの調味料をよく送ってくれます(10㌔の箱=送料約2,000,000 VND)。まだ料理は苦手ですが、引き続きがんばります。 今回の先輩 ト・ティ・タイン・ヴァンさん 2018年 高校卒業〈ホーチミン〉 2019年 日本語学校入学〈北海道〉 2020年 日本語能力試験N2合格 2021年 札幌学院大学入学〈北海道〉 〈2000年生まれ、ホーチミン市出身〉 ベトナムで14カ月間、日本語をしっかり勉強してから日本に留学したヴァンさん。来日して2年目でJLPT・N2に合格したため、大学に面接だけで入学できました。ヴァンさんの留学生活を紹介します。 <!-- --> 〈このページの内容〉 • 留学前の日本語学習 • 来日後の日本語学習 • 親切な人たちに囲まれてアルバイト • N2合格→無試験で大学入学 • 留学の費用と家計簿 • ベトナム人コミュニティ • 北海道での暮らし • 落とした財布が戻ってきた! • トピックス 留学前の日本語学習 日本語センターで14カ月間勉強 母の勧めで留学を決め、高校3年のときから14カ月間、ホーチミンの日本語センターで日本語能力試験(JLPT)N4レベルまで勉強しました。毎日、学校で7時間、自宅で3時間勉強しました。 北海道に決めた理由 東京の日本語学校に入ろうとしましたが、在留許可を取れなかったので、半年後に、北海道の日本語学校に入る前提で再トライしました。すると、在留資格を取れました。私と同じように東京の学校がだめだったので地方に変更するという人はたくさんいます。 日本に向けて旅立つ前、空港で家族とお別れ〈2019年〉 来日後の日本語学習 私の来日後の日本語学習について紹介します。 ・来日(2019年4月)→N3合格(2020年12月)→N2合格(2021年12月) ・使った教材:みんなの日本語、「新完全マスター」シリーズ、「総まとめ」シリーズ、「耳から覚える」シリーズなど ・日本語学校でも大学でもなるべく日本語で会話(友人や先生と) ・新型コロナで登校する機会が減ったときは、YouTubeの日本語ニュースや日本語のアニメやドラマ(ベトナム語字幕付き)でも勉強 自宅で漢字の勉強 親切な人たちに囲まれてアルバイト カニ料理店 ・最初のアルバイト(1年間)。皿洗い。 ・学校からの紹介 ・時給は高いが、とても忙しかった。あまり日本語を話さない。 ・その後、居酒屋でも働いたが、帰宅が夜遅いので、2カ月で退職 スーパーマーケット ・おかずをパックに入れる仕事(1年間) ・先輩留学生からの紹介 ・平日は13:00~17:00、土日は7:00~16:00 ・会話が多く、日本語が上達した。 ・余ったおかずをもらえることもあった。 スーパーでは、若者は自分だけで、おじいさんやおばあさんの先輩の皆さんがとても親切にしてくれました。昼休みや休憩のときにご飯やお菓子を食べながらたくさん話をしました。私の誕生日にはケーキを買ってくれ、お祝いの歌も歌ってくれました。大学進学後は、自宅から遠くなったので退職しましたが、今でもおばあさん3、4人とLINEで連絡を取り合っています。 大学に入ってからは、食品工場で深夜勤務(週3回、21:00~6:00)をしました。時給は高かったのですが、勉強に支障があるのですぐにやめました。今はバインミー店で働いています。 N2合格→無試験で大学入学 私が通っている札幌学院大学は日本留学試験(EJU) 200点以上かJLPT・N2なら、筆記の入学試験を免除されます。私はEJU194点でしたが、N2だったので、面接だけで大学に入れました。 日本語学校が開いたオンラインの大学説明会に地元の約10大学が参加しました。その中で、この大学は成績優秀者への授業料割引(奨学金)が充実していました。GPA2以上なら授業料30%引き、3以上なら75%引きです。 大学の授業はすべて日本語です。毎週課題があり、パソコンでレポートを作ります。漢字を選ぶのが難しく、辞書アプリで調べながらがんばっています。 external link 日本語の辞書アプリはどれがいい? 大学の留学生仲間とキャンパス(右) 留学の費用と家計簿 留学の最初にかかった費用 ・日本語学校の1年目の授業料や飛行機代など(約1,000,000円) ・日本語センターへの手数料(240,000,000 VND) ・両親が貯金から払った。 日本での授業料など ・日本語学校(年間):¥760,000 ・大学(年間):¥1,104,000-¥340,000=¥764,000(私の成績に応じて減額) ・今は節約生活。就職したら旅行をしたい。 日本語学校で 私の家計簿(1カ月の平均) ※大学1年のときの家計簿 ※100円=約19,800 VND(2022年3月4日現在) 収入:¥80,000~¥90,000 アルバイト1件(飲食店) ¥80,000 支出:¥136,000 家賃(ワンルーム) ¥18,000 授業料(割引後) ¥67,000 電気・ガス・水道 ¥13,000 携帯電話(LINEモバイル) ¥3,000 Wi-Fi ¥4,000 健康保険 ¥4,000 食材費 ¥12,000 外食費・交通費・雑費 ¥15,000 毎月の差額:▲¥46,000~¥56,000 ※仕送りと夏休みなどに長く働いて補てん ベトナム人コミュニティ ベトナム人との交流は日本語学校の同級生が中心ですが、VYSA北海道の活動にも参加しています。最初は、2019年10月に札幌市内の公園で開かれた「ベトナムフェスティバルin 札幌」=写真=で、アオザイを着て踊ったりベトナム料理を売ったりしました。VYSAのFacebookを見て友人と一緒に申し込みました。準備や練習のために何度も集まり、打ち上げ会にも参加しました。 これをきっかけにVYSAのイベントによく参加しています。ベトナム人の友だちが増えますし、先輩留学生にいろいろなことを教えてもらえます。イベントのとき以外にも飲み会があります。 external link 在日ベトナム人学生青年協会(VYSA) 北海道での暮らし スクーター 日本でスクーターの運転免許を取って乗っている友だちが東京や大阪に3、4人います。私もスクーター購入を検討しましたが、北海道では冬に路面が凍ってバイクに乗れないので、あきらめました。 留学生に自転車プレゼント 札幌市は留学生に自転車をプレゼントしてくれます。学校を通じて申請します。ただし、かぎはかけましょう。来日して1年目、自転車にかぎをかけずにアパートの前に置いていたら、夜に盗まれました。日本は安全な国ですが、最低限の注意は必要です! ときどき大雪の日があります 落とした財布が戻ってきた! ある日、買い物帰りに地下鉄の駅で財布を落としました。帰宅して気付き、駅に戻って駅員さんに言うと、次の日に地下鉄から「財布が見つかりました」と電話がありました。駅で受け取り、中に入っていた現金20,000円や在留カードは無事でした! 日本で初めて一人暮らしを体験し、最初は苦労もありましたが、バイト先でおばあさんたちにやさしくしてもらったり、財布を落としても見つかったりして、日本が大好きになりました。日本人はやさしいですし、仕事にまじめにとりくみ、規則も守ります。卒業後もできるだけ長く日本で働きたいと思っています。 トピックス ハオハオ大好き 日本に来るときにインスタントラーメンのハオハオ60袋をスーツケースに入れて持ってきました。日本の税関で、「これは何に使うのですか」と英語で聞かれ、「自分で食べます」と答えました。どきどきしましたが、大丈夫でした。今は日本にベトナム食材店が増え、ハオハオも手に入りやすくなりました。 苦手な料理をがんばる 来日して初めて料理をするようになりました。よく作るのはチャーハンとインスタントラーメンです。そんな私に母はベトナムの調味料をよく送ってくれます(10㌔の箱=送料約2,000,000 VND)。まだ料理は苦手ですが、引き続きがんばります。