体験談(留学・高度)

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By KOKORO(毎日新聞社+VAIJ主催、在ベトナム日本国大使館など後援)

今回の先輩

Nguyễn Thị Hồng Minh (グエン・ティ・ホン・ミン)さん

1994年生まれ、バクニン省出身

2012年 6月  Trung Hoc Pho Thong Chuyen Khoa Hoc Tu Nhien – Dai Hoc Khoa Hoc Tu Nhien(ハノイ国家大学自然科学大学付属英才高校) 卒業

2012年 10月  九州大学工学部入学
2016年 9月 九州大学工学部卒業
2016年10月 九州大学工学部大学院修士課程入学
2018年 8月 九州大学工学部大学院修士課程卒業
2018年11月 American STEMのスタッフとしてハノイ勤務
2019年11月 埼玉県富士見市に移住

はじめに

幼少時に事故で父を亡くしたミンさん。その後は、兄とミンさんを母親が一人で育ててくれた。優秀で勉強家だったミンさんはベトナムで1、2位を争う高校に進学。卒業前にJASSO(日本学生支援機構)がハノイで主催した日本留学フェアに参加し、日本政府の奨学金で日本に留学できる制度を知って応募した。そして、選考にパスして日本の国立大学・九州大学に入学し、大学院にも進学した。

留学先の九州大学伊都キャンパス【2017年3月】
大学院の研究仲間と飲み会【2017年5月】

九大で英語の授業だけで大学や大学院修士課程を卒業し、授業以外の場で日本語力も身につけたミンさん。本人が書いた体験談を以下に紹介する。

奨学金で学位と修士を取得

日本の名門国立大学「九州大学」(福岡県)が当時、Global30という日本の文部科学省の事業に採択されていました。英語の授業だけで学位を取れるコースを増やしたり外国人留学生の受け入れ態勢を充実させたりする事業です。この事業で、九大では、外国人留学生に国費奨学金(文科省の奨学金)を支給するか、国費奨学金の選考にもれた留学生には九大の奨学金を支給する制度がありました。私は国費奨学金を支給され、2012年から4年間、毎月12万円の国費をもらって生活し、授業料も免除されました。また、大学院の2年間もパナソニックから毎月12万円の奨学金をもらい、授業料も免除されました。

 

2枚とも=ベトナム人仲間で大分県の「くじゅう花公園」へ【2017年5月】
福岡県八女市の星野村に日帰り旅行【2017年5月】

JASSOの留学フェアを活用

私の実家は大豆農家です。8才の時に父が交通事故で亡くなり、母が兄と私を育ててくれました。高校には安い費用で行けましたが、一流大学に行くには学費がかさむので、私は奨学金で大学に行く道を探していました。すると、ベトナム国内で進学するより海外留学の方が奨学金制度が充実していることが分かり、海外に留学しようと考えるようになりました

そんなとき、JASSOの日本留学フェアに出会いました。JASSOが主催する留学説明会で、日本の大学がたくさん参加し、外国人留学生のためのコースや支援制度を紹介しています。私はハノイのフェアで九大の留学プログラムのパンフレットをもらい、九大に書類を郵送して出願しました。JASSOはハノイとホーチミンで毎年1回ずつ日本留学フェアを開催しており、ハノイにあるJASSOベトナム事務所では普段も日本留学に関する相談に乗ってくれます。後輩の皆さんも活用されてはいかがでしょうか。

JASSOベトナム事務所

私はその後、筆記試験(数学、化学=問題文は英語)と面接(英語)をハノイで受けました。また、TOEFL IBT(Internet Based Test)で120点満点中80点以上を取ることも条件でした。こうして私は九大工学部に入学できました。

日本での生活

日本では奨学金を頂いたので、勉強に多くの時間をさくことができました。学部や大学院では材料工学(Material Engineering)を専攻しました。

アルバイトは大学食堂のレジ担当と外国人留学生への家庭教師ぐらいでした。私は数学が得意だったので、九大から依頼されて後輩留学生に微分・積分などを教えたのです。

福岡市内で散歩【2014年8月】

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私の家計簿(1カ月の平均)

※100円=21,943 VND(2020年3月31日現在)

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研究室の仲間とカラオケ【2015年9月】

日本語の勉強

大学の単位はすべて英語の授業で取りましたが、1年生の時に大学で日本語の授業が少しありました。それ以外には、NHKが提供している“Learn Japanese”というサイトで自分で日本語を勉強しました。

NHK提供の日本語学習サイト
https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/vi/learnjapanese/

また、大学ではチェスのサークルに参加し、日本人のサークル仲間とたくさん会話をし、日本語も上達しました。3年生からは研究室の仲間とも食事や遊び、旅行に行きました

福岡市のアサヒビール園で研究室の先輩と飲み会【2015年7月】

日本をエンジョイ

休暇時には、大阪青年会議所が主催するPCY(世界学生平和会議)などイベントに参加したり、大学の研究室仲間で旅行をしたり、ベトナム人仲間で旅行をするなど日本生活を楽しみました。

PCYに参加し高野山へ。日本や各国の学生と交流しました。【2014年8月】
PCYのプログラムで高野山のお寺で日本人大学生らと一緒に座禅【2014年8月】

卒業後

九大の助教授(数学)をしていたベトナム人男性と留学中に出会い、大学院卒業後の2018年12月に結婚しました。彼は私の高校の先輩で、今は日本の名門私立大である早稲田大学で准教授をしています。

九大のベトナム人グループで鹿児島に旅行。右から2人目が今の夫。【2018年5月】
ハノイのコーヒーショップで
【2019年10月】

また、卒業後の2018年8~10月には、ウガンダでAshinaga Africa Initiativeのインターンをし、同年11月からはAmerican STEM(Science + Technology + Engineering + Mathematics)のスタッフとしてハノイの小中学校で教師や生徒らに理系の基礎になる知識を教えました。日本で学んだ専門知識がこの仕事で役立ちました。

2019年11月からは夫の住む埼玉県に移り、現在、自然科学系の教師の仕事を探しています。また、友人と一緒に2019年7月に立ち上げた“Opportunity Hunting” というFacebookページで、留学を希望するベトナム人学生のお手伝いをするソーシャル・ビジネスを続けています。留学希望者が留学生の学校や奨学金を探したりCV や希望動機書を書いたりするのを安い費用で支援する事業です。後輩のベトナム人学生の方々にもぜひよい留学をしていただきたいと思っています。

・Opportunity Hunting  https://www.facebook.com/DuHocSanHocBong/