体験談(留学・高度)

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By KOKORO(毎日新聞社+VAIJ主催、在ベトナム日本国大使館など後援)

今回の先輩

レ・チュン・ハイさん
  • 2014年 5月ファンチヤウチン高校卒業〈ダナン市〉
  • 2014年 9月ドンズー日本語学校入学〈ホーチミン〉
  • 2015年 10月ドンズー日本語学校卒業
  • 2015年 10月神村学園専修学校日本語学科入学〈鹿児島県〉
  • 2017年 3月神村学園専修学校日本語学科卒業
  • 2017年 4月長崎県立大学経営学科入学〈長崎県〉

〈1996年生まれ、ダナン市出身〉

はじめに

外国人客が多い佐世保のバーで大学の仲間たち(ベトナム人、日本人、中国人)と〈2018年〉

「日本で知識と人脈を広げ、将来ベトナムの発展に貢献する」という目標を持ち、まじめに勉強を続け、仲間との時間も大切にするハイさん。多彩な交流を積み重ねるハイさんの留学生活は、他の留学生やこれから日本に来る留学生にも参考になることだろう。

外国人客が多い佐世保のバーで大学の仲間たち(ベトナム人、日本人、中国人)と〈2018年〉

留学前にみっちり勉強

私はベトナムで大学受験に合格しましたが、日本に留学して成功した親せきの話を聞いて自分も留学したくなり、まずドンズー日本語学校を受験しました。

ホーチミンのドンズー日本語学校「ビンミー留学生日本語センター」では、日本の大学を目指す学生向けにハイレベルの日本語教育を行っています。私はここで1年間、寮生活をしました。日本語は初めてでしたが、1年で日本語能力試験(JLPT)のN3程度のレベルになりました。授業は平日の朝から夕方までと土曜日の午前で、毎月、試験の成績でクラス分けが行われました。授業のレベルについていけず、途中で退学する仲間もいました。

ドンズーの教室(左奥が私)。1日中勉強するので、授業の合間に仮眠する生徒も多い

ドンズーの教室(左奥が私)。1日中勉強するので、授業の合間に仮眠する生徒も多い

同級生と一緒にホーチミンから福岡空港を経て留学先の鹿児島に到着〈2015年10月〉

日本語学習

神村学園で一緒に勉強した仲間たち〈2017年〉

2015年10月、ドンズーの提携校である神村学園専修学校(鹿児島県)に入学し、1年半学びました。日本留学試験(EJU)のための勉強は自分でやりました。

授業以外での日本語学習には下記の教材を使いました。 ・「新完全マスター」シリーズ ・「スピードマスター」シリーズ ・「日本語総まとめ」シリーズ

テレビやインターネットも活用しました。 ・テレビのニュース ・日本のアニメ(字幕:ベトナム語、音声:日本語) ・日本の音楽

神村学園で一緒に勉強した仲間たち〈2017年〉

日本留学試験(EJU)の勉強

佐世保のドンズー仲間(同期+後輩)の食事会。ドンズー生の結束は強い。〈2016年〉

EJU対策には「日本留学試験対策問題集 ハイレベル」シリーズ(アスク出版)や「理解しやすい数学I+A」(文英堂)などを使いました。また、ドンズーの先輩たち(大学生)が集まって模擬試験を作り、年2回のEJUの直前に後輩の私たちに受けさせて採点し、個別指導もしてくれました。こうして、私は長崎県立大学(佐世保市)に合格しました。

佐世保のドンズー仲間(同期+後輩)の食事会。ドンズー生の結束は強い。〈2016年〉

学費と奨学金

神村学園専修学校の学園祭〈2016年11月〉

神村学園の学費…入学金約10万円。ドンズーとの提携料金で「学費+寮費+光熱費」が毎月数万円。

長崎県立大学の学費…入学金37万円。授業料は年間535,800円ですが、留学生向けの授業料減免制度で毎年半額になりました。これには成績などの条件があります。

また、ロータリークラブの奨学金(毎月10万円)を2019年4月から受給しています(2年間)。

Link: ロータリー米山記念奨学会

神村学園専修学校の学園祭〈2016年11月〉

アルバイト

アルバイト先のリゾートホテルでバイト仲間と。背後は「ハウステンボス」。〈2018年ごろ〉

私は週28時間(長期休暇時は40時間)の決まりを守りながらさまざまなアルバイトを続け、夏休みには遠方で住み込みの農業アルバイトもしました。アルバイトを通じて日本語を話す機会が増えましたし、仲間もたくさんできました。

アルバイト先のリゾートホテルでバイト仲間と。背後は「ハウステンボス」。〈2018年ごろ〉

時期

主なアルバイト

神村学園

▪ ラーメン店(学校の紹介) 日本語の練習のためホール担当を希望。最初は「いらっしゃいませ」「決まりましたらお呼びください」「ご注文は以上でおそろいですか」など決まり文句と商品名だけを覚えて対応(→わからないことを聞かれたら店長を呼ぶ)。その後、だんだんと日本語がわかるようになった。

大学1~3年

▪ リゾートホテル 観光施設「ハウステンボス」の併設ホテル。結婚式の準備や料理の配膳、レストラン店員など。自宅から1時間かかるので、週末だけ勤務。新型コロナの影響で仕事がなくなった。

大学2~3年

▪ コンビニ 平日は、自宅に近いコンビニで勤務。週末は、ビジネスホテルの仕事とリゾートホテルの仕事。

大学3~4年

▪ ビジネスホテル 部屋の清掃とベッドメイク。9:30~14:30。当初は週末だけだったが、大学で必要な単位をほとんど取得したので、大学4年からは平日も勤務。

大学4年

▪ 牛丼店 リゾートホテルの仕事がなくなったため。

夏休み(1~3年)

▪ 農業アルバイト(ドンズーの先輩の紹介) 岩手県で住み込みで農作業。朝4時起床。大根の収穫など。大学2年の夏は1カ月半滞在して約40日間働き、手取り給料42万円。3年の夏は滞在1カ月、手取り22万円。

私の家計簿(1カ月の平均)

※大学3年のときの家計簿

※100円=21,639ドン(2020年7月23日現在)

収入(合計170,000円~180,000円)
収入

・アルバイト3件 70,000円~80,000円

※コンビニ、ビジネスホテル、リゾートホテル

※大学の定期試験がある月は約30,000円

・奨学金 100,000円

※ロータリー米山記念奨学会

支出(合計94,000円~110,000円)
家賃

26,000円

※1人暮らし、ワンルーム、wi-fi・水道費込み

授業料

25,000円

光熱費

10,000円

※電気・ガスの合計(自炊のためガス代がかさむ)

携帯電話

3,000円

※Au

※Wi-Fiのある大学図書館で勉強することが多かったので通信料低額

食費

15,000円

※バイト先のコンビニで廃棄弁当をもらえることもあった

雑費

15,000円~30,000円

※衣類、交通費、外食費など

差額・貯金(70,000円~80,000円)
差額

70,000円~80,000円

※緊急時(新型コロナなど)や定期試験の時期など収入減に備えてプール

※2年に1回ベトナムに帰国

※長期休みに旅行

ベトナム料理の食材も地元の店で入手〈2020年7月〉

ベトナム料理の食材も地元の店で入手〈2020年7月〉

アルバイト仲間

ラーメン店のバイト修了後、仲間が私の誕生日祝い。ケーキは店長の差し入れ。〈2016年〉

アルバイトがきっかけでたくさんの仲間ができました。神村学園時代にはベトナム人の同級生6人でラーメン店やその姉妹店でアルバイトをしましたが、2歳年上の店長が店員と一緒に私たちの寮によく遊びに来てくれました。私たちはベトナム料理を作って迎え、一緒にビールを飲んで過ごしました。

大学に入ってからは、リゾートホテルのバイト仲間で集まって食事会をしたり、そのメンバーの友人の技能実習生たちの寮に集まって食事会をしたりしています。

ラーメン店のバイト修了後、仲間が私の誕生日祝い。ケーキは店長の差し入れ。〈2016年〉

地域のベトナム人コミュニティ

長崎県佐世保市の町並み

地域のベトナム人の交流もあります。友人やその友人がテト(旧正月)や週末に一緒に食事をしたり、新しく日本に来た人をサポートしたりします。今年のテトには、日本語学校の留学生やアルバイト仲間、大学の同級生など地元のベトナム人十数人が後輩留学生の家に集まってお祝いをしました。長崎では大都会と比べてベトナム人が少ないこともあってか、地域のベトナム人のつながりが強いように思います。

長崎県佐世保市の町並み

旅行とドンズー仲間

旅行先の横浜でドンズーの同期と食事会〈2018年〉

ドンズー卒業生は全国に散らばっており、旅行の際は互いの家に泊め合います。私も九州各地や関西、東京、横浜、福島などさまざまな地域に旅行しました。普段の生活でも、地元のドンズー卒業生との交流はたくさんあります。

旅行先の横浜でドンズーの同期と食事会〈2018年〉

ロータリークラブの活動

長崎県雲仙市でRCの相談担当の方と〈2019年12月〉

大学3年からロータリークラブ(RC)の奨学金を受給しているため、RCの活動によく参加します。これを通じて各国からの奨学生仲間や日本の方々との交流も生まれました。私は長崎県内各地のRCでこれまでに6回、卓話(ミニ講演)を担当しました。奨学生の相談担当のRCメンバーがおられ、卓話担当後に観光に連れて行ってくれたりもします。

長崎県雲仙市でRCの相談担当の方と〈2019年12月〉

長崎県の鎮西学院高校の生徒らと交流〈2019年〉

奨学生がRCメンバーに手料理をふるまうイベントや高校生と交流するイベントなどもあります。2019年は、奨学生14人が長崎県諫早(いさはや)市へのRCの研修旅行(1泊2日)に同行させていただき、地元の高校生らと交流しました。

長崎県の鎮西学院高校の生徒らと交流〈2019年〉

農業アルバイトで実習生活を体験

左:農園の昼休み〈2018年〉
右:農園の寮。早朝に起床し、車で農園へ〈2018年〉

私は週28時間(長期休暇時は40時間)の決まりを守りながらさまざまなアルバイトを続け、夏休みには遠方で住み込みの農業アルバイトもしました。アルバイトを通じて日本語を話す機会が増えましたし、仲間もたくさんできました。

しかし、2年前のある日、上司のやり方に不満を持った実習生1人が技能実習をやめると言い出しました。他の実習生も同じ不満を抱えていますが、日本語を十分に話せません。そこで、私が彼らと農園幹部の間に入って話し合いが行われました。実習生1人は結局ベトナムに帰国しましたが、この話し合いをきっかけに実習生の処遇が改善され、最近では、幹部が彼らを旅行に連れて行くなどよい関係が続いているようです。

左:農園の昼休み〈2018年〉
右:農園の寮。早朝に起床し、車で農園へ〈2018年〉

鹿児島・長崎のよさ

リゾートホテルのバイト仲間の家で食事会〈2019年〉

東京や大阪に遊びに行くこともありますが、人々がいつも忙しそうで、余裕がないように見受けられます。都会で学ぶベトナム人仲間には、「日本が好きになれない」「卒業したら帰国したいと」いう人も少なくありません。

都会での人間関係を聞くと、鹿児島・長崎とは違うように感じます。私はここで親切な日本人に多く出会い、日本になじむことができました。アルバイト先でもたくさんのお客さんに話しかけていただきました。地域のベトナム人コミュニティのつながりもあります。地方で留学できてよかったと思っています。

リゾートホテルのバイト仲間の家で食事会〈2019年〉

大学での勉強と将来

勉強もがんばっています。大学3年間で必要単位をすべて取り、あとは卒業論文だけです。大学では保険と企業のリスクマネジメントについて学びましたが、もう少し勉強したくて大学院の推薦入試を受け、合格しました。卒業後は日本で保険関係の仕事をし、将来はベトナムに知識やノウハウを還元したいと思っています。