わたしの体験

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2020年08月7日 わたしの体験

今回の先輩

Phạm Phi Hải Yến (ファム・フィ・イェン)さん
  • 2002年 5月 Nguyễn Bỉnh Khiêm 高校卒業〈ヴィンロン〉
  • 2002年 9月 ホーチミン国家大学・工科大学建築学部入学
  • 2007年 4月 外資系インテリア会社入社→4年勤務〈ホーチミン〉
  • 2010年 10月 留学中の夫と結婚
  • 2011年 4月 訪日〈大阪〉
  • 2012年 12月 出産
  • 2013年 10月 日本語学校入学→1年間
  • 2014年 4月 ヘアブラシメーカー入社→2年間勤務
  • 2016年 11月 出産
  • 2017年 10月 大阪大学大学院言語文化研究科研究生
  • 2018年 4月 大阪大学大学院修士課程入学
  • 2020年 4月 大阪大学大学院博士課程入学

〈1984年生まれ、ヴィンロン省出身〉

はじめに

家族でマイカーでお出かけ〈2020年5月〉

最初は数年間住むだけのつもりで訪日したイェンさん。その後、日本で娘2人を出産し、大学院にも進み、最近は家も購入した。イェンさんはどうやって日本語を身に付け、どうやって仲間を増やしていったのか――出産・育児やアルバイトの様子とともに本人がリポートする。

家族でマイカーでお出かけ〈2020年5月〉

恋人が日本へ、そして結婚

左:ホーチミン市内の公園で勤務先の同僚と〈2007年〉
右:ホーチミンの勤務先で〈2011年〉

私は高校2年のときに同級生と交際を始め、彼と同じ大学に進みました。しかし、彼はその翌年から日本の文部科学省の奨学金で6年間留学(日本語学校1年、高専3年、大学2年)することになりました。私は留学には興味がなく、その後、ホーチミンで就職しやりがいを感じて仕事をしていました。彼とはめったに会えませんでしたが、毎日国際電話をかけてきてくれ、1時間ぐらい話しました。こうして遠距離恋愛の末、私たちは結婚しました。夫は大学院1年目、私は社会人4年目でした。

左:ホーチミン市内の公園で勤務先の同僚と〈2007年〉; 右:ホーチミンの勤務先で〈2011年〉

◇遠距離恋愛の末に結婚〈2010年〉

夫と同居するため日本へ

結婚して半年後の2011年4月、私は仕事を辞めて訪日しました。夫は設計会社への入社が内定していました。そのときは、日本に長く住むことになるとは思っていませんでした。

私はベトナムの外資系企業で英語で仕事をしていましたが、日本では英語が通じません。当初は友だちも少なく、日本語もできなかったので、ずっと家にいてストレスがたまりました。そんなとき、留学生の妻仲間(ベトナム人)が地元の国際交流協会の日本語教室を紹介してくれました。ボランティアの日本人先生が教える無料教室(1回1時間)です。私は週2回通いました。生徒は20~30人(うちベトナム人4人)で、大阪大学の留学生の家族が大半でした。

私たちの略歴

私たちの略歴

2002年 ホーチミン国家大学入学
2004年 日本の日本語学校
2005年 高専
2007年 卒業→ベトナムで就職
2008年 大阪大学工学部
2010年 大阪大学大学院
2010年 結    婚
2011年 退社→訪日
2012年 出産 日本で就職
2013年 日本語学校→1年間
2014年 日本の会社で勤務→2年間
2016年 出産
2018年 大阪大学大学院(修士課程)
2020年 大阪大学大学院(博士課程)

母親生活は寂しいスタート

長女と近所の公園で〈2014年春〉

日本に来て数カ月後、日本語学校に通うお金を貯めるため、留学生の妻仲間の紹介でクリーニング店でパートを始めました。週末だけの仕事で、洗濯とアイロンの担当でした。そして、ほどなく妊娠が判明しました。どの病院がよいのか分からず困っていると、アパートの家主さん(医師)が「大きな病院で産む方がよい」と教えてくれました。そして、マイカーで私たちを病院に連れて行き、受診手続きもしてくれました。その後は夫に通訳として付き添ってもらって受診を続け、2012年10月に長女を出産しました。

産後は、母がベトナムから1カ月間手伝いにきてくれましたが、夫は仕事が忙しくていつも遅い帰宅でした。私は言葉の壁もあり、乳児の予防接種や親子ふれ合いイベントなどの情報も十分に得られませんでした。

長女と近所の公園で〈2014年春〉

保育所を活用し日本語学校へ

日本語学校のクラスメイトと教室で

出産2カ月後、私は週末のパートに復帰しました。そして、出産1年後、娘を保育所に預けて日本語学校(授業料・年間65万円)に入り、1年間通いました。ボランティア教室で学んだおかげで、日本語学校は中級からスタートできましたが、娘がよく発熱したので半分近く休みました。それを補うため、毎晩2時間、自分で勉強しました。

自習に使った主な教材を紹介します。

・「ペアで覚えるいろいろなことば」(武蔵野書院)=日本語教師の推薦

・小学生の国語ドリル

・小学生新聞

・News Web Easy(オンラインニュース)=音声も聞ける

日本語学校のクラスメイトと教室で

日本語学校を経て「就職」

勤務先の会社のベトナム代理人との懇親会で通訳〈2015年〉

日本語力がついたので2014年から2年間、大阪市のヘアブラシメーカーで働きました。ベトナム人の友人が退職する際に後任として紹介してもらいました。同社はベトナムの工場でも委託生産しており、翻訳・通訳が主な仕事内容でした。半年間は日本語学校に通いながらで、残り1年半はフルタイムでした。二女の出産(2016年11月)に備えて退社するまで、社長はじめ社員の皆さまに親切にしていただき、楽しく働けました。

勤務先の会社のベトナム代理人との懇親会で通訳〈2015年〉

キャリアアップを目指し大学院へ

左:大阪大学のベトナム語専攻の教官や院生らと食事会
右:大阪大学で修士課程の修了式〈2020年3月〉

2017年10月、大阪大学大学院の研究生になりました。ここで準備して入試を受け、半年後に大学院に進みました。私の在留資格は「家族滞在」で「留学」ではないので、日本人と同じ入試でした。よい仕事が見つかるようキャリアアップしたいと思ったのが進学理由です。2020年4月からは博士課程に進み、在日ベトナム人の子どもへのベトナム語の教え方について研究しています。なお、大学院入学後に在留資格を「留学」に変更し、修士2年目は文部科学省の奨学金を毎月148,000円受給し、授業料も免除されました。博士課程では、年齢制限でこの奨学金は受給できなくなりました。

左:大阪大学のベトナム語専攻の教官や院生らと食事会; 右:大阪大学で修士課程の修了式〈2020年3月〉

ベトナム人コミュニティ

左:国際交流協会の活動で仲良くなったベトナム人女性らとテトのイベントを開催〈2016年〉
右:東京のベトナム人の友だちを訪ねて〈上野公園で2016年〉

当初は留学生の妻仲間しか友人がいませんでした。しかし、大阪のベトナム人留学生が集まる大きなグループがあり、毎年テト(旧正月)に大阪大学の施設に集まってお祝いをします。このような機会にベトナム人の友だちが増えていきました。国際交流協会の活動を通じて友だちになったベトナム人仲間もいます。また、夫の妹が2014年から日本で留学し近所に住み始めました。義妹はその後、日本で就職しました。義妹の娘は私の長女と同学年で、彼女たちとは今も一緒に食事をしたり買い物や旅行に行ったりします。

左:国際交流協会の活動で仲良くなったベトナム人女性らとテトのイベントを開催〈2016年〉; 右:東京のベトナム人の友だちを訪ねて〈上野公園で2016年〉

親切な日本人のママ友たち

親切な日本人のママ友たち

ママ友たちと近所の公園で桜の花見〈2019年4月〉

日本語が話せるようになると、日本人のママ友だちもできました。友だちになるきっかけはいろいろあります。保育所で私から「すみません」と話しかけて質問する▽向こうから「初めまして」と声をかけてくれる▽子ども同士が遊んで親切にしてもらった後で、「この間は仲良くしていただいてありがとうございました」とお礼を言う――などです。私の住む地域のママさんたちは親切な人が多く、今では彼女たちとの付き合いが中心です。

ママ友たちと近所の公園で桜の花見〈2019年4月〉

アルバイトとボランティア

アルバイトとボランティア

日本語力がつくと、ボランティアやアルバイトの依頼・紹介が増えました。例えば、2018年からは大阪大学外国語学部(ベトナム語専攻)の学生の卒業論文(ベトナム語)の執筆をサポートする「ティーチング・アシスタント」をしています。

また、2017年から隣の市の公立小学校でスクール・サポートをしています。大学院の先生から紹介されたボランティア的な仕事です。技術者などで日本に来るベトナム人の子どもたちが日本語力ゼロで小学校に入ります。彼らのために一般授業で通訳をしたり、特別授業を設けて日本人教師と一緒に国語や算数を教えたりします。単独で日本語を教えることもあります。こうした児童が現在5人います。学校から保護者への連絡文書を翻訳したり、保護者懇談で通訳をしたりもします。

開始年 終了年 アルバイト・ボランティア 報酬・謝礼(交通費含む) 頻度
2013 箕面市国際交流協会(ベトナム文化の紹介、翻訳、イベント手伝い 無償 不定期
2016 2018 ベトナム語個人レッスン1名 1時間1,500円 週1回(2時間)
2017 小学校で授業サポート 3時間5,000円 週1回(大学の長期休暇時は週4回)
2017 小学校で事務サポート(ベトナム人保護者への連絡分翻訳など) 1回2,400円
2018 2019 箕面市国際交流協会(ベトナム語教室) 1人1回500円 週1回(1時間)
2018 みのお外国人医療サポートネット(ベトナム人の受診で通訳) 1回3,000円 月1回程度
2018 大阪大学(ティーチングアシスタント) 1時間1,600円
2020 NHK文化センター(ベトナム語教室) 1人1コマ1,000円 2週に1回(日曜、80分×2コマ)
2020 大阪の専門学校(ベトナム語講師) 1回4,000円+交通費 週1回(90分)
2020 神戸の専門学校(ベトナム語・ベトナム文化 非常勤講師) 1コマ6,000円 週1回(90分×2コマ)
開始年 終了年 アルバイト・ボランティア 報酬・謝礼(交通費含む) 頻度
2013 箕面市国際交流協会(ベトナム文化の紹介、翻訳、イベント手伝い 無償 不定期
2016 2018 ベトナム語個人レッスン1名 1時間1,500円 週1回(2時間)
2017 小学校で授業サポート 3時間5,000円 週1回(大学の長期休暇時は週4回)
2017 小学校で事務サポート(ベトナム人保護者への連絡分翻訳など) 1回2,400円
2018 2019 箕面市国際交流協会(ベトナム語教室) 1人1回500円 週1回(1時間)
2018 みのお外国人医療サポートネット(ベトナム人の受診で通訳) 1回3,000円 月1回程度
2018 大阪大学(ティーチングアシスタント) 1時間1,600円
2020 NHK文化センター(ベトナム語教室) 1人1コマ1,000円 2週に1回(日曜、80分×2コマ)
2020 大阪の専門学校(ベトナム語講師) 1回4,000円+交通費 週1回(90分)
2020 神戸の専門学校(ベトナム語・ベトナム文化 非常勤講師) 1コマ6,000円 週1回(90分×2コマ)

◎ベトナム語個人レッスン=インターネットの紹介サイトに登録。https://hello-sensei.com/

◎外国人医療サポート=国際交流協会からの依頼

◎NHK文化センター、大阪の専門学校=前任者(大阪大学の関係者)からの紹介

◎神戸の専門学校=大学院の友人からの紹介

自宅の庭でおやつを食べる次女〈2020年〉

自宅の庭でおやつを食べる次女〈2020年〉

自宅で夕食の準備〈2020年〉

日本に慣れ親しんで

自宅で遊ぶ娘たち〈2020年5月〉

娘たちは現在、小学2年と3歳です。娘たちが学校や保育所で過ごす朝から夕方までの間に、私は勉強・家事・アルバイトをこなします。夜も授業準備などがあり、睡眠は5時間ぐらいです。

当初は、数年でベトナムに帰るつもりでしたが、日本で子育てを続けるうちに娘たちに日本の教育を受けさせたいと思うようになりました。日本の学校では生活マナーなども教えてくれるからです。また、日本に長く住み、便利な生活や仕事に対する日本的な考え方にも慣れ親しみました。今ベトナムに帰っても適応できるかどうか分かりません。こうして私たちは2018年、住宅ローンを借りて一軒家を購入しました。当面は、家族や仲間と一緒に日本で学び、働き、生活を続けていきたいと思っています。

自宅で遊ぶ娘たち〈2020年5月〉