体験談(留学・高度)

Vol. 19 途中帰国にめげず、日本語磨いて活躍

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2020年04月21日

今回の先輩

Tran Thị Nhung (チャン・ティ・ニュン)さん

1994年生まれ、Đăk Nông省出身
2012年 6月 Phan Boi Chau(ファン・ボイ・チャウ)高校卒業
2012年 9月 石油関連企業に入社(データ入力業務)
2016年 9月 留学あっせん会社入社、日本語の勉強開始
2017年 4月 静岡県内の日本語学校入学
2018年 4月 帰国
2018年 5月 ホーチミンの人材会社入社

はじめに

日本で1年間の語学留学をしてベトナムに帰国後、人材会社に就職し、日本語を使って生き生きと働くニュンさん。今も日本語の勉強を続けながら、これから日本に行く技術者や留学生のサポートを担っている。留学で身に付けた日本語力を土台に、帰国後も勉強を続けて仕事の幅を広げているニュンさんの姿勢は、留学を終えた方々にはもちろん、これから留学する人たちにも参考になるであろう。明るく前向きに努力するニュンさんの体験談を紹介する。

アルバイト先の日本人の先輩たちと車でお出かけ【2017年8月】

浜松市内の古着店で【2018年1月】

日本での生活とアルバイト

高校卒業後、地元の会社で働いていましたが、仕事にやりがいを感じていませんでした。そんなある日、留学あっせん業者に勤める近所の人から「日本に留学すれば、お金を稼ぎながら勉強できる」と勧められ、日本行きを決心しました。地元の日本語学校で半年間勉強し、2017年4月に訪日。業者から紹介された静岡県浜松市の日本語学校で2年間の予定で語学留学を始めました。学校の寮(2ベッドルーム)にベトナム人4人で暮らしました。一緒に訪日したいとこ(年上の女性)も同じ部屋でした。

【編集部からのアドバイス】

日本への留学を取り次ぐ業者の中には、「日本に行けばたくさん稼げる」とそそのかして多額の手数料を取る業者もおり、被害事例が多数報告されています。在ベトナム日本国大使館からの注意喚起(下記リンク)や当サイトの「私の体験」で先輩たちが書いている「私の家計簿」をよく読んで、日本での収入見込みを冷静に判断してください。

external link 仲介業者に注意!

external link 業者とのトラブル事例

日本語学校のベトナム人仲間と自転車で海辺の公園へ【2017年5月】

私の授業は午前9時~12時30分で、午後は1時間かけて宿題をした後、スーパーマーケットでアルバイトをしました。自転車で約30分かかるので、しばらくして電動自転車を買いました。地方都市では、アルバイト先まで遠いことが多いので、多くの留学生が電動自転車を使います。ただし、家賃や物価は東京と比べてずっと安いです。地方都市で留学する後輩には、雨の日に自転車に乗る際に着る雨がっぱをベトナムから持って行くことをお勧めします。日本の雨がっぱの値段はベトナムの3、4倍もするからです。

訪日直後に寮の前で。地方都市での留学に自転車は必需品。【2017年5月】

アルバイトは週5日間で、時間は午後3時半~9時でした。学校から紹介された職場で、1週間28時間以内という日本の規則を守っていました。私の担当はデリカコーナーで、日本人が数十人、ベトナム人は私を含めて2人でした。日本語で仕事をするので、日本語の練習がたくさんできました。鳥の唐揚げを揚げる▽カレーやご飯を容器に入れる▽お惣菜をパッキングする▽こうした商品に値札をはって店頭に並べる――というのが、私の仕事の内容でした 。

アルバイト先のスーパーで【2017年5月】

私の家計簿(1カ月の平均)

※100円=21,788 VND(2020年4月4日現在)

収入(合計 約100,000)

アルバイト(スーパーマーケット) 100,000円
※夏休みなどの長期休みは少し長く働き、給料も増えた

支出(合計 約165,000円)

家賃 20,000円
※2ベッドルーム+リビング(4人暮らし)
水道・光熱費 5,000円
※水道・電気・ガスの合計(4人で分担)
授業料 100,000円
携帯電話 10,000円
※端末費用の分割払いを含む
食費 25,000円
※自炊。アルバイト先にも弁当を持参。外食は月に1,2回。
雑費 5,000円

差額(平均 マイナス65,000円)

※不足分は母からの仕送り(1年間で130,000,000 VND)で補いました。

※携帯電話は、学校から紹介された店で契約し、端末も買いました。しかし、今から思うと、高い端末は必要ありませんでした。これから留学する人は、ベトナムから持って行く携帯電話で生活し、卒業して就職してから高い携帯電話を買えばよいと思います。

浜松市内の衣料品店で【2017年8月】

アルバイト先では日本人の先輩たちに親切にしてもらい、日本語もたくさん話しました。先輩たちは時々、私たちを食事や買い物にも連れて行き、クリスマスには大きなケーキも買ってくれました。

アルバイト先の先輩たちのおごりで外食【2017年8月】

アルバイト先の先輩たちが買ってくれたクリスマスケーキ【2017年12月】

楽しかった留学生活

学校でも、先生たちは親切で、同級生たちとも仲が良く、楽しい留学生活でした。同級生の大半はベトナム人でした。
学校の行事で日帰り旅行やクリスマス会もありました。

日本語学校の行事でバスで日帰り旅行【2017年11月】

 

在留期間を更新できず

充実した留学生活でしたが、在留期間を更新できず、1年で帰国することになりました。理由はよく分かりませんでした。いとこのお姉さんも私より1カ月早く帰国することになりました。

日本での最後の夜、私たちの部屋で送別会【2018年5月】

日本語学校の友だちと寮の近くで。このラーメンが大好きでした。【2018年4月】

帰国後も日本語学習を続ける

不本意な帰国でしたが、日本語がある程度話せるようになったので、語学力を生かせる仕事を探し、日系の人材会社に就職しました。日本語の勉強はあきらめず、仕事が終わってから2時間、日本語を習いに行く日があります。家でFacebookなどを使った日本語の勉強も続けています。日本人のオーナーや同僚とご飯を食べる機会もたくさんあり、仕事中にもアフター5にも日本語を使っています。

会社のオーナーや同僚とサッカー観戦をしながら食事【ホーチミンで2018年】

今の仕事の内容は、会社のFacebookの運用▽留学やエンジニアとして日本に行く人たちのための渡航手続き▽翻訳▽初級の日本語授業――などです。今後は技能実習生の送り出しも手伝う予定です。留学生や実習生には、日本で日本語能力試験(JLPT)のN3を取得して帰ってこられるよう、オンラインで学習を支援する準備を進めています。

エンジニアとして日本で働く若者たちをホーチミンの空港で見送り【2020年2月】

これから日本に行く人たちへ

私は日本に行って、日本人は親切で、仕事に関する責任感が強いということを学びました。そういう人たちに囲まれて勉強や仕事をすることができ、私も成長できたと思います。また、日本では、和食がおいしいですし、電車などの公共交通がとても便利でした。あこがれの桜の花見もできました。

子どものころから好きだった日本アニメを今もよく見ます。テトで郷里に帰ったときは、兄と一緒に日本アニメを見ました。兄は字幕を目で追いますが、私は音声で内容を理解できるようになっています。これから日本に留学に行く人たちにも、日本で精いっぱい学び、日本生活もしっかり味わってほしいと思います。

勤務先の会社の近くの公園で【2018年3月】

ダクノン省の実家の近くで【2020年1月】