わたしの体験

今回の先輩

OKADA CÚC(岡田クック)さん
1993年生まれ、ハイズオン省出身
2011年 5月 TU KY 2 高校卒業
2012年 2月 住友電工グループのSDVN入社
2013年12月 SDVN退社
2014年 6月 住友電工グループのSVAW入社
2015年10月 SVAWを退社し、送出機関で勉強
2016年 7月 研修後、奈良県で技能実習開始
2019年 7月 技能実習修了
2019年 5月 実習先の同僚の日本人と結婚
2019年 9月 実習先の関連施設でパート
はじめに
技能実習中に職場の日本人男性からプロポーズされ、結婚して日本に住み続けているクックさん。相手がクックさんと結婚したいと思ったポイントは何だったのか、クックさんの体験談をお読みください。
技能実習でキャリアアップを目指す
私は高校卒業後、地元の日系企業2社で計約3年間働きました。いずれも住友電工グループの会社(SDVN社、SVAW社)で、自動車の電気系統の部品を作る会社でした。私は両社で製品の検品を担当しましたが、同僚が先に技能実習で日本に行ったこともあり、私も「日本に行ってみたい」「日本語も勉強したい」と思うようになり、技能実習生になりました。帰国後は、住友電工グループに戻り、語学力を生かして今までよりよいポジションで働くのが目標でした。

送出機関への支払い
元同僚の紹介でハノイの送出機関を選び、6カ月間勉強して日本に行きました。送出手数料や寮費、食費、授業料など全部で約200,000,000 VDN(ベトナム・ドン)を送出機関に支払い、日本には現金3万円だけを持って行きました。両親は訪日の備品代も含めて約260,000,000 VDNを借り、私は技能実習で18カ月間かけて返済しました。
【編集部からのアドバイス】
ベトナム政府の規定では、日本語の事前教育費は約520時間に対し590万ドン以下、送出手数料は3,600ドル以下(3年契約の場合)となっています。また、日本への往復の旅費は日本の技能実習先(受入企業)が負担することになっています。これらを上回る金額の場合は、内容を確認した上で領収書をもらいましょう。また、金額が不透明な場合は、他の送出機関の選択も検討しましょう。

※送出機関を選ぶ際の注意点については下記の記事を参照にしてください。
実習で伝統料理を製造
私は2016年8月、奈良県の食品製造・販売会社に入りました。「柿の葉ずし」という奈良の伝統的なすしを製造・販売する会社です。私の仕事は工場ですしに柿の葉を巻くことなどでした。

同じ送出機関から2人の同期と一緒にこの会社に入り、私たちが初めてのベトナム人実習生でした。すでに中国人の実習生は6人おり、私たちを含めて約20人の工場でした。柿の葉を巻く以外に、焼き鯖(さば)ずしを作ったり、ちらしずしを作って弁当箱に詰めたりもしました。

私の家計簿(1カ月の平均)
※100円=21,876 VND(2020年4月14日現在)
※借金完済までの期間の家計簿
手取り給料(100,000円)
手取り給料 | 100,000円 ※税金、社会保険料、寮費を引いた後の手取り額 ※控除額のうち寮費は16,000円(寮は個室) ※残業はあまりなかった |
支出(合計 20,000円)
水道・光熱費 | 6,000円 ※電気・ガス・水道の合計 |
Wi-Fi | 600円 ※利用者で分担 |
食費 | 8,000~8,500円 ※主に自炊(昼も弁当持参) |
雑費 | 5,000円 ※衣類やたまに外食 |
差額・貯金(平均80,000円)
※実家には2カ月ごとに16万円を送金
※借金が多かったので、返済完了までの1年半はほとんど遊びに行けず。


日本語の勉強と日本人との交流
実習でキャリアアップするのが目標だったので、私は仕事後に寮で毎晩2時間勉強し、訪日から2年後、日本語能力試験(JLPT)のN3に合格しました。また、公民館で日本人のボランティアが日曜日に日本語を無料で2時間教えてくれるボランティア教室があり、毎週通いました。授業を真剣に受け続けたこともあり、教室でのスピーチ大会の発表者にも選ばれました。


また、無料日本語教室の100人の生徒のほとんどがベトナム人で、他の会社の実習生とも交流できました。一緒に出かけたり食事会をしたりして、友だちがたくさんできました。


夫との出会いと国際結婚
訪日から1年後の2017年9月、同じ職場に2歳年上の日本人男性が転職で入ってきました。彼は今は商品開発などを担当していますが、最初は柿の葉ずしを巻く仕事から始めました。私は実習生の中で一番日本語を話せるようになっていたので、葉の巻き方や掃除の仕方などを彼に教える担当になりました。こうして仕事のやり取りをしているうち、彼から頼まれてLINEでつながり、勤務時間外にLINEでやり取りをするようになりました。「こんばんは。今何しているの?」「今、勉強中です」。こんなやり取りから始まって交際に発展し、一緒に食事やドライブに行くようになりました。


実習中に日本人と交際しても帰国すると連絡が途絶える――といった投稿をFacebookでよく見かけます。しかし、彼は2018年2月、「実習が終わったら結婚しよう」と言ってくれ、2019年5月に日本で婚姻届けを出し、記念撮影をしました。国際結婚について、母は最初、「ベトナムに帰ってきてほしい」と言いましたが、何度か電話で話すうちに承諾してくれました。結婚式は2020年2月に私の故郷で行う予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響で延期しました。

夫の実家で結婚生活
私たちは夫の両親や妹と同居しています。両親が喜ぶと思い、私が夫に同居を勧めたのです。私は毎日、義母と一緒に料理を作り、義母の経営するビジネスホテルが忙しいときは、シーツ交換も手伝います。義母は私に親切で、一緒に買い物に行ったり、お店でランチを楽しんだりしています。夫の誕生日には、私がベトナムの揚げ春巻き(Bánh đa nem rán)や卵焼き(Trứng cuộn thịt rán)、焼きとり(gà rán)、サラダ(Rau trộn củ quả)を作り、家族に食べてもらいました。休日には家族で旅行に出かけたり、花火見物をしたり、おいしいものを食べに行ったりすることも多く、楽しい結婚生活です。



【インタビュー】クックさんの夫、岡田拓也さんの話
クックさんの夫はクックさんのどんなところに引かれたのでしょうか?編集部がインタビューしました。
・クックさんと初めて会ったときの様子は?
――白衣とマスクで頭部を覆って仕事をしているため、お互い目しか見えませんが、実習生は話をすれば外国人と分かります。しかし、クックだけは日本語が上手ですし仕事の手際もいいので、しばらくは日本人だと思っていました。働き始めて1、2週間たって名前を聞き、初めてベトナム人だと分かりました。
・交際のきっかけは?
――日本語で十分に会話ができ、容姿もかわいいので、LINEで交信し食事に誘いました。
・短い期間で結婚を決めましたね。
――付き合い始めて話をすると、家族思いですし、明るく優しい人でした。また、朝3時に起きて4時から13時まで実習していたのに、寮で毎日2時間勉強し、日曜日も日本語教室に通っていました。他の人より努力している姿勢に強く引かれました。
・どんなお嫁さんですか?
――よく気が利いて家事も積極的にやってくれます。母にもかわいがられ、よく一緒に買い物に行ったりランチに行ったりしています。人なつこいですし、父母のことも大事にするので、母にとってもかわいくて仕方がないようです。
