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「正座」は日本の伝統的な座り方?

足を折りたたんで座る「正座」。日本の江戸時代(1603~1868年)、武士が将軍に会うときは、正座をすることで将軍への忠誠心を示しました。現代でも、茶道や華道、書道など日本の伝統文化で正座は正式な座り方とされ、日常生活でも、和室で目上の人と会うときは正座が原則です。ただし、日本で正座が広まったのはそれほど昔のことではありません。それでは、正座は日本でいつごろからどうやって広まっていったのでしょうか? この記事は5カ国語の総合メディアJAPOと共同で制作しました。ベトナムでは、JAPOのウェブサイトに毎月15万件のアクセスがあり、雑誌も毎月2万部を配布しています。TV番組もあります。 昔は「立てひざ」や「あぐら」が一般的だった あぐら かつては「立てひざ」や「あぐら」が一般的 正座は日本の奈良時代(710~784年)に中国から伝わったと言われています。しかし、長らく、正座をするのは、神様や仏様に祈るときや高貴な人にひれ伏す場合などに限られていたようです。 江戸時代(1603~1868年)までは、公的な場でも、男性も女性も片方のひざを立てて座る「立てひざ」の座り方が多かったそうです。その後、座禅(ざぜん)の座り方に近い「あぐら」という座り方(上の写真)も広まっていきます。 十二単の着物 平安時代(794~1185年)の女性貴族や宮廷で働く女性たちの姿が当時の絵に描かれていますが、彼女たちの正装は十二単(じゅうにひとえ)という着物でした。この着物は下半身の部分がゆったりし、あぐらで座ることを前提にデザインされていました。また、平安時代の女性が正座を崩した「横座り」でくつろぐ姿も当時の絵で見られます。 武士や茶道での座り方 「あぐら」をかく武士 江戸時代までは、武士も「あぐら」か「立てひざ」、「そんきょ(しゃがむ姿勢)」の座り方で座っていました。正座で座ると、足がしびれますし、立ち上がるのに時間もかかるので、周囲の人から急に襲われた場合に対応できないという事情もありました。 千利休 また、今は茶道をするときは正座が原則ですが、昔は「あぐら」でよかったそうです。最も有名な茶人である千利休(せんのりきゅう、1522~1591年)もあぐらで茶道をしていたことが、当時の絵から分かります。 正座が広まり始めたのは17世紀 将軍が正座を導入 正座が広まっていくきっかけになったのは、江戸時代(1603~1868年)の初期に将軍(しょうぐん:全国の武士のトップ)が各地の大名(だいみょう:各地の武士のトップ)や家臣(かしん:身近な部下)に会う際に、相手に正座を義務付けたことでした。 将軍はKing...

2024年05月04日
  • マンガ・読書感想文コンクール

    2023年04月05日
    “大同生命”という日本の保険会社をつくった「広岡浅子」の伝記マンガのベトナム語版が発刊されました。このマンガを読んで感じたこと、勉強になったことを、A4・1枚程度の感想文に書いて応募してください。入賞者には賞金が渡されるほか、応募者全員にデジタルギフト券が贈られます。 このコンクールには、ベトナムと日本から計655作品の応募がありました。厳正な審査の結果、12人の受賞者が選ばれ、2023年11月に表彰式を行いました。くわしくはこちらをお読みください。 主人公は女性の実業家 このマンガは広岡浅子(1849~1919年)という19世紀の日本の実業家の生涯を描いたものです。 浅子は今から174年前にとても裕福な商家に生まれ、今の銀行のような事業をしていた大きな商家に嫁ぎます。しかし、その直後に日本では革命が起きて経済環境が大きく変わり、浅子たちの商家も危機を迎えます。 そんな中、浅子は危機を救い、新たに銀行や石炭事業を起こしたり、日本で初めての女子大学を設立したり、生命保険会社を作ったりと、大活躍します。 「男が外で働き、女は家事と子育てをする」のが一般的だった時代に、女性の実業家として活躍した浅子。その人生をマンガで楽しく読み解きます。 大同生命について 左:広岡浅子さん、右:大同生命本社ビル 大同生命は、浅子たちが創立した120年の歴史を持つ日本の生命保険会社です。中小企業向けの保険サービスを提供するほか、中小企業が抱えるさまざまな課題の解決をサポートしています。 感想文コンクール 応募できる人 ベトナム語を母国語とする人(日本に住んでいるベトナム人もベトナムのベトナム人も応募できます) 課題図書 HIROOKA ASAKO小学館学習まんが人物館「広岡浅子」ベトナム語版※電子書籍(ベトナム語)はこちらから無料で読めます。 感想文の形式 ベトナム語か日本語のどちらかで書いてください。・ベトナム語:A4・1枚以内(500~700ワード)・日本語:A4・1枚以内(1000~1400字)フォーマット・ダウンロード※このフォーマットを使ってパソコンや携帯電話で入力しても、別の紙に手で書いてもどちらでも構いません。※フォーマットには感想文のサンプル(文章例)もついています。 応募方法 ・学校や日本語センター、組合などを通じて応募する場合は、先生に作品を渡してください。・個人で応募する場合は、下記にメールしてください。kokoro.vj.2022@gmail.com 応募しめきり 2023年6月30日 審査 ・大同生命の関係者やコンクール事務局(ベトナム人、日本人)が「作品の内容を的確にとらえているか」「自分の意見・感想をわかりやすく表現できているか」などを審査します。・表彰は2023年秋の予定です。 賞金・参加賞
  • ベトナムの常識・日本の非常識_35:「はい」は1回だけ

    2023年03月28日
    あなたが職場の上司から指示を受けたとき、ベトナムでは「はい、はい、はい」と返事をするのは一般的なことです。また、目上の人には車内で助手席に座ってもらうのが普通です。ところが、日本で同じことをすると……。 「はい」と3回連続で言うのは… 失礼です 上司から仕事の指示を受ける場面を想像してみてください。ベトナムでは、あなたが何か仕事の指示を受けたとき、「はい、はい、はい」または「OK、OK、OK」と答えるでしょう。これはベトナムではごく普通の返事で、指示をしっかり理解したという証しであり、礼儀正しい表現です。 しかし、日本で「はい」を2、3回続けて言うと、相手に良い感情を持たれません。上司やお客さんから指示や依頼、説明などを受けたときは、「はい」と1回だけ答えましょう。相手の顔を見て「はい」と1回だけ言えば、「(あなたの指示や説明を)理解しました」という意味になります。日本で仕事をするときは、このことを覚えておいてください。 話す相手が上司ではなくても、日本で「はい、はい、はい」と答えるのはよくありません。ある日本語の先生が教えてくれたことですが、日本人が「Yes」または「OK」と答えるとき、「はい」は1回だけです。「はい、はい」と答えると、「相手を軽く見ている」「聞き流している」「面倒くさそうにしている」などと誤解されてしまうそうです。「はい、はい、はい」も同じです。 ですから、上司とのやり取りだけではなく、アルバイト先の飲食店でお客さんの注文を受ける場面などでも、注文に対し「はい、はい」や「はい、はい、はい」と答えるのは失礼にあたります。お客さんが気分を損ねて帰ってしまうかもしれませんので、気をつけましょう。 食べるときはおわんを手で持つ ベトナムでは、おわんをテーブルに置いてスプーンで食べるのが一般的です。はしを使う場合も、おわんを置いて食べることについて何も気になりません。しかし、日本の文化では、おわんをテーブルに置いたまま、首を伸ばしておわんに口を近付けてはしやスプーンで食べると、「行儀が悪い」と思われてしまいます。日本では、おわんを片手で軽く持ち上げて口に近付けてから、はしやスプーンで食べる方が良いのです。ただし、大きなお皿については、片手で持ち上げる必要はなく、テーブルに置いたままで大丈夫です。 私は、日本の小学校に通う娘から、給食の時間に「3つのノー」運動があるということを聞くまでこのことを知りませんでした。「3つのノー」とは、①テーブルにこぼさない ②食べ物を残さない ③テーブルの上におわんを置いたまま食べない、の3つです。 日本人には、おわんやお茶わんをテーブルに置いたまま顔を近付けて食べることはペットのような食べ方と映るのかも知れません。さらに、おわんやお茶わんを手に持つことは、お米を作っている農家の人たちへの感謝の気持ちも表しているそうです。お子さんが日本の学校に通っていたり、職場で日本人の同僚と一緒に食事をしたりする場合は、このことに注意してください。 車に乗るとき、目上の人はどの席? 日本では車に乗る時、ベトナムとは異なる座席のマナーがあります。これは多くの国に共通することかもしれません。 ベトナムでは、運転席の隣の席(助手席)は家族や親しい友人のための優先席だと考えられています。例えば、私の家族が車に乗るとき、父はいつも運転する私の隣(助手席)に座り、後部座席には母と妻と子供たちが座ります。この配置の根拠は簡単で、父は家族で最年長なので一番良い席(広々とした視界がある助手席)に座るのです。これはおそらく多くのベトナム人家庭で共通のルールになっていると思われます。 しかし、日本のルールはこれとは違います。卒業式のとき、友人と車で日本語教師を迎えに行きました。私は友人(運転手)の隣(助手席)に座っていましたが、先生の家に到着すると、いったん車から降りて先生に助手席に座ってもらい、私は後部座席に回りました。それが先生への敬意だと考えたからです。 先生は少しとまどったような顔をしていましたが、何も言いませんでした。行事が終わった後、先生から興味深い文化の違いを聞きました。日本では、目上の人やお客さんを後部座席に座らせることが多いそうです。例えば、会社の上司や先輩とあなたがタクシーで移動する場合、上司と先輩に後部座席に座ってもらい、あなたは助手席に座るのがマナーなのだそうです。日本で仕事をする人はこのことにも気を付けてください。
  • 新入社員向けの基本ビジネスマナー_02

    2023年02月10日
    就職活動を終えてこれから日本で働き始める人や働き始めて間もない人は、日本での基本的なビジネスマナーを学びましょう。「電話の受け方」「お茶の出し方」「ホウ・レン・ソウ」について解説した新入社員向けの基本ビジネスマナー_01に続き、この記事では「メールの基本的なマナー」と「敬語の使い方の注意点」を紹介します。 メールの基本的なマナー 留学生の皆さんは大学・学校の先生や職員の方々と電子メールでやりとりをしたことがありますよね? その中には、学校からの連絡事項であって返事をしなくてもよいメールもあります。しかし、仕事関連のメールとなると、社外からのメールであれ社内からであれ、必ず返信する必要があります。これから紹介する5つのことに気をつけましょう。 件名(タイトル)をよく考える メールの件名には内容や重要度を知らせる役割がある メールを受け取る人が最初に見るのが件名(タイトル)です。そのため、送り手はメールの用件がひと目でわかるような件名を書くことが大切です。 「御社訪問の日程について」 「〇〇記念式典の準備会合について」 「御社ビル清掃サービスの契約更新のお願い」 などと書けば、件名を読むだけでメールの内容がだいたいわかります。 忙しい人は大事なメールから読む 1日に何十本ものメールを受け取る人もたくさんいます。そういう人たちにメールを送信する場合、件名は一層重要です。彼らは件名で判断して重要なメールを先に読み、内容がよくわからないメールは後回し(場合によっては数日後)にする場合も多いからです。 社名を入れる メールの件名にあなたの社名や名前を入れると、相手がメールの内容を想像することが一層容易になります。また、後からメールを検索する際にも便利です。 「3日の打ち合わせ資料(森興産、ブイ・リン)」 などと書けば、相手は一目でメールの内容や送り主がわかります。過去のメールを後から探す際にも、件名にメールの内容や送信者の会社名・名前などが入っていると、とても探しやすいです。 24時間以内に返信する 仕事を進めるためにメールで連絡を取り合うことはひんぱんにあります。その際、多くの人はメールを送ってから1日以上返事がないと、不安になります。そこで、メールを受信してからなるべく早く返信する習慣を付けましょう。事情があって遅くなっても、受信から24時間以内に返信するように心がけてください。 ・あなたの返信が早いと、相手はあなたに下記のような好印象を持ちます。 仕事が早い 仕事ができる 信頼できる ・あなたの返信がいつも遅いと、相手はあなたのことを下記のように思いがちです。 この人と一緒に仕事をするのは不安だ 返信が遅いので、仕事が円滑に進まない そもそも、相手はあなたの返信を待って仕事を次のステップに進めることが多いので、返信が遅いと、相手に迷惑をかけることになります。 ところで、ほとんどの会社が土日祝に休業します。もし金曜日にメールを受信した場合は、翌週の月曜日までに返信するとよいでしょう。 急ぎの用件はメールだけに頼らない トラブルやミスが起きたとき、納品スケジュールが押しているとき、予定の緊急調整が必要なときなど、急ぎの用件でメールを送る場合があります。しかし、相手がそのメールをいつ読むかはわかりません。場合によっては、2、3日放置されてしまう恐れもあります。 急ぎの場合は、メールを送るだけではなく、相手に早く確認してもらえるように電話やSNSなどでメールを読んでくれるように催促することも大切です。そして、緊急性が高い場合は、メールを送るより先に電話をかける方がよいでしょう。 早めにお礼メールを送る お客さんはあなたのために時間を作ってくれています。そのため、お客さんと打ち合わせをした後には、なるべく「お礼メール」を送りましょう。 お礼メールの内容は、感謝の気持ちのみならず、打ち合わせた内容のまとめや今後の課題・展望も書きましょう。そうすることで、その後の仕事がスムーズに進みます。 送信前に誤字・脱字や添付ファイルを確認する メールの送信ボタンを押す前に、件名、相手の名前、本文などに誤字・脱字がないか確認しましょう。もし、相手の名前を間違えてしまうと、大変失礼になります。また、本文に重要な誤字・脱字があると、あなたの仕事の信用性にかかわります。 また、添付ファイルの付け忘れや間違ったファイルを送ってしまうこともよくあるミスです。間違ったファイルを添付していないか、送信ボタンを押す前に添付ファイルの内容を必ず確認するようにしましょう。そうすることで添付忘れも防げますね。 敬語の使い方の注意点 しっかりとあいさつをする これから一緒に働く人たちと良い関係を築いていくための最初のステップはあいさつです。 社内でのあいさつの言葉 ・おはようございます。 ・お疲れ様です。 社外でのあいさつの言葉 ・お世話になります。 ・お世話になっております。 こうした言葉を欠かさないようにしましょう。仕事でよく使う言葉については、下記の記事でくわしく紹介していますので、こちらも参考にしてください。 仕事で使う日本語 適切な返事やあいづち 「うん」はNG 日本人の友人と話すとき、「うん」「そうだね」などという返事をよくしていると思います。しかし、お客様や目上の人と話すときに「うん」とか「そうだね」などの言葉を使うのは御法度(ごはっと)です。「うん」や「そうだね」は自分と対等か立場が下の相手にしか使ってはいけません。お客様や上司、先輩にうっかり「うん」とか「そうだね」などと答えてしまうと、大変失礼なことになります。 「はい」は1回 返事をする際に「はい、はい」や「なるほど、なるほど」のように、本来は一度ですむ言葉を2回繰り返して使うと、相手は「適当にあしらわれている」と感じたり、あなたのことを「軽薄な人だ」と思ったりしますので、気をつけてください。 同意を表す表現 ・私もそう思います。 ・私もそのように思います。 ・私もそのように感じておりました。 ・おっしゃる通りです。 ・おっしゃる通りかと存じます。 承諾や同意の言葉 ・承知しました。 ・承知いたしました。 ・かしこまりました。 ・左様(さよう)でございます 。 ビジネスシーンにふさわしい言葉を選び、失礼がないように気をつけましょう。 主語に応じた敬語を選ぶ 敬語の中には、「丁寧(ていねい)語」、「尊敬(そんけい)語」、「謙譲(けんじょう)語」があります。 尊敬語と謙譲語を使い分けるのは外国人には難しいことですが、次の手順を知っておくと、少し簡単になります。まず、「その行為をするのはだれ?」と考えると、主語が分かります。主語を確認した上で、次の原則に当てはめると、敬語の間違いが激減します。 ・主語が相手や他人(主に目上の人)のとき→尊敬語 ・主語が自分や身内のとき→謙譲語 敬語の大事な原則や間違いやすい事例を知りたい方は下記の記事を読んでください。 これでスッキリ!敬語はこうして覚える また、丁寧語の「〜です」「〜ます」は使用頻度(ひんど)が高いので、意識しなくても使えるように普段から使って慣れておきましょう。 まとめ この記事では、新入社員が覚えておくべきビジネスマナーとして「メールの基本的なマナー」と「敬語の使い方の注意点」について説明しました。 【メールの基本的なマナー】 ・件名をよく考える(端的でわかりやすい件名を付ける) ・24時間以内に返信する ・急ぎの用件はメールだけに頼らない ・早めにお礼メールを送る ・送信前に誤字・脱字や添付ファイルを確認する 【敬語の使い方の注意点】 ・しっかりとあいさつをする ・「うん」はNG ・「はい」は1回 ・主語に応じた敬語を選ぶ これから日本で働く皆さんや日本で働き始めて間もない皆さん、この記事と新入社員向けの基本ビジネスマナー_01で紹介したマナーを覚えれば、基本的には大丈夫です。職場や取引先の皆さんから信頼される社員に早くなれるよう、ビジネスマナーにも注意しながらがんばってください。

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【在ベトナム日本国大使館後援】

  • ベトナムの常識・日本の非常識_15: 靴を散らかしたまま家に入らないで

    靴を散らかしたまま家に入ったり、場所を問わずタバコを吸ってしまうと、日本人に眉をひそめられてしまいます。ゴミを分別せずに出すのは、もっと印象の悪いことです。 【Thạch Long】 靴を散らかしたまま家に入らないで 小さい頃に読んだ漫画「ドラえもん」の中で、のび太が玄関で靴をきちんとそろえずに家の中に駆け込んだ時、母親がそのだらしなさを叱った場面を憶えていますか?あの誰もが知っている漫画の中で、この場面が描かれているのは一度きりではないはずです。 ベトナムでは、帰宅した時に脱いだ靴の右が東、左が西に散らばって、つま先が内側でもう片方が外側に向いていようがお構いなしです。誰もその場でかがんで靴をそろえようとはしませんね。 しかし日本では、靴の向きがばらばらなまま家に上がり込もうとするのはマナー違反になってしまうのです。日本では「家に入る時は脱いだ靴をきちんとそろえ、つま先はドア側に向ける」という不文律があるのです。また玄関で靴を脱ぐとスリッパがきちんとそろえて並べてあり、そのつま先が家の内側を向いているのです。 そうしておけば、履くときに靴やスリッパ(もしくは自分自身)の向きをいちいち変える必要がなく便利だからです。日本人には、何事も「整頓する」「整える」という習慣が根付いています。「郷に入っては郷に従え」というように、ベトナム人である私たちもその習慣にならいましょう。 きちんと靴がそろえられた玄関 種類の違うゴミをまとめて出してはいけません ベトナムでは、スーパーのビニール袋に生ゴミや空き瓶、空き缶、グラスなどをまとめて詰め込んでゴミに出すことは誰でも自然にやっています。しかし、日本でそれをやってはいけません。住んでいる地域によって多少の違いはありますが、基本的に燃えるゴミ、燃えないゴミ、資源ゴミ、粗大ゴミ(自転車や掃除機、テレビや冷蔵庫などの大きいもの)の四つに分類されます。この種類ごとに異なる曜日に所定の場所に出すと回収されます。 自治会のゴミ分別方法の案内書 ただし、電子機器や自転車などの粗大ゴミはただ置いておいても回収されません。住んでいる自治体に連絡して回収日を予約し、必要な金額の粗大ごみ処理券をコンビニなどで買って貼り付けて家の前に出すか、民間の粗大ゴミ回収業者に連絡してお金を払って回収してもらう必要があります。自治体の回収費用は、アイロン台など小さいものは200円からで、大きなものを民間で引き取ってもらうと数千円かかることもあります。自治体によって金額や制度に違いがありますので、問い合わせましょう。 もう一つ細かい注意事項を挙げると、ベトナムでは家の前でもどこでもゴミを捨てておけば清掃スタッフがゴミ収集車で回収してくれますが、日本のマンションや集合住宅地ではゴミ置き場が決まっていて、そこに出すことになっています。 ゴミを出す場所は居住スペース内のすぐ近くにあり、ゴミの上に網をかけるなどの処置がしてあります。なぜでしょうか?日本にはカラスが多く、何の対策もしていないとカラスがゴミ袋を食い破り、あちこちにゴミをまき散らすのです。私の家の隣には居酒屋があります。お店の人がゴミ置き場に網をかけ忘れると、その20分後にはカラスが来てメチャクチャにしてしまいます。お店の人はその後始末で、半径5メートルほどに散らばったゴミを新しいゴミ袋に詰め込むという余計な仕事するハメになるのです…。 場所を問わずにタバコを吸わない ベトナムでは、喫煙が禁止されているところには「禁煙」と書いた標識を壁に立てかけることが決まっています。実は日本も同じで、喫煙者は公共の場所でタバコを吸ってはいけないというルールがあるのです。 路上喫煙禁止区域を地図で示した看板 路面に「道路喫煙は罰金2000円」と描かれた告知 日本では、「喫煙は喫煙所で」が大原則となりつつあります。喫煙所は、ビルのような大きな建物では中に設けられている場合がありますが、多くの建物では外に設けられています。駅やバスの停留所、歩道は基本的に禁煙で、ビジネス街や商店街など人通りが多い場所も喫煙すべきでないとされています。受動喫煙への配慮があるためです。 また、望まない受動喫煙を防止するため2020年4月から健康増進法という法律の一部が改正され施行されました。この法改正により、「マナー」であったものが「罰則付ルール」へと変わり、飲食店は原則禁煙で喫煙場所を明確にしなければなりません。店舗規模や自治体によっても対応は異なりますが、ルールを破ると最大50万円の罰金になってしまう可能性もあります。 皆さんが働いたり学んだりしている日本では、喫煙できる場所が減っています。ショッピングモールや観光地、オフィスビルなど外出先でタバコを吸う場合は、必ず喫煙所を見つけて吸うようにしましょう。遠慮せず、周辺の人に聞いて確認してくださいね。 ビル内に設置された喫煙所

    2021年03月16日

  • ベトナムの常識・日本の非常識_14: 通行中の子どもに話しかけない

    「パシャッ」というシャッター音を立てずに携帯電話で写真撮影をしたり、気軽に学生に話しかけたりすると、日本では思わぬトラブルに巻き込まれかねません。 サイレントモードで写真を撮る ベトナムでは携帯電話で写真を撮る場合、「パシャッ」と音を鳴らして撮ろうがサイレントモードにして音をたてずに撮ろうが、誰も気にすることはありません。しかし日本では携帯電話で写真を撮っている(らしい)のに何の音もしなければ、どういうことかと不審に思われてしまいます。 日本で購入したiPhoneでは写真撮影のときサイレントモードにできないということを知ると、ベトナム人は皆一様に驚きます。なぜなのでしょうか? 日本では2001年から、盗撮防止のために写真撮影の際に必ず音が出るように携帯電話キャリア(通信会社)が自主規制を始め、携帯電話メーカーもそれに従っているからだそうです。 Evacomics 最初のきっかけは、2000年に日本の著名芸能人が東京都内の駅で携帯電話で女性のスカートの中を撮影しようとしているところを通行人に目撃され、通報されたことです。この芸能人はその後、東京都迷惑防止条例違反(盗撮)容疑で書類送検されました。これをきっかけに当時の携帯電話キャリアの1社が盗撮防止のために撮影時に必ず音が出る携帯電話を売り出し、他のキャリアもそれに従いました。 こういった非倫理的な行為を防ぐため、日本では駅など公共の場所で警告をする以外に、携帯電話については、撮影時に音が出る設定で店頭に並べるようになっているのです。日本で買った携帯電話はサイレントモード時も撮影音が出ますし、その設定は変更できません。 撮影時の音が標準設定されていることで、写真撮影が禁止されている(ことの多い)美術館・博物館、そしてアパレルショップなどでも、もし作品や商品、店内を盗撮しようとした場合に必ず音が鳴ってしまうので、被害を未然に防ぐことができます。ただし、日本でも無音撮影できるカメラアプリはインストールできますので、それを使って盗撮を試みる人は今もいます。 気軽に子どもに話しかけてはいけません 昨年のこと。友人が自分の母のAさん(仮称)を、旅行がてら赤ちゃんの世話も頼もうと日本に招待しました。日本に来る前にAさんは日本語会話を受講していたので、少しなら会話ができるようになっていました。 日本に来てからのある晴れた日、Aさんがウォーキングをしていると、下校する小学生の一団を見かけました。このようなときベトナムでは「君たち何年生?学校はどこ?」「お家はどこ?」と気軽に話かけ、数回やり取りするぐらいのことは何でもありません。尋ねたほうも実のところ、子どもたちがどう答えようがあまり関心はないのです。 その習慣のまま、Aさんは校門の前に立っていた児童の1人に、自然といつものように話しかけたのです。しかし、突然話しかけられた児童は顔色を変え、逃げるように校内に戻って行ってしまいました。そして、先生に「突然知らない人に声をかけられた」と助けを求めたのです。先生は急いで校門に向かい、Aさんに(30分あまりにわたって)事情を尋ねました。警察に通報する一歩手前だったそうです。 歩いている子どもに気軽に話しかけると、日本ではこういうことになってしまいます。児童(と保護者)は安全のために学校の行き帰りのルートなどを学校側に報告しなければなりません。そのためいつもと何か違うことが起これば、今回のように不必要なトラブルを招いてしまうのです。 日本でも昔はこれほどではなかったそうですが、過去に通行中の子どもが誘拐されたり性的被害を受けたりする事例が多発したのと、地域社会が子どもを見守って犯罪から守る機能が低下したため、保護者の自衛意識が高まったという背景があるそうです。特に1988~1989年に東京・埼玉で4人の幼女・女児が連続で誘拐、殺害された事件(犯人の男はその後逮捕され、死刑)などの影響が大きかったそうです。 また、日本人のシャイな性格にも少し関係があります。日本人はプライバシーに対して非常に敏感なので、見知らぬ人に積極的に話しかけたり、助けようと自分から申し出るということがあまりありません。米国人の友人(女性)は電車の乗り降りの際、2つの大きなスーツケースを持って移動していたのですが、誰も積極的に助けようとはしてくれなかったそうです。しかし、彼女の方から「助けてほしい」と願い出ると、通行人の日本人男性は非常に親切に助けてくれたそうです。 「日本人は冷たい」と思う人も多いかもしれませんが、実際は、多くの留学生や技能実習生が親切な日本人たちからサポートを受けています。それを上手に表現できないのが彼らの文化であり精神性なのです。 ホームレスにお金をわたす ベトナムでは路上生活者(ホームレス)に出くわすことがあります。何かしてあげられないか、という気持ちが湧きおこり、お金や服をわたします。そんなあなたの行動をたまたま誰かが見かけ、それをFacebookなどに投稿し拡散すれば、あなたに続く人が出てくるかもしれません。 しかし、日本では、ホームレスの人々が果たして本当にあなたの助けを必要としているかは定かではありません。日本のホームレスの多くが缶やペットボトルを拾ってお金に換えるなど、生活の糧を得ようと活動しています。また、支援団体から食料や生活必需品の支援も受けられます。 Reddit(アメリカの投稿サイト)上で、あるオーストラリア人が日本人ホームレスにお金をわたそうとしたら拒否されたという体験を投稿しました。その投稿には多くの日本人から書き込みがありました。その多くが「もし彼ら(ホームレス)を助けたいなら、組織的に活動したらどうか」「政府や自治体に許可を取り、食料や生活必需品を提供する場所を作るのがいいのでは?」というものだったそうです。 日本人は平等・公平な社会を作りたいと考えていて、それはホームレス問題についても例外ではありません。もし一人だけを助けられたとしても、他の人々についてはどうでしょう?このようなシンプルな考え方ができるのが日本人なのです。 Thach Long

    2021年02月02日

  • ベトナムの常識・日本の非常識_13: カフェで無断で充電はダメ?

    カフェで勝手にスマホを充電をしてはいけません。道路は左右の安全を確認して渡りましょう。勝手にお店の服を試着してもいけません。 充電?カフェでは期待しないで 秋晴れのハノイ。ホアンキエム湖の周りを散歩していると、ふとスマートフォンの充電がなくなってしまいそうだと気づく。そんなときベトナムでは、近くのカフェに立ち寄ってお茶を飲みながら充電を済ませれば良い話です。 けれどもそんな簡単なことが日本ではそうでもないのです。ベトナム人だけでなく他の外国人たちも、日本では多くのカフェが“充電お断り”と日本語や英語で書かれているのを見てビックリします。この“充電お断り”問題は、一人の米国人が東京のとあるカフェで体験し、その不満を投稿したことでQuoraやTripAdvisorなどの旅行サイト上で議論が白熱したほどでした。 日本のカフェやコンビニにあるコンセントは基本的に店員が使うものであって、私たち客が使うものではないのです。このことは日本人にとっては常識の範囲内であるほどです。ただ最近では、空港や一部コンビニ、スターバックスなどのカフェ、ドンキホーテなど量販店、インターネットカフェなどで、携帯電話やPCの充電用コンセントが設置されているところも増えています。 道路を渡るなら横断歩道の上を歩こう これは本当にあった話なのですが、日本在住歴15年になる私の従姉が最近2人の息子を連れてベトナムに里帰りしたとき、長男があやうくトラックにひかれそうになってしまったのを目撃し、とても怖い思いをしたそうです。 彼はちゃんと信号が緑のときに交差点の横断歩道上をゆっくりと歩いていました。彼には歩行中にトラックが近づいてくるのが見えていましたが、トラックは自分の手前で停止してくれるだろうと思っていました。しかしトラックは速度を緩めず、逆にクラクションを鳴らして彼をひいてでも突き進もうという勢いだったのです。 ベトナムのドライバーの中には、歩行者の権利についての認識が薄い人がいます。しかし日本ではいわば歩行者こそが、道路上で絶対的な優先権を持っています。自動車の運転手は、たとえ自分の進行方向の信号が青で左折や右折ができるときでも、歩行者が安全に横断歩道を通行したか確認がとれるまで停止していなければなりません。日本では、運転免許を取得するときにこの「歩行者優先ルール」を徹底的に教えられるのです。 通常交差点にある横断歩道は、歩行者だけでなく自転車も通行できます。しかし日本には“スクランブル交差点”と言われる交差点や五差路があり、青信号になるとどの方向からも一斉に歩行者が通行できるようなところもあります。例えば渋谷にも有名なスクランブル交差点がありますが、国土交通省によるとこの交差点では一度に3,000人もの人が一斉に交差点をわたる時があるのだそうです。そのような交差点では通常の横断歩道などと違い、自転車に乗っている人は一度自転車から降りて安全に通行するよう心がけなければなりません。皆さんも気をつけましょう! このように日本では、歩行者の権利がとても優遇されるので、横断歩道の上を通行しましょう。ただ、青信号であれば何も考えずに渡って良いわけではありません。日本の子供たちは、「右を見て左を見て、もう一度右を見て、手を上げて横断歩道を渡りましょう」と教育されます。 日本では、運転手も歩行者も徹底して左右の安全を確認する教育がなされているので、交通事故が少ないのです。 試着は必ずスタッフに一声かけて ベトナムで服を試着するのは基本的に自由で、特にスタッフに声をかける必要はありません。しかし日本では一声かけるのがルールです。 なぜかと言えば主に理由は2つあります。一つはお客が試着室にいくつのアイテムを持ち込んでいるかを確認するためです。二つめの理由は日本独自のサービス精神に由来しています。日本人のスタッフはいつでもお客に最高のサービスを提供したいと考えています。たいていどこのお店も最低1人は試着室の前にスタッフが待機していて、お客にアイテムを何点持ち込むかをたずねたり、試着室に案内したりしてくれます。お客が試着室に入った後、脱いだ靴をキレイに並べてくれたり、違うサイズのアイテムを持ってきてくれたり、服選びの相談にも応じてくれます。 日本のルールにのっとり、至れり尽くせりのサービスを存分に楽しみましょう!

    2021年01月04日

  • ベトナムの常識・日本の非常識_12: エレベーターに突入しない

    部屋着で出かける、エレベーターで中の人が降りる前に乗り込む、自転車の2人乗り、個人情報を根掘り葉掘りたずねるなど…ベトナムでは許容されますが、日本では非常識だったりするのです。 “部屋着”は部屋だけで 数年前のハロウィーンのこと。ベトナムのSNS上で3人の外国人男性がベトナム人主婦に扮した仮装の写真が話題になりました。彼らはベトナムの編み笠「ノンラー」をかぶり、ベトナム人が寝るときにも着るシルクの部屋着を着ていたのです。Hanoi expats(ベトナムに関心のある外国人コミュニティが運営するFacebookページ)上では、ベトナム人が部屋着のまま外に出て市場に買い物に出掛けることが常識であることを興味深くとらえられていました。 もしあなたにもその習慣があるなら、ベトナムでは大丈夫ですが日本ではお勧めできません。日本人には、自宅近くのコンビニに行くだけでも化粧をしないと気が済まない人もいる…という話を聞いたことがありませんか?これは少々行き過ぎた表現かもしれませんが、ある意味で的を得ているとも言えます。日本人は周りに対しての気遣いやマナーを重んじます。人前に出る時は、常に「きちんとした」姿を見せることがマナーだと考えている人が多いのです。 したがって日本では、部屋着はあくまで部屋着として使い、外出の際は「場違い」と思われることのない身なりを心がけるようにしましょう。 エレベーターに“突入”するべからず 私は来日する前、ハノイにあるオフィスビル内の事務所で10年以上働いていました。ですから、ベトナム人がエレベーターをどのように使っているかをよく知っています。エレベーターを待つ時、多くの人がドアの真ん前に立ち、ドアが開くや否や急いで中に入ろうとします。時には、外に出ようとする人にぶつかるほどの勢いで突入するのです。 ただこの行為は、ベトナムでは(残念ですが)不快なことではあっても非難されるほどのことではないのです。しかし日本でこれをやってしまうと、迷惑行為とみなされ、非難の目にさらされるでしょう。 日本では、エレベーターの乗降マナーがしっかり決まっています。ドアが開く時、外で待つ人たちは左右に分かれ、降りてくる人たちのために“道”を作ります。たとえ中に誰も乗っていない場合でも、日本人はどちらかに寄って立っています。 またエレベーターの中では、乗降する人がいる時に操作パネルの前に立っている人が「開く」のボタンを押してあげます。乗り降りする人がドアに挟まれることのないよう、最後まで「開く」のボタンを押し続けるのです。 また最近では、新型コロナウィルス感染予防のため、日本政府はエレベーター内の“密”を避けるため(また、健康づくりのため)に1~2階まで上がる場合は階段を使うように奨励しています。積極的に階段を使うのもの良いかもしれませんね! 個人情報を根掘り葉掘り聞かない ベトナムでは、相手と20~30分会話をして打ち解け合えたと思えたら、たとえ初めて会った人でも家族のことや住んでいる家、趣味はもちろん、相手の給料まで自由に尋ねるのが自然です。私たちベトナム人は、世界でもトップクラスの親密度を誇る“人なつっこい”国民性を持っていると言えるのではないかと思います。 かといって日本人が疎遠で人間関係が淡泊…という意味ではなく、きっと私たちベトナム人がいきなり個人的な質問をしてしまうと、相手への気遣いを尊重する国民性の彼らは少しびっくりし、時にそれが不快に感じることがあるのだと思われます。 私のベトナム人の友人は、日本人ウェイトレスと30分近く仲良くおしゃべりをしていたのですが、次第に「どこに住んでるの?」、「家族は何人?」、「父親はどんな仕事をしてるの?」など質問がエスカレートしていきました。彼女の顔色はだんだんと曇り、ついには質問に答えるのをやめて席を離れてしまったのです。 日本人は、私たちベトナム人と比べて規律やマナーを重んじ、対人関係も相手を尊重しながら段階的に深くしていくという国民性があります。友人を作るときも、お互いの個人情報を共有しようと思うまでにはそれまでの過程が重要であり、時間が必要なのです。 自転車2人乗りは基本的にダメ ベトナムの学生といえば、ほとんどの人が「赤い花が咲き乱れたホウオウボクの木の下をアオザイのすそをはためかせたながら2人乗り自転車で走り去る…」というクラシックな風景をイメージするのではないでしょうか。 しかし、そんなベトナムの微笑ましいシーンも、日本では違法になってしまいます。日本で自転車の2人乗りができる条件は道路交通法で①運転する人が16歳以上であること②幼児用の座席が設置されていること③乗せる幼児が6歳未満であること、と定められています。もっと詳細な要件もありますが、基本はこの条件です。したがって、自転車に大人が2人乗りすることは道交法違反となってしまいます。 また、飲酒して自転車を運転することは日本では昔から禁止されていますが、ベトナムでも2019年12月30日の政令で交通違反処分される対象となりました。日本にいてもベトナムにいても、バイクと同様お酒を飲んで自転車を運転してはいけません! (Thạch Long)

    2020年12月04日

  • ベトナムの常識・日本の非常識_11: 食べた後すぐに寝転ばない

    食べたらすぐに横になる…とても気持ちの良いことですが、日本ではやめておきましょう。  霊柩車を見かけたら親指を隠す およそ1年前の雨の日、私は娘のために傘を持って学校にいき、一緒に歩いて家に帰りました。帰り道、私は娘やその友だちの後ろを歩いていました。 黒い車が私たちのそばを横切ろうした時、娘の友だちの1人が突然「親指を隠せー!」と叫んだのです。彼女は急いで両手を背中に回し、他の友だちもそれに続きました。私と娘だけ、その時何が起きたか、何をすべきだったかを理解できていなかったのです。 後から聞いて初めて分かったのですが、日本の子どもは大人たちに「霊柩車を見かけたら親指を隠して」と教わるようなのです。日本人にとって親指というのは、“一家の代表”や(書いて字の通り)“両親の指”と言われており、葬式や縁起が良くないことを思い起こさせる霊柩車を見た時、“両親を守らなきゃ”という責任感から親指を隠すと言われています。また昔は、霊魂が親指から侵入するのを防ぐために親指を隠す、あるいは親指を握ることで気を高めて身を守るとも考えられていました。その考えが現代に伝わり、親指を隠すことが“親”と結びつき、「親の死に目に会えない」「親が早死にする」などといった風習に変わっていったとも伝えられています。 この親指を隠すという独特の風習をもう少し掘り下げてみると、かなり昔からあるものだとわかりました。日本の古い民話によると、「夜道を歩く時は『親指を隠す』。そうすると狐に化かされない」とか、疫病を避けるには両手の親指を中に握るとよい…とも言われているようです。 今でも多くの大人が霊柩車を見ると、自然と親指を隠してしまうそうです。風習を信じる気持ちが自然と根付いているんですね。 湯飲みの茶柱は幸運の前兆 お茶をいれる。湯のみに注ぎ、香りや味を楽しむ…お茶をいれる過程は一種の芸術であり、優雅でリラックスできる時間であります。いれたときの香り、湯気、そして茶の色合い…これに勝る素晴らしい至福が他にあるでしょうか。 しかし突然、急須から茶の葉や茎のカケラが出てきてしまい、あなたの湯のみに入ったとき、あなたはどうするでしょうか。つまんで捨ててしまう以外に選択肢はないのでは? ベトナムではそれでOKですが、日本では好まれることではありません。もし湯のみの中に小さい茶の茎が一本、立ち上がるように浮いてきたら、それは「茶柱」と日本では呼ばれているのです。日本では、この茶柱が湯のみの中で立てに浮いた状態になることを「茶柱が立つ」と呼びます。 日本人にとって「茶柱が立つ」のは幸運の前兆であり、一族に繁栄と健康をもたらすのだと信じられてきました。しかし、茶柱には俗信もあり、その昔お茶の商人が質が良くないため売れ残る二番茶を売りやすくために吹聴した話が元になっているとも言われています。 数年前、あるコマーシャルを見ました。年寄り夫婦が自宅でお茶を楽しんでいます。夫が自分の湯のみの中に茶柱を見つけ、うれしそうな顔をしてそっと妻の湯のみと入れ替えたのです。最近体調が優れない妻を気遣う夫の、夫婦愛にあふれた感動の映像でした。 食べた後すぐに寝ない お腹が張ったり、目の筋肉が緊張してしまったとき、ベトナムではその解消のために昼食後に短時間の昼寝をとるのが最善とされています。しかし日本の子どもたちの中には(おかしなことに)食べた後すぐに寝ると「牛になる」と信じている子たちが多いのです。 実はその妙な話は、大人たちが子たちに行儀よく振舞ってもらうために大昔から用いているものなのです。 日本人は昔、(イスではなく)木の床や畳に座って食事をしていました。そのため食後すぐにゴロンと寝そべることも多かったそうです。年配者からみるとそれは怠惰で失礼な行為と思われていたため、昔の人たちは子どもたちに「牛になるぞ」と言って怖がらせ、寝そべることをしないよう戒めたそうです。 現在では、食べてすぐ寝てしまうことは“太りやすい行動”であるとも言われています。多くの人たちは、食べてすぐ寝るのは体重をいち早く増やしたい「お相撲さん」だけの特権だと(冗談めかして)言っています。日本人は特に体形を維持することに熱心ですので、体重が増えてしまうことをとても恐れているのです。 (Thach Long)

    2020年11月03日

  • ベトナムの常識・日本の非常識_10:会社の床で昼寝すると驚かれる?

      ベトナムでは、食事後の昼寝は個人の自由。日本では、職場の昼寝は“だらしない”と思われてしまいます。 日本人は昼寝をしない? “昼寝”は科学的に健康面で多くのメリットがあると証明されています。専門家によると、10~20分程度の短時間の睡眠は意識をハッキリさせ、パフォーマンスの向上を助けるのに最適だそうです。 このように、昼寝自体はとても良いことですが、日本で働いている場合、昼休みにいきなり毛布を床に敷いて昼寝するのはオススメできる行動ではありません。「ドラえもん」の「のび太くん」を知っていますか?彼は蒸し暑い夏の日に昼寝をしただけで友だちから“なまけもの”と呼ばれてしまうのです。 日本人が勤務時間の間ずっと働き続ける姿をよく目にすると思います。彼らはお昼ご飯を仕事場に持ち込んで、サッと食事を済ませて仕事を続けます。“真面目”な国民性だと言えるでしょう。中には、外の飲食店に行ったり、コンビニでご飯を買って公園などで食べたりする人もいます。 公園でお昼を食べるというのは、やはり昼寝好きのベトナム人と日本人(一部他国の人も)との習慣の違いです。おそらくその国の気候に関係しており、暖かい日より寒い日が多い日本は、日中に日が差して温かい時間帯を好むことが要因と思われます。一方でベトナムはご存知の通り暑い日が多く、炎天下の中でレジャーシートを敷いてランチを食べるのは明らかに無理がありますね。  近年日本では、「昼寝」に対する考え方に変化も見られます。30分程度の短い仮眠が仕事のパフォーマンスを上げるという学術的な理由から、仮眠室を配備して社員の昼寝を推奨する企業も出てきました。ただ、現時点ではほとんどの日本人は昼寝をしません。 いつでもお客を迎える準備ができている 日本でレストランやアパレルショップを開いているベトナム人の友人がたくさんいるのですが、彼らはお客がいない時、スマートフォンでFacebookを見たりゲームをしたり、映画を観たりと、実に自由気ままです。お客の来店があって初めて立ち上がり、接客を始めるのです。 しかし、その接客対応は、日本の飲食店や美容室、アパレルショップなどのサービス業で働いている人は絶対にしてはいけません。日本人は常にお客を迎える準備・態勢を整えています。彼らはたとえ店の椅子が余っていようと、常に立って来店を待つのが常識なのです。私の家の近くの美容室では、スタッフは実に8時間も立って仕事をしているそうです。  接客する過程で、たとえお客の方から隣に座るように誘ってくれたとしても、通常座ることはありません。床に膝をついて接客を続けるのです。恥ずかしいことでも何でもありません。日本人にとって“お客様は神様”なので、“神様”の横に並んで座ることなどできないのです。 ごみは家に持ち帰ろう ベトナムではごみを捨てるのに2通りの方法があります。一つは公共のごみ箱に捨てる。もう一つは、街路樹のそばなど道ばたに置き去りにする、です。「家に持って帰って捨てよう」とは誰も考えません。しかし、日本ではそれが常識なのです。 日本では、公共の場でごみ箱が見つかるケースは稀なことです。理由は?と言えば…。数々の事件の経験から、ごみ箱の中に何か得体の知れないも の(例えば爆弾!)を入れられる恐れがあるからです。そのため公共の場にあるごみ箱は、その利用にも制限があるのです。例えば自動販売機のそばにあるごみ箱にはペットボトルやビンしか捨てることができません。 日本では、燃えるごみや生ごみ、リサイクル可能な資源ごみやビニール袋などは自宅で分別し、決まった曜日に捨てるようにしましょう。「ごみ箱はどこ!?」と外でイライラして探し回るのは得策ではありませんよ!? “手酌”はちょっと待って ベトナムの宴会では、自分のお酒は自分で注ぎます。ごく当たり前のことです。しかし日本では、自分で自分のお酒を注ぐのはあまり良い行為と言えないのです。「そんなバカな!?」と思うかもしれませんが、これが日本の文化なのです。ただ、“手酌”が決定的なマナー違反や失礼な行為というわけではありません。 その日本文化による“お酌”の基本は、相手にお酒を注いでもらって一口飲み、そのお返しにとこちらも相手にお酒を注ぐのです。また人数が多い宴席では、メンバー全員のグラスにお酒が行き渡るまで口を付けないのがルールです。各自に配膳されるお食事もそうです。全員の前に同じ料理が置かれるまでに自分の料理に手を付けると、マナー違反になります。 お酒を注がれる時は、自分のグラスを空に近い状態にするのがマナーです。あまり飲めない場合はグラスを満たしておいて大丈夫です。日本人はあまり飲むことを強要しません。また、会社の宴会では年下の社員がお酒を注文したり、上司や先輩にお酒を注いだりという役回りになります。 最後になりますが、お酒を注ぐ時はボトルやとっくりを、注いでもらう時はグラスやおちょこを“両手で”持ちましょう。日本ではそれが相手への礼儀、すなわちマナーなのです。

    2020年10月02日

主催者

Nhà tài trợ Bạch Kim

後援

  • 在ベトナム日本国大使館
  • 国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
  • JNTOハノイ事務所
  • 関西経済連合会
  • 一般社団法人 国際人流振興協会
  • 公益社団法人 ベトナム協会
  • NPO法人 日越ともいき支援会

協力

JASSO(日本学生支援機構)

外国人労働者弁護団

WA.SA.Bi.