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「正座」は日本の伝統的な座り方?

足を折りたたんで座る「正座」。日本の江戸時代(1603~1868年)、武士が将軍に会うときは、正座をすることで将軍への忠誠心を示しました。現代でも、茶道や華道、書道など日本の伝統文化で正座は正式な座り方とされ、日常生活でも、和室で目上の人と会うときは正座が原則です。ただし、日本で正座が広まったのはそれほど昔のことではありません。それでは、正座は日本でいつごろからどうやって広まっていったのでしょうか? この記事は5カ国語の総合メディアJAPOと共同で制作しました。ベトナムでは、JAPOのウェブサイトに毎月15万件のアクセスがあり、雑誌も毎月2万部を配布しています。TV番組もあります。 昔は「立てひざ」や「あぐら」が一般的だった あぐら かつては「立てひざ」や「あぐら」が一般的 正座は日本の奈良時代(710~784年)に中国から伝わったと言われています。しかし、長らく、正座をするのは、神様や仏様に祈るときや高貴な人にひれ伏す場合などに限られていたようです。 江戸時代(1603~1868年)までは、公的な場でも、男性も女性も片方のひざを立てて座る「立てひざ」の座り方が多かったそうです。その後、座禅(ざぜん)の座り方に近い「あぐら」という座り方(上の写真)も広まっていきます。 十二単の着物 平安時代(794~1185年)の女性貴族や宮廷で働く女性たちの姿が当時の絵に描かれていますが、彼女たちの正装は十二単(じゅうにひとえ)という着物でした。この着物は下半身の部分がゆったりし、あぐらで座ることを前提にデザインされていました。また、平安時代の女性が正座を崩した「横座り」でくつろぐ姿も当時の絵で見られます。 武士や茶道での座り方 「あぐら」をかく武士 江戸時代までは、武士も「あぐら」か「立てひざ」、「そんきょ(しゃがむ姿勢)」の座り方で座っていました。正座で座ると、足がしびれますし、立ち上がるのに時間もかかるので、周囲の人から急に襲われた場合に対応できないという事情もありました。 千利休 また、今は茶道をするときは正座が原則ですが、昔は「あぐら」でよかったそうです。最も有名な茶人である千利休(せんのりきゅう、1522~1591年)もあぐらで茶道をしていたことが、当時の絵から分かります。 正座が広まり始めたのは17世紀 将軍が正座を導入 正座が広まっていくきっかけになったのは、江戸時代(1603~1868年)の初期に将軍(しょうぐん:全国の武士のトップ)が各地の大名(だいみょう:各地の武士のトップ)や家臣(かしん:身近な部下)に会う際に、相手に正座を義務付けたことでした。 将軍はKing...

2024年05月04日
  • マンガ・読書感想文コンクール

    2023年04月05日
    “大同生命”という日本の保険会社をつくった「広岡浅子」の伝記マンガのベトナム語版が発刊されました。このマンガを読んで感じたこと、勉強になったことを、A4・1枚程度の感想文に書いて応募してください。入賞者には賞金が渡されるほか、応募者全員にデジタルギフト券が贈られます。 このコンクールには、ベトナムと日本から計655作品の応募がありました。厳正な審査の結果、12人の受賞者が選ばれ、2023年11月に表彰式を行いました。くわしくはこちらをお読みください。 主人公は女性の実業家 このマンガは広岡浅子(1849~1919年)という19世紀の日本の実業家の生涯を描いたものです。 浅子は今から174年前にとても裕福な商家に生まれ、今の銀行のような事業をしていた大きな商家に嫁ぎます。しかし、その直後に日本では革命が起きて経済環境が大きく変わり、浅子たちの商家も危機を迎えます。 そんな中、浅子は危機を救い、新たに銀行や石炭事業を起こしたり、日本で初めての女子大学を設立したり、生命保険会社を作ったりと、大活躍します。 「男が外で働き、女は家事と子育てをする」のが一般的だった時代に、女性の実業家として活躍した浅子。その人生をマンガで楽しく読み解きます。 大同生命について 左:広岡浅子さん、右:大同生命本社ビル 大同生命は、浅子たちが創立した120年の歴史を持つ日本の生命保険会社です。中小企業向けの保険サービスを提供するほか、中小企業が抱えるさまざまな課題の解決をサポートしています。 感想文コンクール 応募できる人 ベトナム語を母国語とする人(日本に住んでいるベトナム人もベトナムのベトナム人も応募できます) 課題図書 HIROOKA ASAKO小学館学習まんが人物館「広岡浅子」ベトナム語版※電子書籍(ベトナム語)はこちらから無料で読めます。 感想文の形式 ベトナム語か日本語のどちらかで書いてください。・ベトナム語:A4・1枚以内(500~700ワード)・日本語:A4・1枚以内(1000~1400字)フォーマット・ダウンロード※このフォーマットを使ってパソコンや携帯電話で入力しても、別の紙に手で書いてもどちらでも構いません。※フォーマットには感想文のサンプル(文章例)もついています。 応募方法 ・学校や日本語センター、組合などを通じて応募する場合は、先生に作品を渡してください。・個人で応募する場合は、下記にメールしてください。kokoro.vj.2022@gmail.com 応募しめきり 2023年6月30日 審査 ・大同生命の関係者やコンクール事務局(ベトナム人、日本人)が「作品の内容を的確にとらえているか」「自分の意見・感想をわかりやすく表現できているか」などを審査します。・表彰は2023年秋の予定です。 賞金・参加賞
  • ベトナムの常識・日本の非常識_35:「はい」は1回だけ

    2023年03月28日
    あなたが職場の上司から指示を受けたとき、ベトナムでは「はい、はい、はい」と返事をするのは一般的なことです。また、目上の人には車内で助手席に座ってもらうのが普通です。ところが、日本で同じことをすると……。 「はい」と3回連続で言うのは… 失礼です 上司から仕事の指示を受ける場面を想像してみてください。ベトナムでは、あなたが何か仕事の指示を受けたとき、「はい、はい、はい」または「OK、OK、OK」と答えるでしょう。これはベトナムではごく普通の返事で、指示をしっかり理解したという証しであり、礼儀正しい表現です。 しかし、日本で「はい」を2、3回続けて言うと、相手に良い感情を持たれません。上司やお客さんから指示や依頼、説明などを受けたときは、「はい」と1回だけ答えましょう。相手の顔を見て「はい」と1回だけ言えば、「(あなたの指示や説明を)理解しました」という意味になります。日本で仕事をするときは、このことを覚えておいてください。 話す相手が上司ではなくても、日本で「はい、はい、はい」と答えるのはよくありません。ある日本語の先生が教えてくれたことですが、日本人が「Yes」または「OK」と答えるとき、「はい」は1回だけです。「はい、はい」と答えると、「相手を軽く見ている」「聞き流している」「面倒くさそうにしている」などと誤解されてしまうそうです。「はい、はい、はい」も同じです。 ですから、上司とのやり取りだけではなく、アルバイト先の飲食店でお客さんの注文を受ける場面などでも、注文に対し「はい、はい」や「はい、はい、はい」と答えるのは失礼にあたります。お客さんが気分を損ねて帰ってしまうかもしれませんので、気をつけましょう。 食べるときはおわんを手で持つ ベトナムでは、おわんをテーブルに置いてスプーンで食べるのが一般的です。はしを使う場合も、おわんを置いて食べることについて何も気になりません。しかし、日本の文化では、おわんをテーブルに置いたまま、首を伸ばしておわんに口を近付けてはしやスプーンで食べると、「行儀が悪い」と思われてしまいます。日本では、おわんを片手で軽く持ち上げて口に近付けてから、はしやスプーンで食べる方が良いのです。ただし、大きなお皿については、片手で持ち上げる必要はなく、テーブルに置いたままで大丈夫です。 私は、日本の小学校に通う娘から、給食の時間に「3つのノー」運動があるということを聞くまでこのことを知りませんでした。「3つのノー」とは、①テーブルにこぼさない ②食べ物を残さない ③テーブルの上におわんを置いたまま食べない、の3つです。 日本人には、おわんやお茶わんをテーブルに置いたまま顔を近付けて食べることはペットのような食べ方と映るのかも知れません。さらに、おわんやお茶わんを手に持つことは、お米を作っている農家の人たちへの感謝の気持ちも表しているそうです。お子さんが日本の学校に通っていたり、職場で日本人の同僚と一緒に食事をしたりする場合は、このことに注意してください。 車に乗るとき、目上の人はどの席? 日本では車に乗る時、ベトナムとは異なる座席のマナーがあります。これは多くの国に共通することかもしれません。 ベトナムでは、運転席の隣の席(助手席)は家族や親しい友人のための優先席だと考えられています。例えば、私の家族が車に乗るとき、父はいつも運転する私の隣(助手席)に座り、後部座席には母と妻と子供たちが座ります。この配置の根拠は簡単で、父は家族で最年長なので一番良い席(広々とした視界がある助手席)に座るのです。これはおそらく多くのベトナム人家庭で共通のルールになっていると思われます。 しかし、日本のルールはこれとは違います。卒業式のとき、友人と車で日本語教師を迎えに行きました。私は友人(運転手)の隣(助手席)に座っていましたが、先生の家に到着すると、いったん車から降りて先生に助手席に座ってもらい、私は後部座席に回りました。それが先生への敬意だと考えたからです。 先生は少しとまどったような顔をしていましたが、何も言いませんでした。行事が終わった後、先生から興味深い文化の違いを聞きました。日本では、目上の人やお客さんを後部座席に座らせることが多いそうです。例えば、会社の上司や先輩とあなたがタクシーで移動する場合、上司と先輩に後部座席に座ってもらい、あなたは助手席に座るのがマナーなのだそうです。日本で仕事をする人はこのことにも気を付けてください。
  • 新入社員向けの基本ビジネスマナー_02

    2023年02月10日
    就職活動を終えてこれから日本で働き始める人や働き始めて間もない人は、日本での基本的なビジネスマナーを学びましょう。「電話の受け方」「お茶の出し方」「ホウ・レン・ソウ」について解説した新入社員向けの基本ビジネスマナー_01に続き、この記事では「メールの基本的なマナー」と「敬語の使い方の注意点」を紹介します。 メールの基本的なマナー 留学生の皆さんは大学・学校の先生や職員の方々と電子メールでやりとりをしたことがありますよね? その中には、学校からの連絡事項であって返事をしなくてもよいメールもあります。しかし、仕事関連のメールとなると、社外からのメールであれ社内からであれ、必ず返信する必要があります。これから紹介する5つのことに気をつけましょう。 件名(タイトル)をよく考える メールの件名には内容や重要度を知らせる役割がある メールを受け取る人が最初に見るのが件名(タイトル)です。そのため、送り手はメールの用件がひと目でわかるような件名を書くことが大切です。 「御社訪問の日程について」 「〇〇記念式典の準備会合について」 「御社ビル清掃サービスの契約更新のお願い」 などと書けば、件名を読むだけでメールの内容がだいたいわかります。 忙しい人は大事なメールから読む 1日に何十本ものメールを受け取る人もたくさんいます。そういう人たちにメールを送信する場合、件名は一層重要です。彼らは件名で判断して重要なメールを先に読み、内容がよくわからないメールは後回し(場合によっては数日後)にする場合も多いからです。 社名を入れる メールの件名にあなたの社名や名前を入れると、相手がメールの内容を想像することが一層容易になります。また、後からメールを検索する際にも便利です。 「3日の打ち合わせ資料(森興産、ブイ・リン)」 などと書けば、相手は一目でメールの内容や送り主がわかります。過去のメールを後から探す際にも、件名にメールの内容や送信者の会社名・名前などが入っていると、とても探しやすいです。 24時間以内に返信する 仕事を進めるためにメールで連絡を取り合うことはひんぱんにあります。その際、多くの人はメールを送ってから1日以上返事がないと、不安になります。そこで、メールを受信してからなるべく早く返信する習慣を付けましょう。事情があって遅くなっても、受信から24時間以内に返信するように心がけてください。 ・あなたの返信が早いと、相手はあなたに下記のような好印象を持ちます。 仕事が早い 仕事ができる 信頼できる ・あなたの返信がいつも遅いと、相手はあなたのことを下記のように思いがちです。 この人と一緒に仕事をするのは不安だ 返信が遅いので、仕事が円滑に進まない そもそも、相手はあなたの返信を待って仕事を次のステップに進めることが多いので、返信が遅いと、相手に迷惑をかけることになります。 ところで、ほとんどの会社が土日祝に休業します。もし金曜日にメールを受信した場合は、翌週の月曜日までに返信するとよいでしょう。 急ぎの用件はメールだけに頼らない トラブルやミスが起きたとき、納品スケジュールが押しているとき、予定の緊急調整が必要なときなど、急ぎの用件でメールを送る場合があります。しかし、相手がそのメールをいつ読むかはわかりません。場合によっては、2、3日放置されてしまう恐れもあります。 急ぎの場合は、メールを送るだけではなく、相手に早く確認してもらえるように電話やSNSなどでメールを読んでくれるように催促することも大切です。そして、緊急性が高い場合は、メールを送るより先に電話をかける方がよいでしょう。 早めにお礼メールを送る お客さんはあなたのために時間を作ってくれています。そのため、お客さんと打ち合わせをした後には、なるべく「お礼メール」を送りましょう。 お礼メールの内容は、感謝の気持ちのみならず、打ち合わせた内容のまとめや今後の課題・展望も書きましょう。そうすることで、その後の仕事がスムーズに進みます。 送信前に誤字・脱字や添付ファイルを確認する メールの送信ボタンを押す前に、件名、相手の名前、本文などに誤字・脱字がないか確認しましょう。もし、相手の名前を間違えてしまうと、大変失礼になります。また、本文に重要な誤字・脱字があると、あなたの仕事の信用性にかかわります。 また、添付ファイルの付け忘れや間違ったファイルを送ってしまうこともよくあるミスです。間違ったファイルを添付していないか、送信ボタンを押す前に添付ファイルの内容を必ず確認するようにしましょう。そうすることで添付忘れも防げますね。 敬語の使い方の注意点 しっかりとあいさつをする これから一緒に働く人たちと良い関係を築いていくための最初のステップはあいさつです。 社内でのあいさつの言葉 ・おはようございます。 ・お疲れ様です。 社外でのあいさつの言葉 ・お世話になります。 ・お世話になっております。 こうした言葉を欠かさないようにしましょう。仕事でよく使う言葉については、下記の記事でくわしく紹介していますので、こちらも参考にしてください。 仕事で使う日本語 適切な返事やあいづち 「うん」はNG 日本人の友人と話すとき、「うん」「そうだね」などという返事をよくしていると思います。しかし、お客様や目上の人と話すときに「うん」とか「そうだね」などの言葉を使うのは御法度(ごはっと)です。「うん」や「そうだね」は自分と対等か立場が下の相手にしか使ってはいけません。お客様や上司、先輩にうっかり「うん」とか「そうだね」などと答えてしまうと、大変失礼なことになります。 「はい」は1回 返事をする際に「はい、はい」や「なるほど、なるほど」のように、本来は一度ですむ言葉を2回繰り返して使うと、相手は「適当にあしらわれている」と感じたり、あなたのことを「軽薄な人だ」と思ったりしますので、気をつけてください。 同意を表す表現 ・私もそう思います。 ・私もそのように思います。 ・私もそのように感じておりました。 ・おっしゃる通りです。 ・おっしゃる通りかと存じます。 承諾や同意の言葉 ・承知しました。 ・承知いたしました。 ・かしこまりました。 ・左様(さよう)でございます 。 ビジネスシーンにふさわしい言葉を選び、失礼がないように気をつけましょう。 主語に応じた敬語を選ぶ 敬語の中には、「丁寧(ていねい)語」、「尊敬(そんけい)語」、「謙譲(けんじょう)語」があります。 尊敬語と謙譲語を使い分けるのは外国人には難しいことですが、次の手順を知っておくと、少し簡単になります。まず、「その行為をするのはだれ?」と考えると、主語が分かります。主語を確認した上で、次の原則に当てはめると、敬語の間違いが激減します。 ・主語が相手や他人(主に目上の人)のとき→尊敬語 ・主語が自分や身内のとき→謙譲語 敬語の大事な原則や間違いやすい事例を知りたい方は下記の記事を読んでください。 これでスッキリ!敬語はこうして覚える また、丁寧語の「〜です」「〜ます」は使用頻度(ひんど)が高いので、意識しなくても使えるように普段から使って慣れておきましょう。 まとめ この記事では、新入社員が覚えておくべきビジネスマナーとして「メールの基本的なマナー」と「敬語の使い方の注意点」について説明しました。 【メールの基本的なマナー】 ・件名をよく考える(端的でわかりやすい件名を付ける) ・24時間以内に返信する ・急ぎの用件はメールだけに頼らない ・早めにお礼メールを送る ・送信前に誤字・脱字や添付ファイルを確認する 【敬語の使い方の注意点】 ・しっかりとあいさつをする ・「うん」はNG ・「はい」は1回 ・主語に応じた敬語を選ぶ これから日本で働く皆さんや日本で働き始めて間もない皆さん、この記事と新入社員向けの基本ビジネスマナー_01で紹介したマナーを覚えれば、基本的には大丈夫です。職場や取引先の皆さんから信頼される社員に早くなれるよう、ビジネスマナーにも注意しながらがんばってください。

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  • ベトナムの常識・日本の非常識_09:夜に爪を切るべからず

    日本人は、あなたが夜に爪を切ったり、ご飯におかずやタレを混ぜて食べるのをみると、驚いたり眉根を寄せるかもしれません…。 夜に爪を切らない ある夜、何の気なしに「自分の爪が伸びているな」と思ったあなたは、それを整えたいと思うでしょう。ベトナムにいるのであれば「はい、どうぞ」と言いたいのですが、日本にいる時、特にホームステイなどしている場合はやめておいた方がいいでしょう。      “夜に爪を切る”ことがなぜタブーなのか。日本には、主に二つの迷信があります。夜に爪を切ることは日本語で「夜爪(ヨツメ)」と言われ、これが違う意味の「世詰(ヨツメ)」と聞こえてしまうからです。「世詰」は「命が短くなる」という縁起の悪い言葉なので、夜に爪を切るという行為は「早死にする」につながるということです。 また、江戸時代には、「爪も親から授かった体の一部。暗闇で粗末に爪を扱う親不孝をしていると、親の死に目に会えない」と言われました。それが現代にも伝わっているのです。 現実的な理由は次のとおりです。 昔は自宅に電灯もなく、今使っているような爪切りもありませんでした。つまり暗い中で小刀などの刃物を使う危険な行為だったのです。親としては子供にそんなリスクを負わせたくないので、「早死にする」とか「親の死に目に会えない」などの迷信を使って注意したのでしょう。 櫛が折れると不吉? ベトナムでは“鏡が割れる”ことは不吉なことだと言われていますが、日本ではそれが鏡ではなく“櫛”にあたります。日本人は、誤って櫛が折れてしまうことをとても恐れています。それはなぜしょうか? それは日本の神様の一人である“伊邪那岐(イザナギ)”の神話に由来すると言われています。黄泉の国から逃げようと走る伊邪那岐は、迫りくる追手から逃れるために自分が髪につけていた竹の櫛を投げました。すると地面から筍(タケノコ)が生えてきて、追手はそれを食べることに夢中になり、伊邪那岐はそのすきに逃げることができた…という話があるのです。この話が元となり、「櫛は命を救う大切なもの」という言い伝えができたのです。 またほかの由来としては、昔から櫛は高級品とされ、娘が嫁ぐときに母親が持たせていたそうです。そのため日本人にとって櫛はとても大切なもので、大事にしなければならないという気持ちが強いのです。 湯船に入る前に体を洗って! 一般的にベトナムの家庭では、湯船に浸かるという習慣がありません。しかし日本ではどの家庭にも、ホテルにもバスタブが設置されています。 ベトナム人の中には、いきなり湯船に入る人がたくさんいます。しかしこういったお風呂の入り方は、日本人からすると間違ったもので、気分の良くないことになるのです。 一般的な日本のバスルームというのは、プラスチック製の背の低い椅子がシャワーヘッドの近くに置いてあり、そこで体を洗えるようになっています。体をキレイに洗ったあと、初めて湯船に浸かって存分にリラックスできるのです。日本人は、湯船をキレイにしておくようにいつも心がけていますので、決して間違った使い方をしないようにしましょう。特に温泉などの公衆浴場では気をつけましょうね! おかずやタレをごはんに混ぜない 80年代以前に生まれたベトナム人は、豚の角煮や魚のトマト煮などタレがかかっている料理を食べる時、そのタレや具をご飯に混ぜて食べることがよくあります。私もその食べ方が大好きです。 しかし、ある日本人家族を自分の家の夕食に招待した時、私がその食べ方をすると彼らにビックリされてしまったのです。 その家族と私はとても親しい中だったので、「日本人はそうやってごはんと混ぜて食べるのは『行儀が悪い』と思うんだよ」と言ってくれたのでした。 日本人は、ご飯におかずを乗せる「どんぶり飯」を食べます。牛丼、親子丼、海鮮丼などです。しかし、お茶碗のご飯と別の皿に盛られたおかずがある場合は、それぞれを別々に順番に口に運ぶことが多いのです。日本では、お茶碗の中でご飯とタレを一緒にさせない方が「お行儀が良い」とされるのです。 日本では、お茶碗の中でご飯とタレを“一体化”させないようにしましょう!

    2020年09月04日

  • ベトナムの常識・日本の非常識_08: 肌の露出を控えよう

    今回のベトナムの常識日本の非常識は、下記の三つを紹介します: 1. 人との距離を詰めすぎない。 2. 夏の服装~過度の露出は避けて。 3. 北に枕を置いて寝ない。 人との距離を詰めすぎない ハノイで英語クラブのホストをしていたとき、私は欧米の友だちからよく文句を言われたものでした。 「ベトナム人は、スーパーでの会計や映画館のチケット売り場、ATMやケンタッキーの会計などで、すぐ後ろに距離を詰めて並んでくる。後ろの人の息づかいまで感じるほどだよ」。3年間ハノイに住んでいるアメリカ人のブライアンの言葉です。 実を言うと、最初私はこのことについてそれほど大きな問題だと感じてはいませんでした。彼らはただ“普通に”並んでいるだけだと。それでもっと客観的に捉えるべきだと、私は他のベトナム人にも聞いて回ったのですが、やはり同じような感覚を持っている人が多いのでした。 人との距離を詰めすぎない      しかし、日本に来て初めてわかったのですが、日本人はもちろん他の先進国の人々は、一様に他者との間隔を空けることを尊重していたのです。大都市の駅やスタジアムでの観戦などを除いて、日本人は公共の場でできるだけ人との距離を保とう(少なくとも片手を伸ばした長さ分)とします。 扶桑の国(日本)の人々は小さいころから、隣の人がSNSを見たり、新聞を読んでいたりしていたら、その画面や文字が見えない程度の距離をとるよう教わります。日本で行列に並ぶ時は、自分の息づかいが前の人が感じてしまわないよう、また前の人が見ている画面の文字が見えないような間隔をとって並ぶようにしましょう。 夏の服装~過度の露出は避けて 冬に日焼けを避け、豊かでメリハリのある体になろうと運動をする…夏になってその成果を発揮し、道行く人が思わず振り返るような曲線美を見せられないようなら、あなたは自分自身に自信をなくしてしまうでしょう。ベトナム人はよく冗談で「日々の暮らしが豊かになればなるほど女性の服は短くなる」と言うほどです。 そのように若者の心を躍らせることのできる女性たちの姿は、まさに豊かさと勤勉さを表現していると言えます。だから女性が自らを自慢することは、多くのベトナム人に受け入れられるのです。 けれどもこの感覚は、時として日本人に嫌悪感さえ与えてしまいかねないのです。来日すれば、あなたは日本の女性が暑さの中で頭からつま先までしっかりと着込んでいることに理解できないでしょう。ましてや上着を何層も重ねているとなれば。 夏の服装~過度の露出は避けて 一般的に、日本は昔から“控えめさ”を尊重する国でした。加えて高齢者は日本の人口の約28%を占めます。そのためあなたが公共の場で高齢者にバッタリと会って偏見に苦しむ可能性は、若者から体のラインを称賛される可能性よりも高いのです。 ですから日本人のファッションをできるだけ取り入れるのが一番無難なのではないでしょうか。服装は『上はしっかり、下はふんわり』を心がけましょう! 北に枕を置いて寝ない 北に枕を置いて寝ない ベトナム人は枕元に鏡を置きません。同様に日本人にも寝る時のタブーがあります。“それは北の方角に枕を置いて寝ない”というもの。なぜ日本人はそれをタブーとするのでしょうか? それには二つの説があると言われています。 一つは、日本人は伝統的に死者の頭を北の方角に向けて寝かせて納棺していました。そのため生きている人が頭を北側に向けて寝るのは縁起が悪いとされ、そのタブーを“北枕”と呼ぶようになったのです。 二つ目は科学的な理由によるものです。地球には北から南に引っ張る磁力があります。南には陰(マイナス)極、北には陽(プラス)極が働いています。人にもその磁力が働いていて、陰極は足側、陽極は頭側となっているのです。したがって北側に頭を置いてしまうと陽極同士が反発しあってしまい、それが原因で睡眠障害や疲れが溜まってしまうのです。誰だって体の調子が悪くなるのを望んではいませんよね?

    2020年08月24日

  • ベトナムの常識・日本の非常識_07:歩きながら食べてはダメ?

    ハンバーガーやサンドイッチを食べながら歩く。スマホを見ながら箸をくわえる。無断で他人を撮影する。多くの国ではごく普通のことですが、日本でそういうことをするとマナー違反となってしまいます。 食べ歩き 洋画を見ていると、スーツを着こなした俳優がハンバーガーを買い、歩きながらかじりついているシーンがよく出てきますね。そういった映像は、多くのベトナム人の若者にとって都会の喧騒や仕事の中の“クールな”一場面として映るのです。 しかし活況な都会という点では同じレベルの日本では、そういった食べ歩き行為は(たとえ食べているものが何であっても)周りの人や住んでいる人を不快な気持ちにさせてしまうのです。 ©毎日新聞 「なぜ日本では食べ歩きはタブーなの?」「法律に違反している?」と多くの人は疑問に思うかもしれません。もちろん誰もあなたを罰しません。しかし、日本ではそれはすべきではない行為であることは間違いありません。 日本人は、小さいころから食事に感謝の気持ちを持つように教えられます。食卓につき、手を合わせ、食べる前に「いただきます」と言ってからゆっくりと食事をするのです。食材を生産した人や料理を作った人に感謝し、テーブルで食べることが礼儀だと考えるのです。 ©PhotoAC©irumam 私たちは「さっと食事を済ませてしまおう」いう考えで食べ歩きしますが、日本人にとっては食べ物に対する感謝と礼儀を欠いた行為となり、マナー違反となってしまうのです。また、食べ歩きは袋や食べ残しなどのゴミを“ポイ捨て”しがちとなり、それもマナー違反になります。 くわえ箸 食事中、突然スマートホンにメールが届きます。あなたは空いた手でスマホを操作し、箸を持ったまま、その箸の先を口にくわえて食事を続けようとします。ベトナムであってもそういった行為に対して眉間にしわを寄せる人はいますが、特に注意されることはありません。しかし日本では、タブー中のタブーなのです。 これは極めて失礼であると同時に不衛生な行為で、日本では「くわえ箸」と呼ばれています。わざわざ呼び方が決まっているくらいですから、日本人がこのマナー違反をことさら嫌っていることは明らかです。ですから、もし食事中に自分の手を空けたいと思ったら、しっかりと箸置きの上に箸を置いてから次の動作をしてくださいね。 他人を撮影する ベトナムでは最近、“xin info gái xinh/trai đẹp”という美人やイケメンの情報をSNSに上げるのが流行っています。要するに道ばたで美人に遭遇したらこっそりと写真を撮り、Facebookに投稿してその人に関する情報を集める…というものです。 これは、日本では絶対にダメです。交番に座らされてお茶を飲む羽目になります。 日本は、個人のプライバシーを大切にします。知らない人の投稿の中に自分が写っている場合、その人は訴えを起こす権利があります。どんな目的でそれが使われてしまうか分からないためです。 ですから、例えばコスプレイヤーや美人、武闘家などの写真を撮りたい時は、撮影する前に「(日本語で)写真を撮ってもいいですか?」と聞いて許可を得ましょう。もしそれで断られてしまっても食い下がらないように。面倒なことになりますよ!

    2020年07月10日

  • ベトナムの常識・日本の非常識_06:入れ墨 / 赤い文字で名前を書く

         “入れ墨”はベトナムではクールでスタイリッシュと見られることがありますが、日本ではそうではないようで… 入れ墨はお断り? ここ10年ほど前から、ベトナムではタトゥー(刺青)が人気を博しています。若者が溢れるハノイやホーチミンなどの都市を歩けば、男性ならクールな、女性ならかわいらしいデザインのタトゥーをさした若者たちを簡単に見つけることができるでしょう。 しかし日本人の多くは、刺青に対して必ずしもそういったポジティブな感情を持っている人が多いとは思わない方がいいでしょう。その理由は大きく二つあるようです。一つは歴史的なことと関連します。1700年ごろ(江戸時代)のことを記した資料によると、罪人に対する刑罰として行われていた“鼻削ぎ”に代わり、“入れ墨刑”が行われるようになったそうです。また再犯した場合、今度は顔に入れ墨刑が科されたようです。 入れ墨は生涯を通じて消えない罪の証として罪人に印され、それが同時に犯罪抑止ともなったのです。そうして時代が移り変わっても、一部の日本人にとって入れ墨は“犯罪者の印”としてのイメージが強く残っているのです。      二つ目の理由はやはり、反社会勢力(暴力団)の影響によるものでしょう。昔からその世界へ入る時には入れ墨を掘るのが習わしとなっています。これは堅気の世界と決別し、組のために命を懸けるという決意の表明であるとも言われています。 そのため日本で入れ墨やタトゥーをしている人は、暴力団との付き合いがあるのではないか?と連想されがちなのです。そして実社会でも不都合な時が多い。例えばプールや温泉、銭湯などの公共施設への入場を拒否されてしまいます。そればかりかもし金融関係の職や銀行、保険などの接客する機会の多い職種に就きたい場合でも、入れ墨をしているだけで不採用となってしまう可能性が高いのです。 赤い文字で名前を書くと…? ベトナムでは手紙などを赤く塗って装飾したり、目立つように特別な人や自分自身の名前を赤い字で書くことがあります。しかし日本では人の名前を赤で書く行為は別の意味をもつこともあるのです。 日本でよく名前を赤色で記す場合があるのは…死者を示すときです。皆さんも日本のお墓参りに行ったとき、墓石に掘られた文字が一部赤くなっているのを見る機会があるかもしれません。これは「朱入れ」と呼ばれるもので、建立者がまだ存命しているときに掘られる赤い文字のことです。つまり「朱入れ」は『まだ生きている』という意味ですが、そこから「“墓”を連想するから縁起が悪い」という印象がついたのです。(*ベトナム語にはありません) また、昔の日本では、赤文字は“挑戦”を意味したいときに使われていました。日本の侍(サムライ)は相手に戦いを挑むときに挑戦状を書くのですが、その時に『あなたと“必死”で戦う』という意味を込めて赤文字で書いたのです。 現代においては、“赤字”は企業の決算がマイナスになることで、利益が出ている黒字決算が赤字になることを「赤字転落」と言います。 つまり人の名前を赤で書くということは、死や血、失敗などのニュアンスを含めてしまうことがあるのです。そういった誤解を生まないよう気を付けましょう。 食べ残しは印象が悪い 日本では『出された食べものを残す』というのは、失礼にあたります。日本人がお客様に料理を提供するときは、相手への気持ちを込めて作ります。ですからそれらお皿の上で残ってしまうことは、料理してくれた人の気持ちを台無しにしたことになりかねないので、頑張って残さずいただきましょう。 日本では、そういったマナーの話はもとより、“食べ残し”が深刻な社会問題となっているのです。統計によると、日本で毎年出る食べ残しや食品廃棄物(=食品ロス)の量は、発展途上国の飢餓を救うために使用される食糧よりも多いのです。 これらの“食品ロス”は、主にレストランやスーパーマーケット、その他小売店で大量にでる廃棄品や売れ残りはもちろん、メーカーで規格外とされた食品、返品されたものなどが含まれています。ですからお皿に盛られたものは残さず食べ、「食品ロス」を増やさない意識を持ちましょう。

    2020年06月02日

  • ベトナムの常識・日本の非常識_05:エスカレーターの意外な乗り方

    エスカレーターではどこにでも立ち、お見舞いに花を買ったり、ホテルやレストランでチップを払ったり、夜に口笛を吹いたり…それらの習慣はベトナムではとても一般的ですが、日本では“ダメ”なものばかりです。 “桜の国”、“日出ずる国”―日本。春には桜、秋には紅葉が楽しめるなど、言わずと知れた独自の文化をもつ国として多くの人に知られています。しかし日本人の日常生活の中にある特徴的な文化、マナーについて、ベトナム人はほとんど知らないのではないでしょうか。今回はそのことについてみていきましょう! エスカレーターの乗り方 九州大学(福岡市)在学中の一年生レー ホアン アンは、エスカレーターに乗っているとき後ろから男性に肩をたたかれ「左に寄って」と言われた瞬間を、今でも忘れられないと言います。アンはその見ず知らずの男性の表情が全然愉快でなかったことに少し驚いたそうです。 アンはベトナムの習慣から、エレベーターに乗り込んだ後、友だちと“並んで”立っていたのです。しかし日本はエスカレーターに乗ったら“列を作る”文化がしっかりと築かれています。通常、エスカレーターに乗った際は左(関西では右)に寄って立つ必要があり、もう一方のスペースは急ぐ人(立ち止まらずに昇ったり降りたりしたい人)のために空けておくのです。 日本ではエスカレーターに乗った際は左(関西では右)に寄って立つ ベトナムではそういったことはなく、エスカレーターのどこに立っても問題ないのですが、日本ではアンのような出来事に遭遇しないよう、片側に寄ることをオススメします。 チップをあげると日本人は怒る!? 次は日本の非常に興味深い文化“チップ”を体験するために、レストランに入ってみましょう。ベトナム、特にホーチミン市では、ウェイターにチップを渡すのが比較的一般的です。ベトナム人の多くは理想のサービスが提供されたら、感謝や満足の意を表現するために多少のチップをわたすのが最良の方法であると考えます。 チップをあげると日本人は怒る!? しかし日本でそれをしてしまうと、厄介な状況に陥ってしまうこともあるのであまりオススメできません。日本人(スタッフ)にとってお客が満足するようなサービスを提供することは“当然のこと”と考えらえているためです。むしろチップを渡されることが“侮辱だ”と考えてしまう日本人も少なくないのです。彼らにとってお金は価値を測る尺度の一つではないのです。お金をもらいたいからサービスを提供するのではなく、お客をもてなしたい、という気持ちから行動しているのです。 お見舞いに花を持っていくのはダメなの!? 次に、あなたには入院している日本人の友だちがいて、その人のお見舞いをしたいと考えているとします。ベトナム人のあなたなら、友だちが喜んでくれると思って花を買ってお見舞いにいこうとしますよね。その時、いくつか注意することがあります。 日本ではお見舞いに花を持っていくのはダメなの!? 花を贈ること自体は問題ありませんが、例えば日本ではお葬式に白い花を使うので、白い花はNGなのです。また赤い花は病人に“血”を連想させるのでこれも良くありません。さらに縁起が悪いのは鉢植えの花です。 鉢植えは「根付く=寝着く」という日本語を連想してしまうのです。あなたは友だちに「ずっと寝ててね」と願いますか?一部の地域で鉢植えの花は、その病院にずっと“根付く”ことを願っているのか?というメッセージだとも思われるそうです。 口笛はダメなの !? 澄んだ月明かりが照らす夜、あなたは気分が高揚し、口笛を何度か口ずさもうと思います。ベトナムではもちろん「どうぞご自由に」ですが、日本ではマナー違反になってしまいます。日本には口笛について多くの説話があります。 日本では口笛はダメなの !? 一部の地域で夜の口笛というのは、泥棒がお互いを呼び合う方法であったとされています。そのため一たび口笛の音をきけば、人々は反射的にあたりを見回して泥棒を探したのだそうです。 さらに昔の話では、笛は魂を呼び戻す道具として使われていました。そのため夜の笛の音色は、魂や幽霊が出てくるんじゃないかと人々を怖がらせるものなのです。また地方の子どもたちの多くは、大人たちから「口笛を吹くと蛇が家に入ってくるぞ」と教わります。要するに夜に口笛を吹いたら、良くないことしか連想できない、ということなんですね。 その国の民話、説話はその国独自の文化に深い影響を与えています。その国で日常生活を送るうえで失礼のない振る舞いするために、タブーを学び、尊重していきましょう!

    2020年05月12日

  • 日本の常識・ベトナムの非常識_04:食べ物のタブー

     ベトナム人が自信をもって日本に持ち込める文化の一つに「料理」があります。でも時として、母国の素晴らしい料理が日本人にとって決してそうではない場合もあるのです。今回は私の体験を交えてお伝えしていきます。 日本で誇れるベトナム料理  「ベトナム料理、大好きです!フォー作ってくださいよ~!」ケイナさん(23歳・女性)は私がベトナム人だと知った途端、そう話しかけてくれました。ケイナさんはまだ若いこともあって海外旅行は未経験でしたが、ベトナム料理が非常に魅力的な料理であることを知っていたのです。彼女は「フォーや春巻きなどが好き」とのことでした。  今年3月、福岡市にある九州大学で国際交流を深めるための料理コンテストが開催されました。各国のチームはそれぞれ「自国の郷土料理」3品を出品し、味はもちろん、その料理を通じて“多様な文化”を表現することが、審査の最優先基準とされています。  ベトナムチームは当初から優勝候補チームの一つに挙げられていました。20近いチームが参加する料理コンテストで「強豪」と呼ばれる背景には、昔から多くのベトナム人たちが旅行カバンの中に「自国の料理に対するプライド」も詰め込んで来るからだと言われています。  しかし……、“桜の国・日本”では、我々ベトナム人にとって当たり前の料理でも、彼らがすべてを受け入れてくれるわけではない、ということを知っておく必要があるのです。  ある時私は九州大学の外国人学生支援センターに勤めている女性に、「ベトナム人は『Tiết canh vịt』-『アヒルの生血のよせ物』や『Đuông dừa』『ヤシの木で生息する幼虫』という食文化がある」と話しました。それを聞いた時の彼女の驚きの顔を、今でもハッキリと覚えています。日本人は人とのお付き合いで“気配り”ができる、と世界的に有名です。彼らは難しい要求に対して「できない」とハッキリ断ることが苦手で、その代わりに「検討する」と応えることが多いといいます。ところが、彼女は「幼虫を食べる」という話を受けて「食べない」と一言。そして「虫を食べるの?」と聞いてきたのです。私からすると、日本料理で「躍り食い」という生きたまま食べる料理は信じられませんが、彼らにとって「幼虫を食べる」ことは、ベトナム人の感覚とは異なり受け入れがたいことのようでした。 © Việt Nguyễn 日本では“受け入れがたい料理”、“禁止されている食べ物”  前述した幼虫の話と似ていますが、ベトナム語講師のMei Mei(メイメイ)さんによると、彼女の日本人の生徒さんたちにとって北部ベトナムで一般的な「蛹(さなぎ)料理」は、鳥肌が立ってしまうほどゾッとする料理である、といいます。ただ、食卓に蛹が並ぶ光景にゾッとしてしまう感覚は、犬肉や猫肉と比べればまだマシであるらしいのです。  私が知り合いの鉄平さんから偶然聞いた話です。鉄平さんには韓国人のガールフレンドがいて、その彼女から「韓国人は犬肉を食べる」と聞いた時、お互いの文化や感覚の不一致を感じたそうです。鉄平さんは、ベトナムでも犬肉や猫肉を食べることを知って更に驚きました。国によって食文化が異なることを十分理解している人ですが、彼にとって犬や猫はペットであり、食べ物であるとはどうしても認めることができないのです。  その逆もあります。日本人にとっては古くから親しまれ一般的であるものでも、私たちベトナム人にとって受け入れがたい食べ物だって少なからずあるのです。それは「納豆」です。発酵した大豆を使った食べ物ですが、ネバネバとした粘り気と、そのにおいには耐えがたいものがあります。一度鼻先に近づけてみれば、台湾の「臭豆腐」にも似た臭いを感じます。日本の食卓に並ぶ納豆はとても一般的な食べ物で小学校の給食にも登場します。しかし、納豆を食べた多くのベトナム人の友人たちからは「納豆は腐った味がする」と聞かされました。  納豆はベトナム人にとって受け入れがたい食材の一つですが、今後みなさんも理解しがたい、受け入れがたい食べ物に遭遇するかもしれません。生きたまま、かつまだ動いているもの(「イカの踊り食い」や「カエルの活け造り」、「馬刺しなど)のような…。ただ、それらは日本人が一般的に食べるものなので、怖い物ではありません。しかし、ベトナム人の食文化にどうしても合わない食べ物は無理に食べなくても良いと思いますよ。日本の食文化とも上手にお付き合いしましょう。

    2020年04月24日

主催者

Nhà tài trợ Bạch Kim

後援

  • 在ベトナム日本国大使館
  • 国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
  • JNTOハノイ事務所
  • 関西経済連合会
  • 一般社団法人 国際人流振興協会
  • 公益社団法人 ベトナム協会
  • NPO法人 日越ともいき支援会

協力

JASSO(日本学生支援機構)

外国人労働者弁護団

WA.SA.Bi.