文化
新入社員向けの基本ビジネスマナー_02
就職活動を終えてこれから日本で働き始める人や働き始めて間もない人は、日本での基本的なビジネスマナーを学びましょう。「電話の受け方」「お茶の出し方」「ホウ・レン・ソウ」について解説した新入社員向けの基本ビジネスマナー_01に続き、この記事では「メールの基本的なマナー」と「敬語の使い方の注意点」を紹介します。
メールの基本的なマナー
留学生の皆さんは大学・学校の先生や職員の方々と電子メールでやりとりをしたことがありますよね? その中には、学校からの連絡事項であって返事をしなくてもよいメールもあります。しかし、仕事関連のメールとなると、社外からのメールであれ社内からであれ、必ず返信する必要があります。これから紹介する5つのことに気をつけましょう。
件名(タイトル)をよく考える
メールの件名には内容や重要度を知らせる役割がある
メールを受け取る人が最初に見るのが件名(タイトル)です。そのため、送り手はメールの用件がひと目でわかるような件名を書くことが大切です。
「御社訪問の日程について」
「〇〇記念式典の準備会合について」
「御社ビル清掃サービスの契約更新のお願い」
などと書けば、件名を読むだけでメールの内容がだいたいわかります。
忙しい人は大事なメールから読む
1日に何十本ものメールを受け取る人もたくさんいます。そういう人たちにメールを送信する場合、件名は一層重要です。彼らは件名で判断して重要なメールを先に読み、内容がよくわからないメールは後回し(場合によっては数日後)にする場合も多いからです。
社名を入れる
メールの件名にあなたの社名や名前を入れると、相手がメールの内容を想像することが一層容易になります。また、後からメールを検索する際にも便利です。
「3日の打ち合わせ資料(森興産、ブイ・リン)」
などと書けば、相手は一目でメールの内容や送り主がわかります。過去のメールを後から探す際にも、件名にメールの内容や送信者の会社名・名前などが入っていると、とても探しやすいです。
24時間以内に返信する
仕事を進めるためにメールで連絡を取り合うことはひんぱんにあります。その際、多くの人はメールを送ってから1日以上返事がないと、不安になります。そこで、メールを受信してからなるべく早く返信する習慣を付けましょう。事情があって遅くなっても、受信から24時間以内に返信するように心がけてください。
・あなたの返信が早いと、相手はあなたに下記のような好印象を持ちます。
- 仕事が早い
- 仕事ができる
- 信頼できる
・あなたの返信がいつも遅いと、相手はあなたのことを下記のように思いがちです。
- この人と一緒に仕事をするのは不安だ
- 返信が遅いので、仕事が円滑に進まない
そもそも、相手はあなたの返信を待って仕事を次のステップに進めることが多いので、返信が遅いと、相手に迷惑をかけることになります。
ところで、ほとんどの会社が土日祝に休業します。もし金曜日にメールを受信した場合は、翌週の月曜日までに返信するとよいでしょう。
急ぎの用件はメールだけに頼らない
トラブルやミスが起きたとき、納品スケジュールが押しているとき、予定の緊急調整が必要なときなど、急ぎの用件でメールを送る場合があります。しかし、相手がそのメールをいつ読むかはわかりません。場合によっては、2、3日放置されてしまう恐れもあります。
急ぎの場合は、メールを送るだけではなく、相手に早く確認してもらえるように電話やSNSなどでメールを読んでくれるように催促することも大切です。そして、緊急性が高い場合は、メールを送るより先に電話をかける方がよいでしょう。
早めにお礼メールを送る
お客さんはあなたのために時間を作ってくれています。そのため、お客さんと打ち合わせをした後には、なるべく「お礼メール」を送りましょう。
お礼メールの内容は、感謝の気持ちのみならず、打ち合わせた内容のまとめや今後の課題・展望も書きましょう。そうすることで、その後の仕事がスムーズに進みます。
送信前に誤字・脱字や添付ファイルを確認する
メールの送信ボタンを押す前に、件名、相手の名前、本文などに誤字・脱字がないか確認しましょう。もし、相手の名前を間違えてしまうと、大変失礼になります。また、本文に重要な誤字・脱字があると、あなたの仕事の信用性にかかわります。
また、添付ファイルの付け忘れや間違ったファイルを送ってしまうこともよくあるミスです。間違ったファイルを添付していないか、送信ボタンを押す前に添付ファイルの内容を必ず確認するようにしましょう。そうすることで添付忘れも防げますね。
敬語の使い方の注意点
しっかりとあいさつをする
これから一緒に働く人たちと良い関係を築いていくための最初のステップはあいさつです。
社内でのあいさつの言葉
・おはようございます。
・お疲れ様です。
社外でのあいさつの言葉
・お世話になります。
・お世話になっております。
こうした言葉を欠かさないようにしましょう。仕事でよく使う言葉については、下記の記事でくわしく紹介していますので、こちらも参考にしてください。
適切な返事やあいづち
「うん」はNG
日本人の友人と話すとき、「うん」「そうだね」などという返事をよくしていると思います。しかし、お客様や目上の人と話すときに「うん」とか「そうだね」などの言葉を使うのは御法度(ごはっと)です。「うん」や「そうだね」は自分と対等か立場が下の相手にしか使ってはいけません。お客様や上司、先輩にうっかり「うん」とか「そうだね」などと答えてしまうと、大変失礼なことになります。
「はい」は1回
返事をする際に「はい、はい」や「なるほど、なるほど」のように、本来は一度ですむ言葉を2回繰り返して使うと、相手は「適当にあしらわれている」と感じたり、あなたのことを「軽薄な人だ」と思ったりしますので、気をつけてください。
同意を表す表現
・私もそう思います。
・私もそのように思います。
・私もそのように感じておりました。
・おっしゃる通りです。
・おっしゃる通りかと存じます。
承諾や同意の言葉
・承知しました。
・承知いたしました。
・かしこまりました。
・左様(さよう)でございます 。
ビジネスシーンにふさわしい言葉を選び、失礼がないように気をつけましょう。
主語に応じた敬語を選ぶ
敬語の中には、「丁寧(ていねい)語」、「尊敬(そんけい)語」、「謙譲(けんじょう)語」があります。
尊敬語と謙譲語を使い分けるのは外国人には難しいことですが、次の手順を知っておくと、少し簡単になります。まず、「その行為をするのはだれ?」と考えると、主語が分かります。主語を確認した上で、次の原則に当てはめると、敬語の間違いが激減します。
・主語が相手や他人(主に目上の人)のとき→尊敬語
・主語が自分や身内のとき→謙譲語
敬語の大事な原則や間違いやすい事例を知りたい方は下記の記事を読んでください。
また、丁寧語の「〜です」「〜ます」は使用頻度(ひんど)が高いので、意識しなくても使えるように普段から使って慣れておきましょう。
まとめ
この記事では、新入社員が覚えておくべきビジネスマナーとして「メールの基本的なマナー」と「敬語の使い方の注意点」について説明しました。
【メールの基本的なマナー】
・件名をよく考える(端的でわかりやすい件名を付ける)
・24時間以内に返信する
・急ぎの用件はメールだけに頼らない
・早めにお礼メールを送る
・送信前に誤字・脱字や添付ファイルを確認する
【敬語の使い方の注意点】
・しっかりとあいさつをする
・「うん」はNG
・「はい」は1回
・主語に応じた敬語を選ぶ
これから日本で働く皆さんや日本で働き始めて間もない皆さん、この記事と新入社員向けの基本ビジネスマナー_01で紹介したマナーを覚えれば、基本的には大丈夫です。職場や取引先の皆さんから信頼される社員に早くなれるよう、ビジネスマナーにも注意しながらがんばってください。
人気記事ランキング
-
田んぼのタニシは食べてはいけません 27700 views
-
オンライン無料日本語教室 23081 views
-
日本での「遅刻」は何分遅れから? 18030 views
-
Vol. 60 技能実習で本当はいくら貯金できるの? 15957 views
-
Vol. 42 失踪中の不法就労の様子とは 13025 views
Platinum Sponsor
Bronze Sponsors
- 弁護士法人Global HR Strategy
- エール学園
後援
- 在ベトナム日本国大使館
- 国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
- JNTOハノイ事務所
- 関西経済連合会
- 一般社団法人 国際人流振興協会
- 公益社団法人 ベトナム協会
- NPO法人 日越ともいき支援会
協力
関連記事
-
「正座」は日本の伝統的な座り方?
足を折りたたんで座る「正座」。日本の江戸時代(1603~1868年)、武士が将軍に会うときは、正座をすることで将軍への忠誠心を示しました。現代でも、茶道や華道、書道など日本の伝統文化で正座は正式な座り方とされ、日常生活でも、和室で目上の人と会うときは正座が原則です。ただし、日本で正座が広まったのはそれほど昔のことではありません。それでは、正座は日本でいつごろからどうやって広まっていったのでしょうか? この記事は5カ国語の総合メディアJAPOと共同で制作しました。ベトナムでは、JAPOのウェブサイトに毎月15万件のアクセスがあり、雑誌も毎月2万部を配布しています。TV番組もあります。 昔は「立てひざ」や「あぐら」が一般的だった あぐら かつては「立てひざ」や「あぐら」が一般的 正座は日本の奈良時代(710~784年)に中国から伝わったと言われています。しかし、長らく、正座をするのは、神様や仏様に祈るときや高貴な人にひれ伏す場合などに限られていたようです。 江戸時代(1603~1868年)までは、公的な場でも、男性も女性も片方のひざを立てて座る「立てひざ」の座り方が多かったそうです。その後、座禅(ざぜん)の座り方に近い「あぐら」という座り方(上の写真)も広まっていきます。 十二単の着物 平安時代(794~1185年)の女性貴族や宮廷で働く女性たちの姿が当時の絵に描かれていますが、彼女たちの正装は十二単(じゅうにひとえ)という着物でした。この着物は下半身の部分がゆったりし、あぐらで座ることを前提にデザインされていました。また、平安時代の女性が正座を崩した「横座り」でくつろぐ姿も当時の絵で見られます。 武士や茶道での座り方 「あぐら」をかく武士 江戸時代までは、武士も「あぐら」か「立てひざ」、「そんきょ(しゃがむ姿勢)」の座り方で座っていました。正座で座ると、足がしびれますし、立ち上がるのに時間もかかるので、周囲の人から急に襲われた場合に対応できないという事情もありました。 千利休 また、今は茶道をするときは正座が原則ですが、昔は「あぐら」でよかったそうです。最も有名な茶人である千利休(せんのりきゅう、1522~1591年)もあぐらで茶道をしていたことが、当時の絵から分かります。 正座が広まり始めたのは17世紀 将軍が正座を導入 正座が広まっていくきっかけになったのは、江戸時代(1603~1868年)の初期に将軍(しょうぐん:全国の武士のトップ)が各地の大名(だいみょう:各地の武士のトップ)や家臣(かしん:身近な部下)に会う際に、相手に正座を義務付けたことでした。 将軍はKing of Samuraiなので、自分を神格化(しんかくか)したかったのかというと、そうでもないそうです。 相手に正座をさせると、相手が立ち上がって刀で斬(き)りかかるのが難しくなります。そこで、大名や家臣たちが将軍の前で座る際、将軍を攻撃する気持ちがないことや将軍への服従の気持ちを示す作法として正座が導入されたのです。 畳の普及で正座が広まる 将軍が大名や家臣に正座を義務付けたのをきっかけに、正座文化は武家社会で少しずつ広まっていきました。しかし、当時の住居は板間だけだったので、武士といえども、座り方の主流は引き続き立てひざやあぐらだったようです。武士の間で正座がもっと定着するのは、畳が登場した江戸時代中期以降でした。 畳の登場で武士の間に正座文化が定着すると、武士と交流がある商人たちも礼儀を示すために正座をするようになりました。 学校教育でさらに広まる そして、明治時代(1868~1912年)になると、正座は庶民にも広まります。これは、明治時代以降の政府が学校の「修身(しゅうしん)」という道徳教育の科目で、外国文化との違いを強調するために、日本人の正しい座り方として「正座」を教えたからです。「正座」という呼び方もこのときに生まれました。これによって、それまではあぐらでもよかった茶道の座り方も正座に統一されていきました。 同時に、それまではお金持ちの家にしかなかった畳が庶民の家にも普及し、正座をしやすい環境が生まれました。さらに、江戸時代に大流行した脚気(かっけ)という、足の痛みを伴う病気の治療法・予防法が明治時代に確立されました。脚気にかかると足が痛くて正座ができなかったのですが、脚気が激減したことも正座の普及を後押ししました。 正座が必要な場面と座り方 正座が必要な場面 現在、「正座」は茶道や華道、書道、落語、囲碁、将棋など日本文化の様々な場面で使われています。また、和室で目上の人と対面するときには、正座が礼儀正しい座り方ですし、日本で神様や仏様に祈る場合も正座をするのが一般的です。 正座の座り方 ①はじめに、床に両ひざをつきます。 ②お尻を落として、かかとの上に乗せます。 ③足の甲を床にぺたんとつけます。これで正座が完了です。 正座をしたら、両手はひざかももの上に置き、背筋を伸ばします。男性はひざとひざの間を少しだけ(こぶし一つ分)開き、女性はひざを閉じて座ることが多いです。 正座ができないとき 足をけがしている場合や高齢で正座が難しい場合などは、相手に事情を話して足を崩しましょう。 正座のよいところ 脳が活性化 勉強するときや気持ちを引き締めるときに正座をします。正座をして背筋も伸ばすと、脳が活性化され、集中力も高まります。 正座をすると足が短くなる? 「日本人は正座をするため外国人と比べて脚が短い」と考える人がいます。確かに、正座をすると下半身の血流が悪くなるため、脚が成長しにくくなるような気がします。 しかし、現在は、正座と脚の長さには関連性はないと言われています。日本人の脚が昔と比べて長くなったのは、正座をしなくなったためではなく、食生活の変化によるものと考えられています。 まとめ 正座は奈良時代に中国から伝わったと言われていますが、普段の生活の中では広まらず、「立てひざ」や「あぐら」の座り方が一般的でした。 正座が広まり始めたのは、江戸時代(1603~1868年)に将軍が大名や家臣に正座を義務付けてからでした。その後、畳の登場で武士の生活の中でも正座が広まりました。さらに、明治時代(1868~1912年)に畳が庶民にも普及したうえ、政府が学校教育で正座を推進したため、庶民の間でも正座が一気に広まりました。 日本の伝統的な座り方とされる「正座」ですが、世間一般に広まったのはそれほど昔ではなかったのですね。 ところで、あなたは正座ができますか?私は正座が苦手です。足が痛くなりますからね。
-
マンガ・読書感想文コンクール
“大同生命”という日本の保険会社をつくった「広岡浅子」の伝記マンガのベトナム語版が発刊されました。このマンガを読んで感じたこと、勉強になったことを、A4・1枚程度の感想文に書いて応募してください。入賞者には賞金が渡されるほか、応募者全員にデジタルギフト券が贈られます。 このコンクールには、ベトナムと日本から計655作品の応募がありました。厳正な審査の結果、12人の受賞者が選ばれ、2023年11月に表彰式を行いました。くわしくはこちらをお読みください。 主人公は女性の実業家 このマンガは広岡浅子(1849~1919年)という19世紀の日本の実業家の生涯を描いたものです。 浅子は今から174年前にとても裕福な商家に生まれ、今の銀行のような事業をしていた大きな商家に嫁ぎます。しかし、その直後に日本では革命が起きて経済環境が大きく変わり、浅子たちの商家も危機を迎えます。 そんな中、浅子は危機を救い、新たに銀行や石炭事業を起こしたり、日本で初めての女子大学を設立したり、生命保険会社を作ったりと、大活躍します。 「男が外で働き、女は家事と子育てをする」のが一般的だった時代に、女性の実業家として活躍した浅子。その人生をマンガで楽しく読み解きます。 大同生命について 左:広岡浅子さん、右:大同生命本社ビル 大同生命は、浅子たちが創立した120年の歴史を持つ日本の生命保険会社です。中小企業向けの保険サービスを提供するほか、中小企業が抱えるさまざまな課題の解決をサポートしています。 感想文コンクール 応募できる人 ベトナム語を母国語とする人(日本に住んでいるベトナム人もベトナムのベトナム人も応募できます) 課題図書 HIROOKA ASAKO小学館学習まんが人物館「広岡浅子」ベトナム語版※電子書籍(ベトナム語)はこちらから無料で読めます。 感想文の形式 ベトナム語か日本語のどちらかで書いてください。・ベトナム語:A4・1枚以内(500~700ワード)・日本語:A4・1枚以内(1000~1400字)フォーマット・ダウンロード※このフォーマットを使ってパソコンや携帯電話で入力しても、別の紙に手で書いてもどちらでも構いません。※フォーマットには感想文のサンプル(文章例)もついています。 応募方法 ・学校や日本語センター、組合などを通じて応募する場合は、先生に作品を渡してください。・個人で応募する場合は、下記にメールしてください。kokoro.vj.2022@gmail.com 応募しめきり 2023年6月30日 審査 ・大同生命の関係者やコンクール事務局(ベトナム人、日本人)が「作品の内容を的確にとらえているか」「自分の意見・感想をわかりやすく表現できているか」などを審査します。・表彰は2023年秋の予定です。 賞金・参加賞
-
ベトナムの常識・日本の非常識_35:「はい」は1回だけ
あなたが職場の上司から指示を受けたとき、ベトナムでは「はい、はい、はい」と返事をするのは一般的なことです。また、目上の人には車内で助手席に座ってもらうのが普通です。ところが、日本で同じことをすると……。 「はい」と3回連続で言うのは… 失礼です 上司から仕事の指示を受ける場面を想像してみてください。ベトナムでは、あなたが何か仕事の指示を受けたとき、「はい、はい、はい」または「OK、OK、OK」と答えるでしょう。これはベトナムではごく普通の返事で、指示をしっかり理解したという証しであり、礼儀正しい表現です。 しかし、日本で「はい」を2、3回続けて言うと、相手に良い感情を持たれません。上司やお客さんから指示や依頼、説明などを受けたときは、「はい」と1回だけ答えましょう。相手の顔を見て「はい」と1回だけ言えば、「(あなたの指示や説明を)理解しました」という意味になります。日本で仕事をするときは、このことを覚えておいてください。 話す相手が上司ではなくても、日本で「はい、はい、はい」と答えるのはよくありません。ある日本語の先生が教えてくれたことですが、日本人が「Yes」または「OK」と答えるとき、「はい」は1回だけです。「はい、はい」と答えると、「相手を軽く見ている」「聞き流している」「面倒くさそうにしている」などと誤解されてしまうそうです。「はい、はい、はい」も同じです。 ですから、上司とのやり取りだけではなく、アルバイト先の飲食店でお客さんの注文を受ける場面などでも、注文に対し「はい、はい」や「はい、はい、はい」と答えるのは失礼にあたります。お客さんが気分を損ねて帰ってしまうかもしれませんので、気をつけましょう。 食べるときはおわんを手で持つ ベトナムでは、おわんをテーブルに置いてスプーンで食べるのが一般的です。はしを使う場合も、おわんを置いて食べることについて何も気になりません。しかし、日本の文化では、おわんをテーブルに置いたまま、首を伸ばしておわんに口を近付けてはしやスプーンで食べると、「行儀が悪い」と思われてしまいます。日本では、おわんを片手で軽く持ち上げて口に近付けてから、はしやスプーンで食べる方が良いのです。ただし、大きなお皿については、片手で持ち上げる必要はなく、テーブルに置いたままで大丈夫です。 私は、日本の小学校に通う娘から、給食の時間に「3つのノー」運動があるということを聞くまでこのことを知りませんでした。「3つのノー」とは、①テーブルにこぼさない ②食べ物を残さない ③テーブルの上におわんを置いたまま食べない、の3つです。 日本人には、おわんやお茶わんをテーブルに置いたまま顔を近付けて食べることはペットのような食べ方と映るのかも知れません。さらに、おわんやお茶わんを手に持つことは、お米を作っている農家の人たちへの感謝の気持ちも表しているそうです。お子さんが日本の学校に通っていたり、職場で日本人の同僚と一緒に食事をしたりする場合は、このことに注意してください。 車に乗るとき、目上の人はどの席? 日本では車に乗る時、ベトナムとは異なる座席のマナーがあります。これは多くの国に共通することかもしれません。 ベトナムでは、運転席の隣の席(助手席)は家族や親しい友人のための優先席だと考えられています。例えば、私の家族が車に乗るとき、父はいつも運転する私の隣(助手席)に座り、後部座席には母と妻と子供たちが座ります。この配置の根拠は簡単で、父は家族で最年長なので一番良い席(広々とした視界がある助手席)に座るのです。これはおそらく多くのベトナム人家庭で共通のルールになっていると思われます。 しかし、日本のルールはこれとは違います。卒業式のとき、友人と車で日本語教師を迎えに行きました。私は友人(運転手)の隣(助手席)に座っていましたが、先生の家に到着すると、いったん車から降りて先生に助手席に座ってもらい、私は後部座席に回りました。それが先生への敬意だと考えたからです。 先生は少しとまどったような顔をしていましたが、何も言いませんでした。行事が終わった後、先生から興味深い文化の違いを聞きました。日本では、目上の人やお客さんを後部座席に座らせることが多いそうです。例えば、会社の上司や先輩とあなたがタクシーで移動する場合、上司と先輩に後部座席に座ってもらい、あなたは助手席に座るのがマナーなのだそうです。日本で仕事をする人はこのことにも気を付けてください。
-
新入社員向けの基本ビジネスマナー_01
日本で留学生の就職活動をサポートしていると、「入社するまでに、どのようなことを勉強しておけばよいですか?」とよく聞かれます。その質問への私たちの答えは「ビジネスマナーの勉強」です。基本的なビジネスマナーを入社前に知っておくと、他の新入社員より一歩先からスタートできます。そこで、新入社員向けのビジネスマナーについて2回に分けて紹介します。今回は「電話の受け方」や「お茶の出し方」、そして日本でとても重視されている「ホウ・レン・ソウ」についてです。 電話は3コールまでに出る 会社にかかってきた電話の相手は、電話に出てみないと分かりません。そのため、「電話に出るときは自分が会社を代表する立場なのだ」という自覚を常に持つことが大切です。 まず、電話がかかってきたとき、相手を待たせるのはよくありませんので、できるだけ早く電話に出てください。人間は10秒以上待たされることを不愉快に感じてしまう傾向があります。電話の場合、呼び出し音を何回も聞くと、相手に対して悪い印象を持ちやすくなります。一般的に1コールが3秒、3コールで約10秒なので、3コール以内を目標に受話器を取るように心がけましょう。 一番良くないのは「だれかほかの人が受話器を取るだろう」と考えて人任せにすることです。多くの職場では、入社歴の浅い人が先に電話に出ることが暗黙の了解になっています。手が離せない仕事をしている場合を除いて、入社して1、2年の間は「自分が一番先に受話器を取ろう」というぐらいの気持ちを持ちましょう。 ただ、1コールもたたず、呼び出し音が鳴った瞬間に電話を取られると少し驚いてしまいます。そのため、1コールか2コール鳴った後に電話に出ることが望ましいでしょう。 電話の受け方 会社にかかってきた電話に対しては、基本的には以下のように対応します。 ①私 : はい、〇〇(自分の会社名)でございます。お電話ありがとうございます。 ②相手: 私、〇〇(会社名)の△△と申します。お世話になっております。 ③私 : 〇〇の△△様でいらっしゃいますね。お世話になっております。 ④相手: 様はいらっしゃいますか? 相手の名前を確認 もし、相手の会社名や名前を聞き取れなかった場合は、聞き返して相手の名前を確実に把握しましょう。「恐れ入りますが、もう一度会社名とお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」など聞いてください。すると、相手は社名と自分の名前をもう一度言いますので、あなたは担当者に「〇〇社の△△様からお電話です」と伝えることができます。 相手が自分の名前を名乗らずにだれかを指名した場合も、「恐れ入りますが、お宅様(おたくさま)のお名前を教えて頂けますか?」と聞いてください。 自分の名前を名乗る 相手が電話の相手を指名せず、あなたでも対応できる内容だった場合、③の「いつもお世話になっております」の前に「私は☆☆(自分の名前)と申します」と答えましょう。これは、相手が名前を名乗ったことへの返礼の意味にもなります。自分が相手に対応する場合、基本的に自分の名前を名乗るようにしましょう。 受話器を取るのが遅れた場合 電話に出るまで長くかかった場合、「お電話ありがとうございます」の前に「大変お待たせしました」などと言うのがよいでしょう。 お茶の出し方 通常、お客様が来社したら、お茶を出します。コーヒーを出す会社もあります。基本的な作法は次の通りです。 ①応接室のドアを3回ノックします。「失礼します」と伝えてから入室します。 ②サイドテーブルがある場合、お盆をサイドテーブルに置いてお茶を出す準備をします。サイドテーブルがない場合、お盆を片手で持ちながら、もう片方の手で作業をします。 ③茶碗と受け皿を両手で持って、「上座」に座っている役職の高いお客様から順に「どうぞ」、「失礼します」などと声をかけながらお茶を出します。 お茶を出す席順は入り口から一番遠い上座から順に、下座の人が最後になるように出すとよいでしょう。また、先にお客様にお茶を出し終えてから、自分の会社の人に出すようにしてください。 上座と下座の順については、この記事を参考にしてください。 [iconpress id="local_1803" title="external link" style="color:#525252; font-size:22px;" ] 目上の人との食事会でのマナー ④お茶を出し終えたら、ドアの前でお客様に向かって「失礼しました」とおじぎをしてから退室します。 ⑤応接室の外に出たら、ドアを開けたままお客様に向かってもう一度おじぎをし、頭を下げたままドアを閉めます。 「ホウ・レン・ソウ」は欠かせない 日本の会社で働く際によく耳にする言葉が「ホウ・レン・ソウ」です。これは次の三つの言葉の頭文字を合わせた言葉です。 ・ホウ=報告(ほうこく)・レン=連絡(れんらく)・ソウ=相談(そうだん) 報告・連絡・相談は日々の生活においても基本的なことです。仕事では、いつ・どうやって「ホウ・レン・ソウ」を行うかが重要となります。 ❌ 仕事の進捗状況を報告しない。 上司や先輩から仕事を任されたときは、その人に仕事の進捗を必ずこまめに「報告」してください。上司や先輩があなたに助言やサポートをしたり、職場での仕事の割り振りを調整したり、次の仕事を適切なタイミングで指示したりするには、あなたの仕事の状況を把握することが不可欠です。 そのためには、あなたが自分の仕事の状況を上司・先輩にこまめに報告しなければなりません。日本の会社ではこまめな「報告」がとても重視されています。 ❌ リマインドしない。 相手がとても忙しいとき、あなたの報告・連絡・相談・依頼などにすぐに対応できないこともあります。その場合、タイミングをみて、遠慮せずに自分からもう一度相手に「ホウ・レン・ソウ」を行って対応を促してください。 ❌ 自分の判断だけで行動する。 新入社員の場合、分からないことがたくさんあるはずです。自分の仕事に関してわからないことが出たり判断に迷ったりした場合は、上司や先輩に遠慮なく尋ねてください。 まとめ 今回は、新入社員が知っておくべき基本的なビジネスマナーのうち「電話対応」や「お茶・コーヒーの出し方」、「ホウ・レン・ソウ」について説明しました。 ・電話には3コールまでに出る。 ・電話対応の際、必要に応じて自分の名前を名乗る。 ・電話対応の際、必要に応じて相手の社名や名前を聞く。 ・お茶の出し方 ・仕事の進捗について上司や先輩にこまめに報告する。 ・上司や先輩が忙しくてすぐに対応できないときは、同じ内容の「ホウ・レン・ソウ」を繰り返す。 ・分からないことがあるときや迷ったときは上司・先輩に相談する。 このような基本的なビジネスマナーを入社後1カ月ぐらいでマスターするように意識して取り組んでみてください。また、こうした事柄を入社前に頭に入れておき、実際に働き始めてからもときどき読み返すことで、実体験と結びついた習慣になっていくことでしょう。 ビジネスマナーを身につけて、日本の会社で活躍してくださいね。
人気記事ランキング
-
田んぼのタニシは食べてはいけません 27700 views
-
オンライン無料日本語教室 23081 views
-
日本での「遅刻」は何分遅れから? 18030 views
-
Vol. 60 技能実習で本当はいくら貯金できるの? 15957 views
-
Vol. 42 失踪中の不法就労の様子とは 13025 views
Platinum Sponsor
Bronze Sponsors
- 弁護士法人Global HR Strategy
- エール学園
後援
- 在ベトナム日本国大使館
- 国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
- JNTOハノイ事務所
- 関西経済連合会
- 一般社団法人 国際人流振興協会
- 公益社団法人 ベトナム協会
- NPO法人 日越ともいき支援会