文化

寺と神社の違い

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2022年12月12日

日本には「寺」や「神社」がたくさんあり、観光スポットになっているところも多いです。このため、観光などで何気なく訪れる寺や神社ですが、寺と神社の違いが私たち外国人にはよくわかりません。そこで、「宗教の違い」や「施設の入口の違い」、「社寺に関する日本の習慣」など、寺と神社の違いや特徴をわかりやすく解説します。

宗教の違い

寺と神社とでは、まず宗教が違います。寺は仏教の礼拝施設で、神社は神道(しんとう)の礼拝施設です。

・寺=仏教
・神社=神道

金閣寺(京都市)

ご存じのように、仏教は世界中に多くの信者をもつ宗教です。インドで生まれ、今の中国を経由してアジア各地に広まり、根付きました。そして、ブッダ(釈迦:しゃか)をはじめ「仏(ほとけ)」を信仰の対象としています。

神社

熱田神宮(名古屋市)

神道は日本特有の信仰で、自然、人、土地など、さまざまなものを神様として崇拝(すうはい)します。自然界の全てのものに神様が宿ると考え、それを「八百万(やおよろず)の神」と言います。「八百万」とは「とてもたくさんの」という意味です。

神社の名前

ところで、神社の名前には「〇〇神社」や「〇〇神宮」「〇〇宮」「〇〇大社」などさまざまな種類があります。

これらの中で、菅原道真(すがわのみちざね)という9世紀の学者をまつる神社は「天満宮(てんまんぐう)」、江戸時代を築いた武将・徳川家康をまつる神社は「東照宮(とうしょうぐう)」と呼ばれ、各地に「天満宮」や「東照宮」があります。

施設の入口の違い

寺と神社では、境内(けいだい)や参道の入口にある建造物の名称が異なります。

・寺の入口=山門(さんもん、やまもん)、三門(さんもん)
・神社の入口=鳥居(とりい)

東大寺の山門(奈良県)

「山門」は寺院の正式な入口で、山門をくぐると仏の世界に入ると言われています。「三門」と書く場合もあります。

鶴岡八幡宮の鳥居(神奈川県)

神社の境内や参道の入口にはこのような形の「鳥居(とりい)」という建造物があります。鳥居をくぐると神聖な世界に入るとされています。

参拝の仕方の違い

合掌(がっしょう)

寺と神社の参拝方法で一番大きな違いは手をたたくかたたかないかです。

寺での参拝手順

寺で参拝するときは、手をたたかないようにしてください。

①さい銭をさい銭箱に入れる(入れない場合もあります)。

②わに口(綱を揺らして鳴らす鐘)があれば鳴らす。次に、手をたたかず、胸の前で合掌(手を合わせること)して祈る。

③最後に1礼してから退く。

神社での参拝手順

神社では「2礼→2拍手→1礼」です。

①軽くおじぎをしてから、さい銭をさい銭箱に入れる(入れない場合もあります)。

②鈴がある場合は鳴らす。次に、深く2礼する(=おじぎを2回する)。

③2回手をたたき、手を合わせたままお祈りする(=願い事やあいさつ)。

④最後に深く1礼してから退く。

初詣などの習慣

七五三のお参り

年中行事の中の宗教

「日本人は宗教心が薄い」と言われることがよくあります。仏教と神道は日本の2大宗教と言われていますが、寺や神社にひんぱんに通う人はそれほど多くはありません。

しかし、多くの日本人が例えば次のような機会に神社や寺を訪れます。このうち七五三は神社だけです。

・毎年1月の初詣(はつもうで)
七五三(しちごさん):幼児のすこやかな成長を祈る儀式
・入学試験などの合格祈願
・恋愛や結婚に関する祈願

初詣(はつもうで)

年が明けてから初めて神社や寺などに参拝することを「初詣」と言います。過ぎた一年を無事に過ごせたことに感謝し、新しい一年も健康で平穏(へいおん)に暮らせるよう、神仏にあいさつとお願いをする習慣です。そのときに、商売や受験、恋愛などに関するお願いをすることもあります。

ところで、多くの日本人には、初詣のために寺を訪れるか神社を訪れるかのこだわりがありません。同じ人が去年の正月は神社に初詣に行き、今年は寺に初詣に行くこともあります。普段も、神社に行った日に寺にもお参りすることなどがしばしばあります。

特定の願い事に強い神社

特定分野の願い事に強いと言われる神社や寺があります。そのような神社の例をいくつか紹介します。

学問の神様

9世紀の学者で政治家だった菅原道真(すがわらのみちざね)をまつる神社は「天満宮(てんまんぐう)」や「天神(てんじん)」、「菅原神社」などと呼ばれています。頭脳明晰(ずのう・めいせき)だった道真にあやかって、これらの神社にはたくさんの受験生や親たちが合格祈願に訪れます。中でも福岡県の太宰府(だざいふ)天満宮は特に有名です。

external link 太宰府天満宮(福岡県)

external link 北野天満宮(京都府)

external link 大阪天満宮(大阪府)

縁結び・恋愛の神様

縁結びで有名な神社もたくさんあります。その中の代表的な神社を紹介します。

external link 東京大神宮(東京都)

external link 川越氷川神社(埼玉県)

external link 城山八幡宮(愛知県)

external link 露天神社(通称・お初天神、大阪府)

external link 生田神社(兵庫県)

external link 出雲大社(島根県)

引越しの神様

external link 方違神社(大阪府)

external link 猿田彦神社(三重県)

「お」を付けるかどうかの違い

日本人の多くは話し言葉で寺のことを「お寺」と呼びます。この場合の「お」は寺に対する崇敬(すうけい)の念を表し、同時にていねいな表現にもなっています。

しかし、神社のことを「お神社」と呼ぶ人はまずいません。これはなぜでしょうか?

それは、日本人が寺よりも神社を下に見ているからではなく、言葉の慣用(かんよう)の問題です。いつの間にか「お寺」と呼ぶ慣習が広まっていたのです。それは、日本人にとって「寺」よりも「お寺」の方が発音や聞き取りがしやすいことも一因かもしれません。

まとめ

この記事では、寺と神社の違いについて説明しました。

  • 宗教の違い:寺は仏教、神社は神道
  • 入口の違い:寺は山門または三門。神社は鳥居。
  • 参拝の仕方:寺では手をたたかない。神社では2礼→2拍手→1礼。
  • 初詣や七五三など年中行事の中に根付く宗教
  • 「お寺」と言うが、「お神社」とは言わない。

このような違いや特徴を頭に入れて寺や神社を訪れると、その寺や神社をより深く理解できるかも知れませんね。日本の寺や神社には美しい自然や建築がたくさんありますので、日本にいる間に存分に楽しんでくださいね。