体験談(留学・高度)

sumb
By KOKORO(毎日新聞社+VAIJ主催、在ベトナム日本国大使館など後援)

今回の先輩

LUONG THI TUYET(ルオン・ティ・トゥエト)さん

1993年生まれ、ハイフォン市出身
2011年 6月 QUANG TRUNG 高校卒業
2011年 9月 ハノイ国家大学・人文社会学科大学 国際学学部 入学
2015年 6月 ハノイ国家大学・人文社会学科大学 国際学学部 卒業
2016年 4月 兵庫県の専門学校(日本語学科) 入学
2017年 10月 エール学園デュアルビジネス学科 入学
2018年 3月 シンコー株式会社(正社員) 入社

はじめに

私はハノイの大学を卒業後、日本の専門学校で日本語を学び、日本で就職しました。職場の上司や同僚に恵まれ、やりがいのある仕事をし、充実した社会人生活を歩み始めています。日本に出稼ぎ目的で留学する人もいますが、なるべく借金をせずに訪日し、しっかり勉強してよい就職先を見つけましょう。その方が充実した社会人生活を送れますし、お金も長期にわたって稼げます。今回は、写真を中心に私の日本での仕事や旅行、ボランティアの様子を紹介します。

日本の大都会には大きな書店がたくさん【大阪市内で2019年9月】

専門学校を経て日本で就職

私はハノイ国家大学時代、学外の日本語教室で4カ月間勉強し、日本語能力試験(JLPT)のN4を取得してから2016年春に日本に来ました。ハノイでは、授業料が安い「SOFL」という教室に週2、3回通いました。授業料は4カ月で400万ドンでした。

訪日後、兵庫県内の専門学校(日本語学科)で2年間学ぶ予定でしたが、1年半で退学し、大阪市の専門学校「エール学園」に移りました。私は最初の学校で成績が一番だったこともあり、ある人が「あなたはもっと高いレベルの授業を受けた方がよい」と言ってエール学園を紹介してくれたのです。

エール学園の教育には、地元企業でのインターンが含まれます。私は小さな旅行会社で2カ月間(週3回)、インターン(飛行機の予約や電話対応)をしました。同社は従業員を募集していませんでしたが、社長がいくつかの企業を紹介してくれました。その中の一つ「シンコー株式会社」(東大阪市)で2018年3月から働き始め、アルバイトや契約社員を経て同年10月に正社員になりました。

訪日後間もないころ、ショッピングモール前で同郷の親友と【兵庫県で2016年4月】

日本での暮らし(学生時代)

私の兵庫県の専門学校時代の暮らしについて紹介します。

・奨学金…兵庫県の奨学金を毎月3万円もらいました。生徒が書いた申請書と作文をもとに学校が県に申請します。この奨学金を受給できたのは同期の中で私一人でした。

・寮…日本語学校が借りているマンションの部屋(2DK、電化製品や家具付き)にベトナム人4人で住みました。寝室1室を2人で使い、居間が別にありました。家賃は1人15,000円(約3,170,000ドン)で、光熱費は別でした。

・アルバイト…最初はスーパーマーケットで、棚に商品を補充する「荷出し」を担当しました。その後、回転寿司店で10カ月間働きました。ここでは、最初は厨房の担当で、日本語が上達してからはホール(接客など)に移りました。

大阪では、コンビニエンスストアで毎週2、3回(17時~22時)働きました。勉強に集中するためにアルバイトを最小限にし、友人からお金を借りて授業料や生活費を支払いました。

一緒に訪日した同郷の親友2人と学校の寮の前で【兵庫県で2016年5月】

【電動自転車】

兵庫県にいたころは、学校が終わってからアルバイトに行くために自転車が頼りでした。電車やバスが不便だったからです。最初は、自転車で40分かけてアルバイトに通いましたが、疲れるし時間もかかるので、お金を貯めて半年後に電動自転車を買いました。約10万円(約21,125,000ドン)もしましたが、田舎で暮らす外国人留学生の大半は電動自転車を持っていると思います。大阪に行ってからは電車がとても便利なので、電動自転車は要らなくなりました。

ただし、日本の電動自転車は「電動アシスト自転車」であり、「モペット」とは違います。モペットに乗る際、ベトナムでは免許が不要ですが、日本では運転免許証が必要ですので、注意してください。

[iconpress id="local_1803" title="external link" style="color:#525252; font-size:22px;" ] 在ベトナム日本国大使館(モペットに関する注意)

お金を稼ぐのは就職後で十分

私は留学生の時はほとんど貯金や仕送りをしませんでしたが、日本で就職したので、これから何年間も両親にお金を送ることができます。親に送金するためにアルバイトばかりする留学生もいますが、留学中に勉強しないと、よい就職先はありません。アルバイトをほどほどにしてしっかりと勉強をし、日本やベトナムでよい企業に就職する方が、仕事のやりがいもあり、お金も長期に渡って稼ぐことができます。

[iconpress id="local_120" title="book" style="color:#525252; font-size:25px;" ]私の家計簿(1カ月の平均)※就職後

※100円=21,125 VND(2019年12月1日現在)

収入(合計約170,000円)

給料 170,000円
※税金、社会保険などを引いた後の手取り額
※これとは別に年に2回、ボーナスも支給される

支出(合計 約123,000円)

家賃(寮費) 48,000円
※1人暮らし
※ワンルーム、トイレ、シャワー&バス
※水道代込み
光熱費  6,000円
※電気・ガスの合計
携帯電話  3,000円
※Biglobeモバイル(ネット接続費用込み)
食費  30,000円
※主に自炊
雑費・交通費 30,000円
※ハイキング、カラオケ、町歩きなど主に週末の遊興費
水泳教室 6,500円

差額(貯金)平均50,000円

※余ったお金は毎月ベトナムの両親に送金
※ボーナスなどで貯めたお金は、テトに一時帰国したり、学生時代に友人に借りたお金を返したり、ボランティアで遠方に行く費用などに使う。

仕事を楽しむ

「シンコー」は壁紙やカーテン、カーペットなどインテリア資材の販売会社です。海外とも取引があり、私は、商品の輸出手続き(書類作成など)や海外代理店との連絡(メール、FAX、電話)を担当し、1年に1回、海外出張もあります。これまでの出張先は香港・台湾・ベトナムで、ベトナム出張の際は、ハイフォンの実家に少しだけ立ち寄り、両親に顔を見せることができました。

[iconpress id="local_1803" title="external link" style="color:#525252; font-size:22px;" ] シンコー

上司や台湾人の同期と香港・台湾・ベトナム(ハノイ)に出張。販売代理店への挨拶や市場調査、営業のためで、ハノイでは通訳も担当しました。夜は町歩きを少し楽しみました。【いずれも香港で2018年10月】

日本を楽しむ(ハイキング)

私はベトナムではハイキングに行きませんでしたが、日本にはハイキングコースがたくさんあって、自然と触れ合えます。私は就職後、勤務先の上司や同僚とよく週末にハイキングに行っています。

勤務先の上司や同期生と計4人で大阪府の「府民の森 ほしだ園地」へ【2018年4月】

勤務先の上司や同期生と計4人で葛城山(奈良県・大阪府)へ。つつじの花がきれいでした。【2018年5月】

勤務先の台湾人の同期生と2人で兵庫県朝来市の竹田城跡へ【2018年12月】

[video width="1540" height="1180" mp4="https://www.kokoro-vj.org/wp-content/uploads/2019/12/181223 竹田城趾①.mp4"][/video]

日本を楽しむ(ボランティア)

就職後、ボランティアで交流活動にも参加しています。日本では、4月末から5月上旬にかけて1週間前後の連休があり、「ゴールデン・ウイーク(GW)」と呼ばれています。私は2019年のGWに日本人も知らない鹿児島県の離島「宝島」に6泊し、農業の手伝いをしました。

[show_more more=▼続きを読む less=▲閉じる align="center" ]

このボランティアのことはインターネットで知りました。大阪から鹿児島へは飛行機で約75分。全国各地から私を含めて7人のボランティア(学生4人、社会人3人)が自費で鹿児島港に集合し、船に乗ること約13時間。私たちは宝島の港で島の人と合流し、農家に泊まって、らっきょうの収穫や田植え、工芸品作りなどを手伝いました。

宝島の海は見たこともないぐらいきれいで、底まで透けて見えました。また、夜には空いっぱいに星が散らばり、生まれて初めて流れ星も見ました。GWは交通費が高いので大きな出費になりましたが、宝島での経験は人生の宝になりました。

[/show_more]

また、2018年6月には、兵庫県の淡路市で日本の小学生と外国人留学生がふれ合う1泊2日の交流会に参加しました。会話は英語か日本語で、交通費は自己負担、宿泊費は主催者負担でした。

人生の宝になった鹿児島県・宝島でのボランティア滞在【2019年5月】

淡路島で小学生と外国人留学生が触れあうイベントに参加【2018年6月】

日本を楽しむ(同郷ベトナム人との絆)

訪日の約半年前、ハイフォンの高校で同級生だった親友2人に日本に行くことを打ち明けると、数週間後、2人も「一緒に行く」と言いだし、同じ専門学校に留学することになりました。また、ベトナムで専門学校を卒業後、よい仕事が見つからなかった私のいとこ(1歳下の男性)も着いてきました。

訪日後、親友2人とは寮の部屋も一緒で、いとこも含めて4人でよく一緒に遊びに行きました。その後、大阪と兵庫に分かれましたが、今でも時々集まって観光や食事などを楽しんでいます。

一緒に訪日した同郷の4人でテトのお祝い【大阪のベトナム料理店で2018年2月】

一緒に訪日した4人で秋の京都を観光【いずれも京都市内で2016年11月】

同郷の4人を含むベトナム人5人で奈良公園を観光【2019年3月】

おわりに

私の日本での仕事や旅行、ボランティアの様子を紹介しました。私は留学中、アルバイトを最小限に抑えて勉強に時間をとり、就職先探しのインターンやアルバイトを経て日本の会社に就職しました。よい会社を紹介され、今、素敵な上司や同僚と一緒に仕事をしています。

皆さんも、せっかく留学するなら、きちんと勉強してよい就職につなげましょう。就職後のやりがいが大事ですし、お金も就職してからの方が長く稼げます。あなたの日本留学や就職が成功することを願います。

勤務先の専務(左)は心の温かい素敵な上司です。
奥さん(右)のお誕生日の記念に私がお二人の似顔絵を描きました。