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ベトナムの常識・日本の非常識_23:隣人の家に勝手に上がらない

常識非常識23-2
2021年11月09日

 

日本では、いくら親しい間柄の隣人でもさまざまな節度を守る必要があります。隣人と外で立ち話はするのに、自宅にはなかなか入れない▽玄関を閉め、窓にはカーテンを閉めて自宅内が外から見えないようにする▽“騒音”に敏感――など、日本の近所付き合いの文化を一緒に見ていきましょう。

隣人宅に入るのはハードルが高い

「遠くの親戚より近くの他人」はベトナムで古くから語り継がれてきた言い伝えで、ベトナム人にとって隣人は特別に親しい間柄の人たちです。私の家はハノイの高層アパート(日本で言う「マンション」)にあります。同じ階に10軒あり、ほとんどの家はほぼ終日、玄関のドアが開いていて、大人も子どももお互いの家に自然に出入りします。唐辛子を求めて隣家を訪ねたり1ケースの卵をあげるために出入りしたりすることもあり、いつも活気があってフレンドリーな雰囲気です。

立ち話はよく見かけるが…

しかし、こうした文化は日本人から見るとちょっと奇妙に映り、人によっては厄介だと感じる場合もあります。多くの日本人、特に都会に住む日本人にとって、彼らの家は家族だけが出入りする場所なのです。アパートの隣人同士がいくら親しくても、ベトナムのようにお互いの家に出入りすることはあまりありません。日本では、主婦が玄関前で何時間も立っておしゃべりすることはありますが、お互いの家に入ることはまた一つ上の領域なのです。私の姉は日本に30年以上住んでいて近所の方々ととても親しくしていますが、彼女たちの自宅に招かれたことはたった1度しかありません。

自宅の中をあまり見せない

日本の家の様子

先ほどの話と関連しますが、私のアパートでは玄関ドアや窓を開け放っていることが多く、カーテンも日光や新鮮な空気を取り込むためにいつも開けています。近所の人に自宅内を見せるためそうする人もいます。

しかし、多くの日本の家では常にカーテンを閉め、窓もあまり開けたままにしていません。昼間は、日光を取り込むために厚手のカーテンは開けていますが、室内が見えないようにレースのカーテンなどを閉めているケースが大半です。そして、玄関が常に閉まっているのは普通です。日本の住宅街を歩いていると、そこに人が住んでいるのになぜこんなに静かなのか、不思議に思えます。ベトナム人の皆さんはこれに驚かないでくださいね。

日本人は自分の家の中を人に見せたいと思わないのです。ですから、たとえ開いている窓のそばを通りがかったとしても、室内をじろじろ見ないでくださいね。カーテンを閉められてしまうケースが多いでしょうから。しかし、これが日本人の文化であり、日本人らしさであって、決して「冷たい」わけでも「よそよそしい」わけでもないのです。

廊下での“騒音”

日本のアパート(マンション)の静かな廊下

引き続き近所付き合いの話です。アパート(マンション)の廊下を巡る生活文化についても、日本とベトナムで大きな違いがあります。

ハノイの私のアパートの玄関前の廊下では、毎日午後になると、近所の子どもたちが数人、サッカーをしたりおもちゃで遊んだり、叫んだりしています。その子どもたちが遊ぶ様子を見ているおばあちゃんが常に2、3人いる……。そういったシーンはまさに“ベトナム”です。あるおばあちゃんは「新型コロナで自粛中は周辺が静か過ぎて寂しかった。でも、家で遊ぶ子どもたちの声を聞くと、前向きなエネルギーをもらえたわ」と話していました。

以前、日本からの帰国子女である私の娘が通うハノイ日本人学校の女性教師(日本人)は「自宅アパートの廊下がうるさすぎる」と生徒たちに不平を言っていました。彼女はアパートの管理組合に繰り返し相談したのですが、状況は変わりませんでした。子どもたちが遊ぶ声が程度を過ぎると、日本人にとっては“騒音”となり、迷惑に感じてしまうのです。これは、日本人が子どもを嫌いなわけではなく、騒ぐ声の程度によるようです。

日本ではアパート(マンション)の管理規約に騒音に関する項目が盛り込まれているケースも多いです。「子どもが廊下で遊んだり騒いだりすることを禁止する」とまで書かれているかどうかは別にして、廊下や玄関ホールなど共用スペースは基本的に静かです。それは、「騒音を出さない」というのが日本人社会での暗黙のルールだからです。

あなたが部屋で多人数の宴会やカラオケで大きな音を出し続けると、「近所迷惑」となり、通報されて警察がやってくることもあります。日本では、トラブルを避けるためにこのルールをよく覚えておいてください。