文化

ベトナムの常識・日本の非常識_34:日本の男性の子育て

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2023年01月22日

「育児や夕食のしたくは主に女性の仕事」――そのような昔の日本の価値観が最近は薄れ、男性が育児に積極的に参加することが推奨(すいしょう)される機運が広がっています。このような機運の中、積極的に育児に参加する男性はある呼び方で呼ばれています。その呼称とは?

「イクメン」って何?

ベトナムでは父親が子どもたちを学校に連れて行き、休日や放課後は一緒に公園で遊ぶのは、ごく普通のことです。 しかし、日本ではこのような父親は非常に興味深い呼称で呼ばれています。それは「イクメン」という呼び方です。

ベトナムでは、朝早くに子どもを学校に送り、午後は渋滞の中をバイクで迎えに行く父親は、珍しくありません。私もその1人です。午後に自由時間を取りやすいので、子どもの送り迎えや夕食作り、入浴の準備は私の日課です。ベトナムにはこのような男性がたくさんいます。だから、特別な呼び方はありません。

イクメンとは育児の「育(いく)」と「男性」を英語で言い換えた「メン」がくっついた言葉です。ハンサムな男性のことを言う「イケメン」とは違います。「イケメン」の「メン」には、顔を意味する「面(めん)」と男性を意味する「メン」の2つの意味が含まれ、「いけてる面(格好いい顔)の男性」のことを言います。一方、「イクメン」は「育児に積極的に参加する男性」のことを指します。

では、なぜこのような言葉があるのでしょう? それは、日本社会の歴史をひもとくと分かります。日本が高度経済成長(1955~73年)を続けていた時代、男性は「一家の大黒柱」としてがむしゃらに働き、仕事を最優先していました。その後も、多くの日本の男性にとって長時間労働や休日出勤は当たり前でした。2018 年に英国の新聞に掲載された社会学的研究によると、1980 年代の日本の父親が子どもと接触する時間は1 日平均 40 分未満だったそうです。

さらに古い時代には、「地震、雷、火事、おやじ」という言葉がありました。怖いものを並べた言葉で、父親が家庭の中で「えらい存在」だったことがうかがえます。

しかし、最近では、男性も育児休暇を取ることができるなど、日本社会は男性の育児参加を推奨(すいしょう)するようになりました。平日に子どもを抱いた男性を見かけることも増えており、公園などでほほえましい姿に出会うことが多くなってきました。

つめを伸ばす?

1970年代、80年代に生まれたベトナム人男性には、手の親指や小指のつめを長く伸ばしている人が珍しくありません。私が小・中学生のころ、学校のクラスで「だれのつめが長くて硬いか」を競う傾向さえありました。今でもつめを伸ばしている友人がたくさんいます。

しかし、日本の男性の大半は手のつめをきれいに短く切っており、伸ばしている人はほとんど見かけません。一方、女性たちの多くはつめをほどよく伸ばし、マニキュアやジェルネイルなどでつめのおしゃれをしています。

京都の私立大学の学生でラーメン店でアルバイトをしている友人がいます。彼はステッカーをうまくはがすために親指のつめを伸ばしていました。しかし、アルバイト初日に店主からつめを切るように言われました。彼の仕事は注文を取ることと食器を片付けて洗うことなので、つめが長くても仕事はできるのですが、店主は長いつめを嫌いました。飲食店では、店員がつめを伸ばしていると、不衛生だと思われるからだそうです。

男性が日本でつめを伸ばす場合、周囲のこのような受け止め方に留意することが必要です。

ベトナムと日本のサッカーの違い

ベトナムはサッカーが大好きな国です。私も学生時代に公園や野原に行って“サッカー仲間”とボールを追いかけたものでした。高校生になると、グラウンドを借りていろんなチームと一緒に練習をしたり試合をしたりしました。これはとても楽しい思い出です。

日本人もサッカーが好きです。2022年には、ワールドカップで強豪国のドイツやスペインを破り、4チームで行う予選リーグを1位で勝ち上がってベスト16に入りました。

日本代表が強くなったのには、理由があります。高校生の場合、日本人は友人を集めて練習するのではなく、学校の部活動で本格的に練習をするケースが大半です。強豪校では、優秀な監督やコーチを雇い、大きな大会で良い成績を収めるために、毎日遅くまで練習をします。高校サッカーで最もメジャーな大会は「全国高校サッカー選手権大会」で、毎年秋から各県(東京だけ2地区に分割)で予選があり、各県の代表48校が年末から年始にかけて戦います。2021~2022年に開かれた同大会は第100回の記念大会でした。

また、大学にも「全日本大学サッカー選手権大会」があり、強豪チームは毎日、組織的に長時間練習をしています。こうしたチームの主力選手たちがプロチームに入り、リーグ戦を戦います。

私が福岡県に3カ月間住んだ際、学生チームがサッカーの練習をしているのを見学しました。練習の雰囲気やトレーニングメニュー、選手同士のかけ声はプロに劣りません。小さなクラブチームでさえも、外部のコーチを雇うこともあります。このように、日本のサッカー界では、すそ野のレベルが上がっており、そこから選び抜かれた選手たちをさらに鍛えることで、欧州のクラブチームにも入れるような選手が育つのです。

こうした選手たちが欧州で経験を積み、ナショナルチームとしても国際試合を重ねることによって、ワールドカップで強豪国に負けないようなチーム力を身に付けたのでしょう。