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仕事で使う日本語

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2021年08月03日

 【Collaboration blog】

 
日本で仕事を始めると、教科書で学んできた言葉とは異なる日本語の使い方があることに気づきます。

私が初めに驚いたのは「あいさつの言葉」でした。ある日、朝からアルバイト先で働いていたときのこと。午後に日本人の同僚がオフィスに入るなり、「おはようございます!」とあいさつをしました。午後なのに「おはよう」? はたして「おはようございます」を使ってもよい場面なのか少し疑問に感じました。日本人が使っているので使えるのだろうとは思うものの、由来や正しい使い方を知りたかったため、恐る恐る周りに聞いてみました。

1. 社内でのあいさつ言葉

午後でも「おはようございます」

ご存知のように「おはようございます」は朝のあいさつの言葉です。しかし、一部の職場では、午後初めて会った相手に「おはようございます」と声をかける場合もあります。特に飲食店や芸能関係など深夜にも働く職場でこのような慣習があります。

また、若者や学生の間でも午後に初めて会った人に「おはよう」と声をかけるケースが広まっています。これは、飲食店などで働く学生がアルバイト先で身に付けたあいさつの慣習を大学や専門学校に持ち込んだのが広まったと言われています。

通常、午後のあいさつでは「こんにちは」と言いますが、親しい相手や毎日会う人に対して「こんにちは」と言うと他人行儀に聞こえるため、使いにくいです。そこで、代わりに使われる一般的な言葉が「お疲れさま」ですが、一部の職場などでは「おはよう(ございます)」も使われています。友だちには「おはよう」でかまいませんが、目上の人やお客さんに対しては「おはようございます」とていねいに言わなければいけません。

ただ、多くの会社では、朝は「おはようございます」で、午後初めて会う場合は「お疲れさまです」を使います。その職場でのあいさつの慣習をよく観察しましょう。

万能のあいさつ「お疲れさまです」

人間関係を円滑にする「お疲れさまです(でした)」という万能の言葉があります。「ありがとうございます」「すみません」などと並び、日本の職場で良い人間関係を作るために大切な言葉の一つです。

職場で先に帰る人にかける言葉は「お疲れさまでした」。自分が先に帰るときは「お疲れさまでした」か「お先に失礼します」と言います。

「お疲れさまです」は、社外から職場に帰ってきた先輩・同僚に対しても使えますし、午後に初めて会った人へのあいさつとしても使えます。自分が午前中は社外で仕事をし、午後に初めて出社した場合、職場の皆さんへのあいさつは「お疲れさまです」。そのときに自分が受ける返事も「お疲れさまです」となります。親しい同僚や後輩には「お疲れさま」と省略しても大丈夫です。

「ご苦労さま」は目上には使わない

ある日、仕事を終えて帰宅しようとすると、社長から「ご苦労さまです」と言われました。さて、「ご苦労さまです」と「お疲れさまです」はどう違うのでしょうか?

慣習として「ご苦労さまです」は目上の人には使いません。この言葉は一般的に目上の人(上司)が目下の人(部下)にかける言葉として使われています。上司から言われるのはかまいませんが、あなたから上司に「ご苦労さまでした」とは言わないようにしましょう。

これに対して、「お疲れさまです」は対等な相手にも目上の人にも使えます。目上の人に対しては、「お疲れさまでございます」と言うと、さらにていねいです。

2. 社外でのあいさつの言葉

お世話になっております

「お世話になっております」は取引先に対するあいさつの定番です。仕事を始めるとこの表現をよく聞くと思います。また、「お世話になります」という表現を聞くこともあります。この二つの表現の違いは何でしょうか?

「お世話になっております」は「すでに」取引がある場合など「お世話になる状態が続いている」ことへの感謝の気持ちを表し、「お世話になります」は「これから」の取引や付き合いに対する期待や感謝などを伝える場合に使います。

また、「お世話になっております」や「お世話になります」は、実際に対面したときだけではなく電話やメールなどでもよく使います。

3. 取引先へのメールでよく使う表現

何卒(なにとぞ)よろしくお願いいたします

取引先に電子メールを送る際に、文頭で「いつもお世話になっております」などのあいさつ文を用い、文末では「引き続きよろしくお願いいたします」などの表現を使うことが多くあります。

私はあるとき、取引先からのメールで「何卒よろしくお願い申し上げます」という表現を見ました。

「何卒(なにとぞ)」とは一体どういう意味でしょうか?

この言葉は意味を強調するために用いられます。「どうか」という言葉と似た意味ですが、「どうかお願いいたします」より「何卒お願いいたします」の方がビジネス言葉としてしっくりきます。

「よろしくお願いいたします」でも意味は通りますが、強くお願いしたい場合は「何卒」を前に付けます。ちなみに、「よろしくお願いします」より「よろしくお願いいたします」の方がていねいな表現で、「よろしくお願い申し上げます」はもっとていねいです。「申し上げます」とは自分を下に置いた表現(謙譲語)です。

4. 取引先との電話で使う言葉

日本で初めて働くときに最も不安なこと。それは「電話対応」ではないでしょうか。さまざまな敬語を使うのに神経を使い、かかってきた取引先の名前と要件を正確に聞き取れないこともたくさんあります。また、取り次ぐべき電話と営業電話の違いも分からず、混乱はピークに達します。

電話対応における表現の中で、「承知しました」「承知いたしました」「かしこまりました」という表現を用いることがあります。

いずれも先方の説明や要求に対して「わかった」「理解した」と伝えるためのていねいな表現です。しかし、毎回「かしこまりました」「かしこまりました」「かしこまりました」……と同じ言葉を続けるより、「かしこまりました」「承知いたしました」と、ときどき言葉を変えて対応することで、より自然なビジネス日本語へと進化させることができます。

今回は、さまざまな仕事の場面で使うあいさつの言葉を紹介しました。覚えたあいさつ言葉を「だれに対して」「いつ」「どのような場面」で使うことができるのか、周りの日本人の使い方も観察してみてください。