生活・ビザ

自転車運転で犯しやすい6つの法律違反と自転車保険の重要性

001
2023年12月20日

日本ではよく整備された道路が多いので、自転車での移動がとても便利です。しかし、自転車の運転ルールに違反して事故を起こすと、被害者から高額の損害賠償(そんがい・ばいしょう)を請求されることもあります。また、ルールを知らないために警察に検挙されて処罰を受けることもあります。日本で安全・快適な自転車生活を送るために、自転車の交通ルールや自転車保険についてたくさんのイラストや写真を使って紹介します。

1.日本では自転車は車の仲間

日本では自転車は「軽車両」に分類され、道路交通法で運転ルールが定められています。「軽車両」は車の仲間です。運転ルールに違反した場合は罰則もあります。

一般的な自転車(長さ190㎝以内、幅60㎝以内)を「普通自転車」と呼びます。普通自転車に乗るには、運転免許は不要です。この記事では、普通自転車の交通ルールについて説明します。

2.自転車運転で犯しやすい6つの法律違反

① 飲酒運転は法律違反

飲酒運転は法律違反です。飲酒運転には2種類あります。

酒気帯び運転
はいた息1ℓの中にアルコールが0.15mg以上含まれている状態で運転すること
酒酔い運転
息の中のアルコール濃度にかかわりなく、酒に酔った状態で運転すること。

自転車で「酒酔い運転」をした場合、「5年以下の懲役か100万円以下の罰金」の対象になります。日本では、警察官が道路で自転車を止めて職務質問をすることがよくあります。職務質問で「酒酔い運転」が発覚して処罰されると、在留資格の更新などにも影響する可能性があります。

自転車の「酒気帯び運転」に関しては、罰則はありませんが、道路交通法で禁止されていることに変わりはありません。

② 夜間走行時はライト点灯が義務

前にライトが付いていない自転車や故障でライトがつかない自転車を夜に運転すると法律違反です。夜は、繁華街など明るい場所を走るときでも、ライトをつけなければなりません。

③ 運転中のスマホ使用は法律違反

携帯電話で通話しながら片手で自転車を運転することや、自転車の運転中に携帯電話の画面を見ることは法律違反です。

自転車に乗りながら携帯電話を使うと、事故を起こしたときの責任の割合が大きくなり、被害者から多額の損害賠償を請求されることにもなりかねません。

電話をかけたいときや携帯電話の画面を見たいときは、必ず自転車を止めてください。

片手でかさをさしながらの運転は法律違反

雨の日に片手でかさをさし、片手だけでハンドルを握って自転車を運転することは法律違反です。レインコートを着て運転しましょう。

  • 片手運転だと、走行が不安定になります。
  • 片手運転だと、ブレーキもかかりにくくなります。
  • かさで視界もせばまります。

2人乗りは法律違反(幼児を乗せることは例外)

日本では、自転車の2人乗りは原則として禁止です。

ただし、幼児を一緒に乗せることはできます。幼児を乗せるには、▽運転者が16歳以上▽一緒に乗せるのは、まだ小学校に通っていない子ども▽幼児用座席を使う――などの条件があります。

安全基準を満たした「幼児2人同乗用自転車」なら、前後の席に幼児1人ずつを乗せられます。

一緒に乗せる幼児にもヘルメットをかぶせてください。

イヤホンなどを付けながら運転してはいけません

イヤホンやヘッドホンで音楽などを聴きながら自転車を運転すると、周囲の音が聞こえず、危険に気づきにくくなります。イヤホンなどを付けて自転車を運転することはやめましょう。

3.自転車の運転ルール

それでは、自転車で道路を走るときの基本的なルールを紹介します。

車道通行が原則

自転車は道路交通法で「軽車両」と位置づけられています。このため、歩道と車道が分かれている道路では、自転車は原則として車道を走らなければなりません。

歩道を走れる場合もある

この標識のある歩道では自転車も走れます。

自転車が歩道を走れる場合とは?

自転車は原則として車道を走らなければなりませんが、次の場合などには、例外として歩道を走ることができます。

  • 道路標識で自転車も歩道を走ってよいと表示されている場合
  • 運転する人が12歳以下か70歳以上の場合
  • 運転する人に一定程度の身体障害がある場合
  • 道路工事や駐車車両などの影響で車道を走りにくい場合

歩道を走る場合の注意点

歩行者がいる場合は、いつでも止まれるスピードで運転しましょう。

歩行者がいる場合は、いつでも止まれるスピードで走行し、歩行者の通行を邪魔(じゃま)しそうになったら、止まらなければなりません。

歩行者に道をあけてもらうために自転車のベルを鳴らしてはいけません。危険防止などやむを得ないときにだけベルを鳴らしましょう。

・自転車で歩道を走る場合はどちらの向きに走ってもよいですが、歩道の中央より車道寄りの部分を走らなければなりません。

歩道では自転車同士が相互通行(すれ違う通行)をしても構いません。

歩道の自転車レーン

歩道に自転車レーンがある場合は、そのレーンを走らなければなりません。ただし、自転車レーンに歩行者がいる場合は、歩行者の通行の邪魔(じゃま)をしてはいけません。

車道の走り方

車道では左はしを走行

自転車は、車道では、進行方向の左はしを走行しなければなりません。違反した場合は、「3カ月以下の懲役か5万円以下の罰金」の対象です。

路側帯を走れます

道路の左側の路側帯を走る自転車

原付バイクは車道の路側帯の中を走れませんが、自転車は路側帯の中を走ることができます(路側帯の外も走行できます)。路側帯で自転車の相互通行(すれ違いに通ること)はできませんので、進行方向の左側の路側帯を走行してください。

車道の自転車レーン

車道に自転車レーンがある場所では、そのレーンを通行しなければなりません。車道の自転車レーンで相互通行はできませんので、進行方向の左側の自転車レーンを走行してください。

一方通行の道路

一方通行の標識に「自転車を除く」という表示がある場合、自転車は一方通行と反対の方向に走行(逆送)できます。その場合も、進行方向の左はしを走行しなければなりません。

右折は二段階で

自転車が交差点で右折するときは、どのような交差点でも、二段階右折をしなければなりません。まず、直進方向の信号に従って交差点を渡り、次に右に向きを変えて正面の信号に従って交差点を渡ってください。

4.ヘルメットをかぶりましょう

自転車に乗るときにヘルメットをかぶらなくても、ペナルティーはありません。しかし、法律でヘルメットをかぶるよう努力することになっています。

自転車で事故を起こして運転者が死亡する場合、約7割は頭のけがが原因です。できるだけヘルメットをかぶりましょう。また、子どもを乗せて走るときは、子どもにヘルメットをかぶらせてください。

5.高額の損害賠償に備えて自転車保険に入りましょう!

自転車で歩行者にぶつかり、相手にけがをさせてしまった場合、高額の治療費や慰謝料を支払わなければならないケースがあります。このため、多くの地方自治体の条例で自転車保険への加入が義務付けられています。

自転車の事故をカバーする保険には次のようなものがあります。

・「自転車保険」などの名前で売られている傷害保険のオプション
・自動車保険のオプション
・火災保険のオプション
・クレジットカードなどに付いている保険
・個人賠償責任保険、日常賠償保険、賠償責任共済

技能実習生の保険

技能実習生については、通常、受け入れ企業などが実習生向けの保険をかけており、その保険で自転車事故もカバーされます。

自転車事故による高額賠償の事例

神戸地裁判決(2013年)
小学生(11歳)が夜、帰宅するために自転車を走行中、歩行者(62歳)に正面かつぶつかり、歩行者は頭を強く打って意識が戻らない状態となった。
→判決で9,521万円の賠償命令
東京地裁判決(2003年)
高校生が昼、自転車で道路をななめに横断し、向かい側から自転車で走ってきた男性(24歳)と衝突。男性は頭を強く打ち、言葉が話せなくなる障害が残った。
→判決で9,266万円の賠償命令

6.日本でも自転車は盗まれます

防犯登録の登録証(オレンジのシール)

防犯登録

自転車の防犯登録は、その自転車が自分のものであることを証明するためのものです。また、自転車を盗まれたときに探しやすくなります。

防犯登録は法律で義務付けられています。インターネットで購入した場合や、友人から中古車として譲り受けた場合も、自転車店に持って行って防犯登録をしましょう。

登録料

防犯登録の登録料は県によって違いますが、東京都では660円(非課税)、大阪府では600円(非課税)です。

防犯登録の有効期限

防犯登録の有効期限は、東京都や大阪府では10年間です。有効期限を過ぎると、改めて防犯登録を行う必要があります。

防犯登録のメリット

自転車を盗まれて警察に届けた場合、警察は防犯登録番号をもとに自転車を探すので、防犯登録をしている自転車の方が見つけやすいです。

日本では、自転車を運転中に警察官に止められ、職務質問をされることがよくあります。その際、自転車の防犯登録をしていないと、防犯登録をしている場合と比べて職務質問が長くなります。

・職務質問の際、警察官は自転車の防犯登録番号をもとに所有者を調べるので、盗難車の場合はすぐに分かります。このため、自転車を盗もうとする人は防犯登録をしている自転車を避けるので、その自転車は盗まれにくくなります。

施錠

自転車は日本でも盗まれやすいので、必ずカギをかけてください。

external link 日本で自転車を盗まれた留学生の体験談|KOKORO

7.モペットの運転には免許が必要です

電動アシスト自転車と電動自転車の違い

電動アシスト自転車には免許不要

「電動アシスト自転車」は普通自転車の一種なので、運転免許は不要です。これは電動モーターが走行を補助する自転車で、こぎ始めや上り坂でも楽にこぐことができます。しかし、電動モーターを使わずに走行することも可能です。

電動自転車には免許が必要

「電動自転車」とは、原動機(本格的なモーター)によって、ペダルをこがなくても自動で走り続ける「自転車」のことです。正式名は「ペダル付原動機付自転車」で、日本の法律では原動機付自転車(原付バイク)と同じ分類です。

電動自転車は「モペット」「ペダル付き電動自転車」「フル電動自転車」とも呼ばれています。外国人がインターネットで購入するケースが多いですが、日本で電動自転車を運転するには、原付バイクを運転できる免許が必要です。

8.まとめ

運転免許

普通自転車に乗るには、運転免許は不要です。ただし、「モペット」などペダルをこがなくても走り続ける電動自転車を運転する場合は、運転免許が必要です。

自転車運転で犯しがちな6つの法律違反

  • 飲酒運転
  • 夜間に前のライトをつけずに走ること
  • 携帯電話を使いながら運転すること
  • かさをさしながら片手で運転すること
  • 2人乗り
  • イヤホンを付けながら運転すること

自転車運転の基本ルール

  • 車道を走るのが原則。路側帯の中も走れます。つねに進行方向の左側を走行しましょう。
  • 歩道を走れる場合もあるが、歩行者を優先してください。
  • 歩行者をどかせるためにベルを鳴らしてはいけません。
  • 交差点で右折するときは、二段階右折をしなければなりません。

自転車保険

多くの自治体の条例で自転車保険への加入が義務付けられています。事故を起こして高額の損害賠償を請求されることがあるので、必ず自転車保険に入ってください。