生活・ビザ

労働災害(労災)事故にあわないために

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2026年09月08日

By KOKORO(毎日新聞社主催、在ベトナム日本国大使館など後援)

仕事中や通勤中にけがをしたり、仕事が原因で病気になったりすることを「労働災害(労災)」と言います。外国人が日本で働くときは、日本語力の問題や職場の習慣の違い、仕事の経験不足などから、危険な作業やルールを十分に理解できず、労災につながることがあります。労災にあうと、仕事を続けることが難しくなる場合もあります。この記事では、労災のうち、仕事中や通勤中の事故によるけがを中心に、労災事故を防ぐために知っておいてほしいことを説明します。

1.まず覚えてほしい「安全の3原則」

労災を防ぐために、まず次の3つのことを覚えてください。

① 分からないまま仕事をしない。
② 危険を感じたら、いったん止まる。
③ 分からなければ、必ず聞く。

これは、仕事の種類に関係なく、とても重要な安全の基本です。

たとえば、機械の操作方法がよく分からないとき、「多分こうだろう」という自分の考えで操作してはいけません。先輩のやり方を見ただけで、十分に理解しないまま操作をするのも危険です。

「すみません。分かりませんでした」「もう一度教えてください」と聞くことは、恥ずかしいことではありません。

分からないまま仕事をして事故が起きる方が、自分にとっても、一緒に働く人にとっても、大きな困りごとになります。

「立ち止まる」→「聞く」→「分かってからやる」

この順番を守ることを、ぜひ覚えてください。

2.職場でよくある労災事故を知る

職場で実際にどのような事故が起きているのかを知ることで、「何をすると危険なのか」をイメージしやすくなります。

① 転倒

作業場の床がぬれていたり、通路に物が置いてあったりすると、すべったり、つまずいたりして、転んでしまうことがあります。

急いでいるときや、両手で大きな物を持っていて足もとが見えにくい場合などは、特に注意が必要です。

【対策】

  • 作業場では走らず、落ち着いて歩く。

  • 歩くときは、足もとや進行方向をよく確認する。

  • 通路に物を置かない。

  • 水や油などで床がぬれている場合は、そのままにせず、すぐにだれかに知らせる。

② はさまれ事故

機械の動いている部分に手や指などがはさまれる事故です。

機械を止めなければならないのに止めずに作業したり、機械の動きを十分に確認しないまま手を近づけたりすると、重大な事故につながります。

場合によっては、機械で指や腕が切断されたり、押しつぶされたりすることもあります。

【対策】

  • 機械に手や体を近づける必要がある作業では、決められた手順に従って機械を止める。

  • 機械が完全に止まっていることを確認してから作業する。

  • 動いている機械に手を入れない。

  • 分からない場合は、自分で判断せず、上司や先輩に確認する。

③ 巻き込まれ事故

回転している機械に服や手袋、髪の毛などが巻き込まれる事故です。巻き込まれると、機械を止めるまでの短い時間に大きなけがをすることがあります。

【対策】

  • 作業するときは、機械に巻き込まれやすい服を着ない。

  • 髪が長い場合は、決められた方法でまとめる。

  • 機械に必要以上に近づかない。

  • 機械の安全装置を勝手に外したり、無効にしたりしない。

  • 機械に体を近づける作業では、決められた安全手順を守る。

※手袋は、作業によっては機械に巻き込まれる原因になることがあります。「手袋を着ければ必ず安全」と一律に考えず、その作業で決められた保護具を正しく使用してください。

④ 切れ・こすれ事故

刃物や工具、機械の動いている部分などに体が触れ、切れたり、すりむけたりする事故です。指などの切断につながることもあります。

【対策】

  • 作業に必要な保護具を正しく使用する。

  • 刃物や刃のついた機械を使うときは、特に慎重に作業する。

  • 作業前に、工具や機械に異常がないか、安全装置が正しく作動するかを確認する。

  • 作業マニュアルや決められた手順を守る。

  • 刃物を使うときは、刃の向きや手の位置に注意する。

⑤ 墜落・転落

建設現場などでは、脚立(きゃたつ)や足場などの高い場所から落ちる「墜落・転落」にも十分に注意してください。

【対策】

  • 作業に必要な墜落制止用器具を正しく使用する。

  • 足もとや作業場所の状態を確認する。

  • 無理な姿勢で作業しない。

  • 脚立や足場を正しく使用する。

  • 「少しだけだから大丈夫」と考えて、安全設備を省略しない。

⑥ フォークリフトとの接触

フォークリフトがたくさん動いている倉庫や工場もあります。フォークリフトが、荷物や柱でかくれて見えない場所から出てきて、人と接触する事故も起きています。

フォークリフトの運転者からは、見えない場所(死角)がたくさんあります。フォークリフトの近くを歩くときは、運転者が自分の存在に気づいているかどうかを確認してください。

【対策】

  • 作業場を歩くときは、周囲をよく見る。

  • 荷物や柱のかげなど、見えない場所から出てくるフォークリフトに注意する。

  • 決められた歩行者用通路を利用する。

  • フォークリフトに近づくときは、運転者が自分に気づいていることを確認する。

【フォークリフトを運転する人へ】

技能実習生や特定技能外国人の中には、フォークリフトを運転する人もいます。運転するときは、次のことに注意してください。

  • 前がよく見えないときは、無理に前進せず、バックや誘導員による誘導など、安全を確認できる方法で走行する。

  • 死角や交差点では、必ずいったん止まって安全を確認する。

  • 必要に応じてホーンを鳴らし、周囲に存在を知らせる。

  • フォーク(ツメ)やパレットの上に人を乗せない。

  • フォークリフトから離れるときは、決められた方法で停止してエンジンを切り、ブレーキもかける。

3.「分からない」「聞けない」が事故につながる

分からないときは、必ず聞く

外国人が日本で働く場合、日本語や職場のルールに慣れていないことが、労災事故につながる場合があります。たとえば、次のような行動には注意してください。

  • 仕事の説明が分からなかったが、相手に遠慮して聞かなかった。

  • 説明がよく分からなかったが、そのまま作業した。

  • 作業手順を十分に理解していないのに、周囲に確認せず機械を動かした。

  • 初めて行う作業なのに、「見たことがあるからできる」と考えてしまった。

  • 「忙しそうだから聞けない」「分からないことを聞くのは恥ずかしい」と考えてしまった。

このような「知らない」「分からない」「聞かない」「分からないのに自己流で作業する」「あわてる」といった行動が、事故につながることがあります。

少しでも不安があるときは、「たぶん大丈夫」と自分で判断せず、作業を止めて、上司や先輩などに確認してください。

「分かりません」「もう一度教えてください」と聞くことは、恥ずかしいことではありません。安全のために質問することも仕事の一部です。

相談できる人を持つ

分からないことをすぐに聞くためには、職場で「相談できる人」を普段から見つけておくことも重要です。

自分に指示をした人にすぐに質問できない場合や、説明を聞いても分からない場合には、ほかの人に確認する必要があります。同じ国の先輩、日本人の上司、現場の責任者など、困ったときに相談できる人を決めておきましょう。

「困ったときは、この人に聞く」と普段から決めておくと、いざというときに聞きやすいです。

4.危険を知らせる言葉を覚える

日本の職場では、危険を知らせる言葉がいろいろあります。これらの言葉を理解できないと、危険に気づくことができません。

職場では、短い言葉で危険を伝えることが多いです。たとえば、

  • 危険(=あぶない)

  • 立入禁止(=入ってはいけない)

  • 注意

  • 止まれ

  • 高温

  • 感電

  • 回転中

「怒られている」とは限りません

職場であなたに危険が迫っているとき、周囲から「あぶない!」「さわるな!」など、強い言い方で注意されることもあります。

これは、相手があなたに怒っているとは限りません。危険な状態では、あなたを守るために、短く強い言葉ですぐに知らせる必要があるからです。

方言にも注意

地域によって方言(ほうげん)が使われることもあります。たとえば、「危ない」を「危ねえ」とか「おっかねえ」という場合もあります。

方言に限らず、相手の言葉が分からなかった場合は、「すみません。今の言葉の意味が分かりませんでした」と遠慮せずに聞いてください。

分からない言葉をそのままにしないことも、安全のために大切な行動です。

5.機械や道具を「多分こうだろう」で使わない

機械の操作や作業のやり方が分からないときは、絶対に「多分こうだろう」という推測で作業を続けてはいけません。

特に危険なのは、

  • 見よう見まねだけで操作する。

  • 分からないのに、試しに機械のスイッチを押す。

  • 動いている機械に触る。

  • 作業手順を自己流に変える。

  • 安全装置を勝手に外す。

  • 「少しだけなら大丈夫」と考える。

といった行動です。

正しいやり方が分からないときは、「分かりません」「もう一度教えてください」などと伝えてください。

また、機械の掃除や点検をするときにも注意が必要です。機械の電源を切らずに作業すると、突然動き出して重大な事故につながることがあります。機械が止まっていることなどを確認してから作業してください。

6.整理整頓も安全対策

整理整頓は、仕事をきれいにするためだけのものではありません。安全にも大きく関係します。

職場が散らかっていると、

  • つまずく

  • 転ぶ

  • 物が落ちる

  • 必要な道具を探してあわてる

  • 作業ミスが増える

といった問題が起こりやすくなります。

【対策】

  • 仕事が終わったら、使ったものを決められた場所に戻してください。

  • 通路に物を置かない、床に水や油をこぼしたらすぐに知らせるなど、職場を安全な状態に保つことを習慣にしましょう。

7.指差し確認をやってみよう

仕事を始める前には、安全確認を行いましょう。

日本では、「指差し確認」という安全確認の方法があります。これは、確認する対象を指で指しながら、声に出して確認する方法で、日本の鉄道や工場、建築現場などで使われています。

たとえば、

「ヘルメット、よし!」
「手袋、よし!」
「機械停止、よし!」
「右、よし!左、よし!」

などと声に出して確認します。ただ見るだけではなく、「指をさす」+「声に出す」ことで、安全確認を意識しやすくなります。

8.保護具を正しく使う

ヘルメット、安全靴、保護メガネ、耳栓、防じんマスク、墜落(ついらく)制止用器具など、作業によってさまざまな保護具があります。

これらは、自分の体を守るための大切な道具です。「少しだけだから大丈夫」「面倒だから使わなくてもいい」と考えてはいけません。

また、保護具は正しい使い方をして初めて効果を発揮します。

使い方が分からない場合や、自分の作業にどの保護具が必要なのか分からない場合は、必ず確認してください。

9.「分かる方法」で安全教育を受ける

安全に働くためには、仕事の内容だけでなく、安全についての説明を正しく理解することがとても重要です。

日本語が難しくて分からない場合は、遠慮せず、

  • やさしい日本語で説明してもらう。

  • 母国語で説明してもらう。

  • 写真やイラストを使って説明してもらう。

  • 実際の機械や道具を使って説明してもらう。

など、自分が理解できる方法で説明してもらいましょう。

「分かりました」と言うことよりも、本当に分かっていることの方が大切です。分からないことがあれば、会社に「もう少し分かりやすく説明してください」と伝えてください。遠慮しなくても大丈夫です。

10.通勤中の事故

通勤途中の事故も、一定の条件を満たせば「通勤災害(労災の一部)」として労災保険の対象になります。

通勤時の事故を防ぐためには、まず時間に余裕を持つことが大切です。急いでいると、信号を無視したり、道路を無理に横断したりするなど、危険な行動をしてしまうことがあります。

自転車に乗るときは、交通ルールを守り、周囲をよく確認してください。スマートフォンを見ながら歩いたり、自転車を運転したりすることも非常に危険です。

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【対策】

  • 時間に余裕を持って家を出る。

  • 信号や交通ルールを守る。

  • 自転車に乗るときは周囲をよく確認する。

  • スマートフォンを見ながら歩いたり自転車を運転したりしない。

  • 雨の日など道路がすべりやすいときは、特に注意する。

11.もし労災事故が起きたら

もし、仕事中や通勤中にけがをした場合は、無理に仕事を続けないでください。小さなけがでも、仕事中に起きたけがは、まず担当者や上司に伝え、必要な応急措置を受けてください。けがが小さく見えても、後から痛みが強くなることもあります。

また、仕事が原因でけがをしたり病気になったりした場合は、労災保険の給付を受けられる場合があります。そのためにも、仕事中にけがをした場合は、必ず上司などに伝えてください。

労災保険は、外国人労働者にも適用されます。

労災として認められるかどうかは、会社が決めるのではなく、労働基準監督署が判断します。会社から「労災ではない」と言われても、労災保険を申請できないと思い込まないでください。会社には、決める権限はありません。

労災保険について分からないことがある場合は、会社の担当者、労働基準監督署、外国人労働者向けの相談窓口などに相談してください。

external link 労災保険給付の種類と申請方法|KOKORO

external link 労災保険請求のためのガイドブック(多言語)|厚生労働省

12. まとめ――安全のために「止まる・聞く・確認する」

事故を防ぐために大切なのは、特別なことではありません。

  • 分からないまま仕事をしない。

  • 危険を感じたら、いったん止まる。

  • 分からなければ、必ず聞く。

  • 仕事を始める前には、「安全を確認してから仕事をする」

こうしたことを習慣にしてください。

日本の職場には、外国人には分かりにくい言葉やルールがあるかもしれません。しかし、「分からないことを聞く」のは悪いことではありません。

「立ち止まる」→「聞く」→「分かってからやる」。

この習慣が、あなた自身の健康・安全と、あなたの家族の生活を守ります。日本で長く健康に働くために、今日から「安全第一」を心がけてください。

※仕事がもとでかかる病気(労災疾患)については次の記事で説明しています。

external link 仕事が原因で起こる病気――外国人が知っておきたい労災疾患|KOKORO