彼女は技能実習を無理にやめさせられ、自力で新しい仕事を探している最中に妊娠・出産しました。彼女は市役所や支援団体のサポートを受けて低費用で出産し、再就職もできました。彼女が出産の際に受けた助成や、再就職するまで在留資格(ビザ)をどうしたかについて紹介します。
【相談者】 ・元技能実習生 ・20代・ベトナム人女性 ・関東地方在住
相談者は鹿児島県で介護の技能実習を始めましたが、その介護施設の経営不振によって1カ月半で宮崎県の別の施設に転職させられました。ところが、それから1カ月余りたったある日、監理団体の職人が突然、寮にやってきました。相談者は監理団体の車で空港に連れて行かれて飛行機に乗せられ、ベトナムに帰国させられました。
約100万円の借金をして訪日したのに、3カ月だけ働いて帰国させられては困ります。相談者は4日後に自費で日本に戻り、関東に住むベトナム人の友人宅を渡り歩きました。そんなある日、不法残留者の集まるパーティーで知り合った男性と関係を持ち、妊娠しました。互いに恋愛感情はなく相手に経済力もないため、妊娠の事実は知らせませんでした。相談者は1人で出産するつもりで病院に通い仕事探しも続けてきましたが、仕事が見つからず、困っていました。
相談者はそんなとき、日越ともいき支援会と出会いました。支援会の支援で2020年12月に食品加工会社の面接を受け、合格。この会社と雇用契約を結んで新しい在留資格を取得し、その直後に出産しました。2021年4月から勤務する予定で、現在、保育所など子どもを預ける施設を探しています。
相談者が帰国させられた背景には、勤務先の意向があったようです。2019年12月12日、相談者は監理団体から面会を求められましたが疲れていたので断ったところ、4日後に監理団体のスタッフと通訳が寮に訪れ、「今から空港に行くので荷物をまとめるように」と通告されました。また、「もう施設職員ではないので、このアパートに住むことはできない」とも言われました。その後、車で空港に連れて行かれ、ベトナム語の帰国同意書に署名させられたそうです。
技能実習法やその運用要領で実習生の帰国や解雇については次のように規定されています。実習生が希望していないのに無理に帰国させることは違法です。
〇 技能実習生を技能実習計画の途中で帰国させる場合は、実習生に対し、意に反して途中で帰国する必要はないことの説明や帰国の意思確認を書面で十分に行ったうえで、外国人技能実習機構(OTIT)の事務所に届けなければならない。
〇 技能実習生が技能実習の継続を希望している場合は、受入会社や監理団体が責任を持って次の実習先を確保することが必要。
日越ともいき支援会
監理団体や受入会社から上記のような対応が望めない場合は、外国人技能実習機構(OTIT)に相談してください。ベトナム語で相談内容を送信できます。電話もあります(0120-250-168)。事務所を直接訪れるのも有効です。
万一、OTITに相談しても解決しない場合は、次のような民間の相談機関もあります。「外国人実習生支援」は、緊急性の高い相談の場合、代表者が自分の名刺の画像をSNSで送ってくれます。そして、強制帰国させられそうになった場合は、日本の空港の出国審査(パスポート審査)で「帰国を強制されたが、本当は帰国したくない」と伝えるようアドバイスしています(その際に代表者の名刺の画像も見せます)。
外国人実習生支援(Facebook) 日越ともいき支援会
相談者は自力で日本に戻り、不法残留者の家を渡り歩きましたが、技能実習の在留資格の期限が迫っていました。相談者が母子健康手帳をもらうために市役所の担当課を訪ねたところ、その後、市役所の担当者が通訳と一緒に何回かアパートに来て相談に乗ってくれました。この担当者が入管などに問い合わせ、短期滞在(30日)の在留資格に切り替えることができ、毎月更新してきました。
相談者は、面接で合格した会社との雇用契約書を入管に提出し、特定技能への移行を目指すことを条件に特定活動(雇用維持支援)の在留資格に変更してもらいました。在留期間は12カ月で、その間に日本語能力試験(JLPT)・N4と技能試験に合格すれば、特定技能1号の在留資格を取得できる可能性があります。特定技能1号では最長5年間働けます。
相談者と赤ちゃん。右は日越ともいき支援会の吉水代表〈2021年〉
市役所の担当者の手配で児童福祉法の助産制度を受けられ、分娩費用は5万円ですみました。
日本では出産した人に42万円を支給する「出産一時金」という制度があります。相談者の場合、
・出産一時金を受給するには、国民健康保険への加入が必要 ・国民健康保険に加入するには、市役所への住民登録が必要 ・住民登録をするには、3カ月を超える在留資格が必要
という条件がありました。しかし、短期滞在(30日)から特定活動(12カ月)の在留資格に変更できたのは出産後となり、出産一時金はもらえませんでした。
相談者は、将来は子どもをベトナムの母親に預かってもらうつもりです。しかし、それまでは保育所などに預けて働くことを希望しています。
すべて
日本に行こう
日本で暮らす
日本で留学
日本で働く
困ったときは
日本語を学ぶ
わたしの体験
KOKORO BLOG
JASSO(日本学生支援機構)
外国人労働者弁護団
WA.SA.Bi.
外国人在留支援センター(FRESC=フレスク)に行ってみました。弁護士による相談窓口や入管、ハローワークなどがワンフロアに集まり、通訳付きで連携して対応してくれます。
医療機関の種類▽医療機関を探す▽医療保険(健康保険、国民健康保険)▽さまざまな手当(療養費、高額療養費、出産育児一時金)▽薬
【日本人の子を未婚で妊娠・出産】赤ちゃんを日本で育てたい▽日越ともいき支援会▽認知と子どもの国籍▽子どもの養育▽在留資格
【日本人の夫が出て行った】支援機関を訪問(FRESC:外国人在留支援センター)▽在留資格(定住者、就労のための在留資格、特定活動)▽当面の生活