生活・ビザ

Vol. 9 医療

日本でくらすサムネ09
2020年09月29日

日本で医療を受けるには

日本在留ベトナム人は40万人以上になりましたが、その多くは日本語をうまく話せません。そういった方々は日本語に自信がないので病院に行きづらいと感じていますし、行けたとしても、医師に症状を伝えたり医師の診察結果を聞いたりするときに意思疎通が十分にできません。

特に留学生が病気になった場合に困難に直面しています。技能実習生などは、受け入れている会社や監理団体(受入組合)がサポートしてくれますが、来日したばかりの留学生の場合は、サポートしてくれる個人や団体とのつながりもありません。急病などで緊急入院した場合、所属先の学校も支援をしてくれますが、支援内容に差があります。ここでは、外国人が日本で医療を受けるための基礎知識をお伝えします。

1.医療機関の種類

日本には多くの医療機関があり、それぞれ役割が分かれています。軽い病気やけがであれば、身近な診療所(クリニック)に行きましょう。そこで紹介状を書いてもらえば、その後、もっと大きな病院で診てもらうことができます。

① 診療所・クリニック

→日常的な病気やけがの治療

② 中小病院

→手術や入院が必要な場合▽救急医療が必要な場合

③ 大病院

→重症の救急患者▽高度な医療が必要な場合

【健康保険証】

病院やクリニックでは、健康保険証を提示してください。そうしないと、医療費が全額自己負担となります

【主な診療科目】

病気やけがの状況によって受診する診療科が分かれます。歯科はクリニックでの受診が主流です。

内科
消化器、呼吸器、循環器、泌尿器、血液、内分泌、神経など内臓の病気の診断や主に薬剤を使った治療をします。かぜをはじめとした一般的な病気の診断や治療も行います。
外科
がんや外傷の治療、手術などを中心に治療を行います。
小児科
子どもの病気を治療します。
整形外科
骨、関節、筋、腱といった運動に関連する器官やそれらにかかわる神経の病気の治療
眼科
眼の病気の治療
歯科
歯の治療や矯正など
産科
妊娠、分娩、新生児の治療など

医療機関を探す

医療機関の探し方を紹介します。

① 住んでいる地域の市区町村が発行する広報誌

② 各都道府県がホームページなどで提供している医療情報ネット

③ 住んでいる地域の市区町村や国際交流協会などに相談

市区町村や国際交流協会などの相談窓口(全国)のリンク集

④ 医療安全支援センター

都道府県や、保健所を設置する市と特別区に「医療安全支援センター」が計 380カ所所以上設置されています。ここで医療機関を案内してもらえます。

⑤ AMDA国際医療情報センター

・言葉の通じる医療機関の紹介や医療福祉制度を多言語で案内してくれます(電話03-6233-9266)。ベトナム語対応は第2・4水曜の10:00~16:00です。

・電話通訳やZOOM経由の通訳も提供(問い合わせ050-3405-0397)しています。

AMDA国際医療情報センター公式サイト

⑥ 観光庁

ウェブページ「具合が悪くなったとき」

◎緊急時 電話:119

急病のときや事故などで大けがをしたときは119番に電話して救急車を呼んでください。

言語サポート

日本の病院では外国人向け言語サポートが増えつつあり、ほとんどの大学付属病院や総合病院で電話を使った通訳サービスなどが導入されています。必要な場合は、病院が通訳を呼んでくれることもありますが、患者が通訳料を支払う必要はありません。ただ、医療分野のベトナム語通訳は、人材がまだ十分にいません。特に電話通訳は質が不十分なケースも多いとの指摘があります

しかし、日本とベトナムとの間で結ばれたEPA(経済連携協定)によって2012年以降、ベトナムから看護師が日本に渡って研修や実務を行っています。このような背景もあり、最近はベトナム人の医療通訳や医師、看護師が勤務する病院も増えました。こうした病院に行けば、質の高いベトナム語のサポートを受けることができるでしょう。

ベトナム語サポートを受けられる医療機関を次ページ以降で地域別に紹介していますので、参考ににしてください。

医療保険

日本に住む人は国籍に関係なく公的医療保険に加入することになります。

(1)健康保険

加入者は医療費30%負担

健康保険にはサラリーマンやその家族などが加入します。加入すると、歯科クリニックや病院などで一部負担だけで受診できます。原則として医療費総額の30%(6歳未満や70~74歳は20%)を本人・家族が支払い、70%は保険でカバーされます。保険が適用されない医療サービスもあります。

保険料は会社が半分負担

毎月支払う保険料は会社と従業員が半分ずつ負担します。

(2)国民健康保険

留学生にも加入義務

住民登録を行っている人で、職場の健康保険の対象でない75歳未満の人は、国民健康保険に加入することになります。外国人留学生にも加入義務があります。

加入者は30%負担

加入者は医療機関で受診した際、原則として医療費総額の30%を支払い、70%は保険でカバーされます。ただし、保険が適用されない医療サービスもあります。

加入方法

居住地の市区町村の役所で加入手続きをします。在留カードやパスポートが必要です。同居する家族がいる場合は、家族も一緒に加入します。健康保険証に家族の名前が書き込まれているかどうか確認してください。

住所変更の申請

住所が変わった場合は、新住所の市区町村の役所で申請し、新しい保険証を受け取ってください。この手続きをしないと、国民健康保険の適用を受けられません。

※所得や生活状況などによって保険料が軽減される場合があるため、詳しいことは、住んでいる市区町村で聞いてください。

さまざまな手当

医療保険には、さまざまな手当があります。その一部を紹介します。

【療養費】

✔︎ 就職直後で保険証が手元にない
✔︎ ギプスなどの治療用装具を購入した
✔︎ 医師が必要と認めたあんま・はり・きゅう・マッサージなどを受け
✔︎ 海外で診療を受けた

こうした場合に、医療費全額をいったん自分で支払ってから、居住地の役所に申請して認められると、自己負担分以外が療養費として支給されます。

【高額療養費】

医療機関や薬局で支払った額(入院時の食事代や差額ベッド代などは含まない)が1カ月で一定額を超えた場合、その超えた金額を支給する制度

【出産育児一時金】

被保険者やその扶養家族が出産したとき、1児につき原則として 42 万円が支給されます。

薬は薬局やドラッグストアで購入することができます。薬には副作用があるので、使い方に注意しましょう。

薬局

薬局では、医師が作成した処方せんに基づいて薬を調剤し、販売します。それ以外の医薬品も購入できます。日本では医師の処方せんがないと買えない薬がたくさんあります。処方せんなしで買える薬もありますが、同じ作用の薬なら、処方せんを渡して買うと、保険が適用されて原則3割負担ですみます。

ドラッグストア

主に処方せんの不要な医薬品や飲食品、日用雑貨品などを販売しています。処方せんに対応してくれるドラッグストアもあります。

◎医療についてもっと知りたい場合は下記リンク先の資料をご参照ください。

外国人のための「生活・就労ガイドブック」(第6章:医療)