文化

ベトナムの常識・日本の非常識_28:浴そうの湯は抜きません

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2022年04月06日

日本では浴そうの外で体を洗い、浴そうの湯は家族みんなで使います。今回は、お風呂に関する日本の文化と「駐車違反のステッカー」「自転車の防犯登録をしないとどうなるか」について紹介します。【Thạch Long】

入浴―日本とベトナムの違い

私が子どものころ、ベトナムの祖母の家には浴そうがあり、私と2人の弟は毎日お風呂に入っていました。祖母は浴そうを湯で満たし、まず私を入らせます。私の入浴が終わったら浴そうの湯を抜いてさっとすすぎ、弟のために新しい湯を入れます。だれかが入浴する度にこれを繰り返します。古い湯を流し、新しい湯で満たすのです。

多分、ほとんどのベトナム人はこのやり方が一般的だと思うでしょう。しかし、日本の入浴方法は違います。日本に住んでいる私の姉はこのような話をしてくれました。姉たちはある日、ベトナムから来た親せきを家に泊めました。そのとき、彼に最初にお風呂に入ってもらうと、彼は入浴後、浴そうの湯を流して次の人のために新しい湯を入れました。姉はそれを聞いて爆笑しました。

多くの日本の家庭では、温泉や銭湯と同じで、浴そうには1日1回しか湯をはりません。最初に入れた湯に家族全員が順番に入ります(途中で湯を足したり、追いだきをしたりすることはあります)。そのため、湯を汚さないように、次のような流れで入浴します。

・浴そうに入る前に手おけやシャワーで体に湯をかけて軽く洗う。
・浴そうに入って体を温めたら、洗い場に出て体や髪を石けんやシャンプーで洗う。
・その後、再び浴そうに入る。

浴槽の外で体や髪を洗う

このように、日本の入浴は「体を洗ってから浴そうに入る(湯につかる)」のが基本です。浴そうの湯をなるべく汚さず、家族で湯を使い回します。このため、多くの場合、浴室はトイレと別の部屋になっており、浴そうの外に体や髪を洗うためのスペース(洗い場)があります。

そのほか、日本のお風呂については次のような文化があります。

・小さい子どものいる家庭では親子や家族全員で一緒に入浴することも多い。
・夫婦が一緒に入浴するのも珍しくない。
・風呂の残り湯を洗濯に再利用する家庭もある。

風呂の残り湯を洗濯に使うため、日本の洗濯機には、浴そうから水を吸い上げて洗濯そうに送り込む装置がついているものが多いです。また、浴室の近くに洗濯機置き場を配置する設計の家が多いです。

他人の車に「駐車禁止」のステッカーをはってはいけない!?

ベトナムでは最近、無断駐車の自動車への対処について議論があります。店の前に違法駐車をされて迷惑しているレストランのオーナーは「駐車禁止」というステッカーをその車にはり付けることがあります。この行為について意見が分かれているのです。

一方は「駐車した人のマナー違反だから当然」とオーナーの肩を持ちます。他方は「たとえ駐車違反だとしても、他人の車にステッカーや粘着テープをはり付ける権利はなく、器物損壊の可能性がある」と指摘しています。

他人の車に粘着テープを貼るのはちょっとやり過ぎですが、ベトナムでは、警告ステッカーをはるぐらいは一般的です。おだやかなやり方では、「ここに駐車しないでください」と書いた紙をフロントガラスにはり付けます。激しいケースでは、車のボンネットにゴミを置くこともあるようです。

しかし、日本で車にはり紙をする人はあまりいません。ステッカーや粘着テープをはると大きなトラブルに発展するかも知れないと考える人が多いようです。せいぜいフロントガラスのワイパーに注意文を書いた紙をはさむか、がまんして何もしないケースがほとんどです。日本では、違法駐車で困った場合、多くの人は警察に通報します。通報に対して警察は公平に対応しますので、どうしても困ったときは、あなたも警察に通報してください。

自転車を買ったら防犯登録をしましょう

ベトナムで自転車を買うのはシャツやパンツを買うのと同じくらい簡単です。買ったらすぐに使えます。自転車を買っても登録などの手続きは不要で、お手軽な乗り物です。

日本でも手ごろな価格で手に入り、運転免許もいらないので、自転車を持っているベトナム人も多いと思います。ただし、日本で自転車を持つには「防犯登録」が必要です。ベトナムにはありませんが、日本では法律で義務付けられていますので、覚えておきましょう。

登録は簡単です。自転車を売る店はたいてい「自転車防犯登録所」となっており、購入と同時に店で登録できます。登録料は自治体によって異なり、東京都では660円(非課税)です。

防犯登録ステッカー

ネット通販やフリーマーケット・アプリ(フリマアプリ)で購入した場合は、自分で登録しなければなりません。その場合に必要なものは次のとおりです。

①自転車本体
②保証書または販売証明書
③在留カードなど自分の身分証明書

フリマアプリなどで個人から購入した場合は②がありませんので、代わりに譲渡証明書(売り手の個人情報や押印など)が必要です。友人や先輩から譲ってもらった場合も譲渡証明書が必要ですが、その人と一緒に店に行くと、スムーズに登録できます。

職務質問(イメージ写真)

それではなぜ、防犯登録をする必要があるのでしょうか?日本で自転車の防犯登録は法律で決められた義務ですが、登録しなくても罰則はありません。ただし、登録してないと困るケースがあります。

まず、自転車を盗まれた場合です。警察に被害届を出しても、防犯登録をしていないと、盗まれた自転車が見つかる確率が低くなります。防犯登録ステッカーが自転車を特定する目印になっているからです。

また、自転車に乗っているときに警察官に止められ、職務質問されることがよくあります。防犯登録をしていない理由を聞かれるほか、盗難車でないことを警察官が確認するなど、時間と手間がかかります。実際に私も警察官に呼び止められ、大変な思いをした経験があります。簡単な手続きで安心できますので、自転車を手に入れたら防犯登録をしましょう。