生活・ビザ

★基本情報=出産・育児への助成・手当・支援制度(総まとめ)

220729-blog-11
2022年08月02日

日本滞在中に妊娠・出産するベトナム人も増えています。日本には、出産・育児に対するさまざまなサポート制度があります。この記事では、妊娠・出産への医療費助成、出産や育児に対するさまざまな手当、専門家による相談サービス、地域のボランティアが育児を手伝ってくれるサービス、赤ちゃんとママのための交流制度などについて紹介します。日本で子どもを産み、育てるおママの皆さん、出産・育児のサポート制度について十分な知識を持ち、制度を大いに活用してください。

妊婦へのサポート

母子手帳

妊娠の有無

妊娠しているかどうかを調べる検査には行政の補助はありません。

母子手帳(母子健康手帳)

妊娠が分かったら、住んでいる地域の市区町村役場や保険福祉センターなどに行って母子手帳(ぼし・てちょう)を受け取ります。正式には「母子健康手帳」といいます。

※役所の総合受付で「母子手帳をもらいたい」と言えば、行き先を案内してもらえます。

母子手帳を受け取ると、お母さんや赤ちゃんに対するさまざまなサポートについて説明や連絡を受けることができます。例えば、「妊婦健康診査の受診券」をもらったり、出産・育児に関する専門家の指導を受けたりすることができます。

妊婦健康診査

妊娠したら、赤ちゃんとお母さんの健康のために、医療機関で定期的に「妊婦健康診査(妊婦健診)」を受けましょう。

妊婦健康診査の内容(例)

  • 血圧・体重測定
  • 尿検査(尿たんぱく・尿糖など)
  • 腹囲・子宮底長の計測
  • 貧血などの血液検査
  • 胎児の心拍数の確認や超音波検査

妊婦健康診査の助成(受診票)

妊婦健診の受診票

妊娠は病気ではないので、妊婦健康診査には医療保険を使えません。しかし、母子健康手帳と同時にもらえる「受診票」を使うと、妊婦健康診査(14回)の費用の一部を公費で負担(助成)してもらえます。

・「受診票」の正式名は「妊産婦健康診査受診票」

・受診票は14枚もらえ、14回の健康診査に使えます。双子(ふたご)などの場合は、追加で数枚もらえます。

公費負担(助成)の額は自治体によって異なります。例えば、2022年度の東京都内の市や区の場合、14回分で合計85,460円まで、大阪市では14回分で合計120,650円まで助成してもらえます。

出産に関する手当・助成


出産育児一時金

出産したら、健康保険や国民健康保険から「出産育児一時金」をもらえます。これは出産費用を補助するのが目的です。

・出産育児一時金の額:新生児1人につき420,000円(例外で408,000円の場合もあり)。双子などの場合は人数分。

・受給方法①:医療機関と健康保険組合などとの間で一時金の受け渡しが行われ、お母さんは出産費用と出産育児一時金の差額だけを医療機関に支払います。

・受給方法②:医療機関に出産費用を全額支払った後、健康保険組合に申請して一時金を直接受け取ります。国民健康保険の場合は、申請先は市区町村役場です。

・流産や死産の場合:妊娠12週を超えた場合は、死産や流産の場合でも一時金(408,000円または420,000円)を受け取れます。

出産手当金

妊娠・出産で働けなくなり、収入が減ることへの支援措置として、健康保険組合などから「出産手当金」が支給されます。勤務先に申請します。

・支給対象:健康保険や国民健康保険の加入者(被保険者)本人で、出産のために仕事を休む場合

・支給額:「標準報酬日額」の2/3×休んだ日数分。

※「標準報酬日額」とは残業代や諸手当を含む給料を勤務日数で割った額です。

・支給期間:出産の42日前(双子などの場合は98日前)~出産翌日から56日目の間で欠勤した期間

育児休業給付金

1歳未満の子どもを育てるために育児休業を取得する場合、国から「育児休業給付金」が支給されます。勤務先の会社などがハローワークに申請します。

・支給対象:雇用保険の加入者で育児休業をしている人

※通常、会社などが従業員を雇用保険に加入させています。

・育児休業:お母さんの産休(産前産後休業)は産前6週間・産後8週間以内です。法律によって、産後6週間は、働きたくても働けません。一方、「育児休業(育休)」は子どもの1歳の誕生日の前日まで取れます。

※保育所に入所できないなどの場合は、最長で2歳の誕生日の前日まで休めます。
※育児休業は父親も取得できます。
※夫婦同時に取得することもできます。その場合は、子どもが1歳2カ月になるまで休みを延長できます(パパ・ママ育休プラス制度)。

・育児休業給付金の支給額:育児休業開始から180日目までは月給の67%、181日目以降は50%

・支給期間(母親):産休の終了翌日から子どもの1歳の誕生日の前日までの育児休業期間中

・支給期間(父親):子どもの生まれた日から1歳の誕生日の前日までの育児休業期間中

国民年金保険の保険料免除

出産前後の4カ月間(双子以上の場合は6カ月間)の国民年金保険料が免除されます。市区町村役場の国民年金担当窓口などに問い合わせてください。

産前・産後のサポート

産前・産後サポート事業

各市区町村がさまざまな「産前・産後サポート事業」を行っています。内容は次の2本柱です。

相談事業:研修を受けた子育て経験者やシニア世代の人、保健師、助産師、保育士などが妊娠・出産、子育てに関する悩みの相談に乗ります。

交流支援:地域の母親同士の仲間づくりを推進します。地域の交流支援事業を通じて「ママ友」を作る人もいます。

地域の施設(保険福祉センターなど)に事業拠点が設けられている場合があります。市区町村に妊娠を届け出て母子健康手帳をもらうと、こうしたサービスについて具体的に説明を受けたり、案内を送ってもらったりすることができます。

〈各市の事業の具体例〉

・母子手帳を交付する際に妊婦と面談し、妊娠・出産・子育てに関する助言を行い、妊産婦が利用できる公共サービスを紹介

・妊娠・出産・子育てに関する相談(電話・来所・家庭訪問・メールなど)

・必要に応じて、医療機関や子育て関係機関と連携

・産後、助産師や保健師がお母さんと赤ちゃんをケアしたり、育児の相談・指導を行う

・保護者同士が交流できる「交流サロン」の運営

乳幼児医療費助成制度

乳幼児の医療証

小学校に入るまでの乳幼児が医療機関で受診した場合、医療費の一部が助成されます。

・助成額:医療機関で「乳幼児医療受給者証」と「健康保険証」を提出すると、医療保険の負担額と行政の助成額を差し引いた自己負担分だけが請求されます。自己負担は通院の場合、1回500円以内、入院の場合は1日500円です。

・対象外:予防接種や健康診断などには助成が適用されません。健康保険が適用できない医療の費用に対しては助成がありません。ただし、健康保険などを使わなくても無料で受けられる予防接種がたくさんあります。

・受給者証の交付:市区町村役場の担当窓口で申請してください。

育児に関する手当

児童手当

国の子育て支援施策として、0歳から中学校卒業までの子どもを育てている人に「児童手当」が毎月、支給されます。

・支給額

3歳未満 : 月15,000円
3歳~小学6年生:月10,000円、(第3子以降):月15,000円
中学生:月10,000円

※4カ月分ずつ年に3回支給されます。

・申請方法:市区町村の役場に子どもの出生届を出す際に、児童手当の申請書も提出します。役所の窓口で「児童手当の申請をしたい」と告げてください。

・所得制限:保護者の所得が一定額を超える場合は、児童手当を受給できません。

児童扶養手当

ひとり親家庭の父または母などに国から「児童扶養手当」が支給されます。支給額は第1子の場合で毎月最大43,070円です。

予期せぬ妊娠で困ったら

技能実習生や留学生などが予定せぬ妊娠に直面したり、父親の協力が得られなかったりして、仕事や留学、日本滞在を続けられるかどうか悩むケースが増えています。

そのようなときは1人で悩まず、外国人向け相談窓口や支援団体に相談してサポートを受けてください。

妊娠して出産や育児、在留資格のことで困った留学生や技能実習生が支援団体などのサポートを受けたケースを下記に紹介しましたので、参考にしてください。また、どのようなところに相談に行けばよいかについてまとめた記事も紹介します。

external link 〈事例〉出産した留学生と子どもの在留資格取得や生活を支援団体がサポート

external link 〈事例〉市役所と支援団体が元実習生の出産・育児をサポート

external link 全国のベトナム人の相談機関「日越ともいき支援会」

external link 総まとめ・ベトナム人向け相談窓口

まとめ

日本で妊娠・出産するベトナム人のママたちが出産・育児に関する公的な助成やサポートをきちんと受けられるように、さまざまな助成・手当・支援制度について紹介しました。

・妊婦へのサポート:母子手帳、妊婦健康診査への助成
・出産に関する手当・助成:出産育児一時金、出産手当金、育児休業給付金など
・産前・産後のサポート:相談事業、交流支援
・乳幼児医療費助成制度
・育児に関する手当:児童手当、児童扶養手当

こうした内容のほか、困ったときの相談窓口や解決事例についても紹介しました。元気な赤ちゃんを産んで安心して育てられるように、この記事の情報を役立ててください。