日本で働く

日本で働く Vol.5 技能実習制度の注意点:送出機関を選ぶ

働くサムネ_05
2019年06月30日

こんなに違う送出機関の費用

送出機関には「当たり外れ」があり、送出機関ごとに費用や日本語教育の内容が大きく違います。知人だけに頼らず自分で情報を集めて送出機関を選ぶだけで、日本に行くための支出や借金を大きく減らせる可能性があります。また、日本語をある程度身に付けてから日本に行く方が、実習先での仕事も円滑に進み、日本で良い人間関係や良い思い出をつくれる可能性が高まります。

1.送出機関によって数千ドルの違い?

日本で技能実習をするためにはベトナムの送出機関に依頼しなければなりません。多くの人が親戚や友人・知人、学校の先生などの紹介で送出機関を選んでいます。しかし、どの送出機関に依頼するかによって技能実習で得られる実益が千ドル単位で変わります。また、日本語をほとんど理解できない状態で日本に行くと、実習先でつらい思いをすることが多くあります。

技能実習生の両親の知識と行動次第で実習生の日本での生活も3年間で得られる実益も大きく変わってきます。それでは、実例を見て行きましょう。

2.「高い方が良い」は本当?

「安い費用の送出機関は信用できない」「友人が使った送出機関なら間違いない」と考える人がいます。はたして本当にそうでしょうか? 下記の表は、KOKORO編集部が技能実習生や元実習生に直接取材した「3年間の収支」です。表の内容を分析してみると、意外なことがわかります。

◆送出機関への支払額と技能実習3年間の送金額の実例(差額順)

実習開始年 A:送出機関に支払った額 B:日本からベトナムへの送金額か
送金見込額(3年分)
収支(B-A) 実習現場
2018 140,000,000 ₫ ¥3,500,000 778,229,550 ₫ 638,229,550 ₫ 建設
2017 95,000,000 ₫ ¥3,000,000 667,053,900 ₫ 572,053,900 ₫ 農業など
2019 105,000,000 ₫ ¥3,000,000 667,053,900 ₫ 562,053,900 ₫ 食品工場
2017 124,000,000 ₫ ¥3,000,000 667,053,900 ₫ 543,053,900 ₫ 工場
2018 135,000,000 ₫ ¥3,000,000 667,053,900 ₫ 532,053,900 ₫ 養鶏場
2018 135,000,000 ₫ ¥3,000,000 667,053,900 ₫ 532,053,900 ₫ 工場
2016 145,000,000 ₫ ¥2,800,000 622,583,640 ₫ 477,583,640 ₫ 食品工場
2019 115,000,000 ₫ ¥2,500,000 555,878,250 ₫ 440,878,250 ₫ パン工房
2015 90,000,000 ₫ ¥2,000,000 444,702,600 ₫ 354,702,600 ₫ 工場
2018 100,000,000 ₫ ¥2,000,000 444,702,600 ₫ 344,702,600 ₫ いちご園
2016 220,000,000 ₫ ¥2,500,000 555,878,250 ₫ 335,878,250 ₫ 食品工場
2014 142,000,000 ₫ ¥2,000,000 444,702,600 ₫ 302,702,600 ₫ 工場
2017 187,500,000 ₫ ¥2,000,000 444,702,600 ₫ 257,202,600 ₫ 食品工場
2015 180,000,000 ₫ ¥1,500,000 333,526,950 ₫ 153,526,950 ₫ 工場
2018 150,000,000 ₫ 失踪 失踪 少ない 建設
2017 147,000,000 ₫ 失踪 少ない 工場

・取材:KOKORO  ※100円=22,235VND(2021年1月26日現在)

赤で囲った部分が「日本からベトナムへの送金額(3年分)」から「送出機関への支払い額」を引いた収支(実益)です。その額が大きい順に並べました。この表から次のようなことがわかります。

「高ければ良い」は本当?

黄色を付けたケースは送出機関の費用が特に高かった5例です。一番高かったのは⑪(220,000,000ドン)で、⑨(90,000,000ドン)や②(95,000,000ドン)の2倍以上かかりました。しかし、3年間でベトナムに送金できた額は、逆に②が⑪を約111,000,000ドン上回りました。⑨も、送金額は⑪より少なかったのですが、実益では⑪を上回りました。

安い送出機関で平均以上の実益

この表で送出機関に支払った費用の平均は約140,000,000ドンです。⑦を除いて、収支の大きかった上位10例は送出機関の費用が平均以下でした。

青い色を付けたケースは送出機関の費用が特に安かった5例です。送出機関の費用は平均より25,000,000~50,000,000ドン安く、3年間の収支(実益)は平均以上でした。

多額の借金は失踪につながりやすい

⑮と⑯では実習生が失踪しました。訪日前の借金が多いと実習生の重荷になり、失踪につながりやすくなります。失踪すると、仕事も生活も不安定で、多くの場合、3年分の送金総額は低くなります。そして、在留期間が切れるとオーバーステイ(犯罪)になります。

3.高い費用の理由

ベトナム政府の規定では、送出機関による日本語教育費は約520時間に対し590万ドン以下、送出手数料は3,600ドル(USD)以下(3年契約の場合)となっています。しかし、実際の支払いはこれよりかなり高くなっています。費用が高くなる要素には次のようなものがあります。金額は日越の複数の関係者への取材でわかった相場です。

①日本の監理団体(組合)へのキックバック=実習生1人につき1,000~1,500ドル(USD)

②日本の監理団体や受入企業への接待費=実習生1人あたり数百ドル(USD)

③実習生を送出機関に紹介してくれる人(ブローカー)への支払い=実習生1人につき500~1,500ドル(USD)

多くの場合、日本の監理団体(組合)が技能実習生の受入会社(求人)を探し、その求人をベトナムの送出機関に紹介します。送出機関が求人1人につき監理団体の幹部に1,000ドル(USD)~1,500ドル(USD)相当の謝礼をキックバックする事例がまん延しています。また、監理団体や受入会社の幹部がベトナムに視察や面接に来ると、送出機関が接待をします。

こうした費用が実習生から送出機関への支払いに上乗せされると、費用が高くなります。しかし、最近はキックバックを支払わない送出機関やキックバックを受け取らない監理団体も少しずつ増えてきました。こうした送出機関や監理団体は、費用が適切なうえ、実習生の面倒もよくみてくれる傾向があります。

それでは、そのような送出機関や監理団体を探すにはどうしたらよいでしょうか。次ページ以降でお伝えします。

送出機関の選び方

前ページでは、送出機関を自分で探すことで、技能実習3年間での実益(3年間の送金額―送出機関への支払い)が数千ドル単位で変わる場合があることを紹介しました。それ以外に、送出機関や監理団体の質によって、日本でのケアの内容も大きく変わります。送出機関や監理団体の選び方を紹介します。

1.なぜ送出機関を選ばなければならないのか

このアパートの1室にある寮から複数の技能実習生が失踪

技能実習生が大損や失敗をしないために、送出機関や監理団体について次のことを知っておきましょう。

①送出機関選びを友人・知人や親戚、教師の紹介だけに頼ってはいけません。自分でも探すことによって費用を数千ドル単位で節約できる場合があります。

②送出機関によって費用や日本語教育の内容などが大きく異なります。

③費用の高い送出機関に依頼しても、日本での給料やケアが良いとは限りません。適切な費用で良い実習先を紹介してもらえるケースがたくさんあります

④送出機関の費用が高すぎると、3年間で得られる実益が平均以下になるケースが多くあります。また、多額の借金が実習生の重荷になり、失踪につながりやすくなります。

2.送出機関を選ぶ手順

送出機関の授業

それでは、良心的な送出機関や監理団体をどうやって探したらよいのでしょうか? 具体的な探し方・選び方を紹介します。

インターネットで情報収集

・KOKOROサイトの体験談を読み、技能実習の具体例をたくさん知ってください。送出機関への支払い額や日本からベトナムへの送金額、実習先での処遇や生活などがわかります。先輩が使って良かった送出機関や監理団体の実名も紹介しています。

・送出機関については、他のウェブサイトでも調べてください(特にレビューをたくさん読む)。

技能実習の先輩から情報収集

・技能実習生の先輩から情報を集めましょう。ただし、帰国した人より現在日本にいる現役の実習生から話を聞く方が有効です。現役の実習生は他企業の実習生とも情報交換しているので、他の送出機関や監理団体の情報も知っています。一方、帰国した実習生は特定の送出機関と結びつき、手数料と引き換えに新しい実習生を紹介するケースが多くあります。

送出機関に直接連絡

・送出機関に自分で直接連絡して申し込むだけで、紹介手数料(500~1,500 USD)を節約できます。友人・知人に紹介してもらった場合でも、送出機関がその人に紹介料を支払い、その額があなたからの支払いに上乗せされるケースが多数です。

監理団体に直接連絡

・気に入った監理団体に連絡すると、その監理団体が取引先の送出機関を紹介してくれます。この場合も紹介手数料が不要です。日本に行ってからのケアを重視するなら、最初に監理団体を選ぶのが得策です。日本でのケアは非常に重要です。KOKOROの体験談には監理団体の連絡先を掲載している記事もありますので、参考にしてください。

送出機関を訪ねる

・複数の送出機関に問い合わせ、対応のよかった送出機関を訪問します。そして、送出機関を比較して最終決定します。

送出機関を訪問し、できれば授業も見学しましょう

3.KOKOROサイトの体験談

KOKOROには、新聞記者が取材した先輩実習生の体験談が数十本掲載されています。

送出機関への支払い額が少なく、3年間で得た実益(差額)が大きかった5例については、送出機関や監理団体の実名なども掲載しています。(※ただし、最終的には自分の責任で判断してください。)

実習開始年 A:送出機関に支払った額 B:日本からベトナムへの送金額か送金見込額(3年分) 収支(B-A) 実習現場
2017 95,000,000 ₫ ¥3,000,000 667,053,900 ₫ 572,053,900 ₫ 農業など
2019 105,000,000 ₫ ¥3,000,000 667,053,900 ₫ 562,053,900 ₫ 食品工場
2019 115,000,000 ₫ ¥2,500,000 555,878,250 ₫ 440,878,250 ₫ パン工房
2015 90,000,000 ₫ ¥2,000,000 444,702,600 ₫ 354,702,600 ₫ 工場
2018 100,000,000 ₫ ¥2,000,000 444,702,600 ₫ 344,702,600 ₫ いちご園

❶技能実習から特定技能へ(ベトナムの日本語学校を紹介)

❷Top20表彰の送出機関で無借金訪日(送出機関を紹介)

❸いきいきとパン作り(送出機関と監理団体を紹介)

❹親切な先輩や多くの仲間と楽しい日本生活(送出機関を紹介)

❺技能実習で日本語を覚えて娘に教えたい(監理団体を紹介)

送出機関への支払い額、ベトナムへの送金額、監理団体のケア、給料以外の処遇などを各記事で紹介しています。

送出機関選びのポイント

1.送出機関を選ぶ際のポイント

送出機関などに関する情報を集める際、何に着目したらよいのでしょうか?ポイントを紹介します。

①先輩たちが支払った費用

技能実習生の受入企業(求人)を紹介してくれた監理団体(受入組合)の幹部に求人1人あたり1,000~1,500ドルの謝礼(キックバック)が支払われる事例がまん延しています。こうした費用は、最終的には実習生から送出機関への支払いに上乗せされます。先輩たちが送出機関に支払った費用を比較すると、そういう送出機関をある程度見抜くことができます。

②給料、生活費、送金額

例えば、KOKOROの体験談には、先輩たちが送出機関に支払った額や日本からベトナムに送金した額が具体的に書かれています。日本での生活費についても詳しく記載されています。額の相場やよい送出機関、監理団体を探すための参考にしましょう。

③送出機関での日本語教育の内容

・授業の内容や期間、教師のレベルなどを調べます。送出機関によっては最初と最後の数週間だけ教育し、あとは休ませるケースもあります。

・日本語をある程度身に付けてから日本に行った方が職場に溶け込みやすく、日本で日本語も上達します。日本語力を高めると、その後の就職にも有利です。

・逆に、失踪する実習生は、日本語力不足で基礎的なコミュニケーションができないことが背景になっている場合が多くあります。

・日本語教育の教室は、1教室十数名以内が望ましいとされています。送出機関の日本語の授業を見学させてもらいましょう。

④給料以外の処遇、監理団体のケアの内容

技能実習では給料以外の処遇や監理団体のケアも非常に大切です。例えば、給料が少なくても寮費や光熱費などが安ければたくさん送金できます。また、監理団体が実習生の悩みや不満に親身に対応してくれるかどうかで大きな差が出ます。

監理団体によって実習生のケアに大きな差があります。

⑤紹介手数料(紹介者への謝礼)の有無

紹介手数料を禁止している送出機関は、政府が決めた費用規定を守っていることが多く、良心的な紹介やケアを期待できる可能性が高くなります。

⑥保証金の有無

日本に行く際に保証金として数百ドル~1,000ドル(USD)を預かる送出機関があります。問題なく技能実習を終えて帰国すれば返金してくれますが、このような保証金を預かることはベトナム政府の規定に違反しています。このような送出機関も避けた方が無難です。

⑦会社名を頻繁に変更していないか

違法な業務を行ったために送出機関を続けられなくなった会社が、社名を変えて営業を続けるケースがあります。

⑧自社で業務を行っているかどうか

会社名義を他の送出機関に貸し、実際の業務を行わないケースがあります。名義を貸す送出機関も名義を借りる送出機関も避けた方が無難です。送出機関のオフィスを訪問すると、ある程度わかります。

2.DOLABの認定、VAMASの指標

DOLABの認定

ベトナムの労働者の海外派遣を扱う企業は労働・傷病兵・社会省(MOLISA)海外労働管理局(DOLAB)による認定を受けています。このうちベトナムが認定した日本に技能実習生を送り出している企業(送出機関)については、DOLABから日本の外国人技能実習機構(OTIT)に通知され、OTITのホームページに掲載されています。

外国政府認定送出機関一覧(OTIT)

VAMASのランキング

送出機関の業界団体「ベトナム海外労働者派遣協会(VAMAS)」は送出機関のランキングを毎年公表し、送出機関の評価を星の数で表しています。

・VAMASのホームページ(英語)

・6つ星 送出機関のリスト

・5つ星 送出機関のリスト

・4つ星 送出機関のリスト

・3つ星 送出機関のリスト

ただし、関係者たちによると、VAMASランキングで星の数が多い送出機関の中にも良くない送出機関があるとのことです。ランキングをうのみにせず、あくまで一つの参考としてください。

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