生活・ビザ

家族を日本に呼んだ3人のベトナム人の体験

0907-24
2022年09月07日

日本に住むベトナム人が増え、家族で暮らす人たちも多くなりました。エンジニアや留学生が先に来日し、後から家族を呼ぶケースもあります。そのようなとき、家族を日本に招く手続きはどのようにしたらよいのでしょうか?また、住宅探しや子どもの学校はどうしているのでしょうか?ベトナムから日本に家族を呼び寄せた3人のベトナム人にインタビューしました。

リポーター

◎ハ・ナム・ニンさん(会社員)

・2018年から日本の船舶運営会社に勤務(福岡県)
・来日して約3年半後に妻と息子(中学生)が合流

◎ファム・チャン・ヴァンさん(大学院に留学中)

・2018年から2年半、国立大学に留学
・2022年3月から私立大学大学院のMBAコースで留学中(京都府)
・2022年6月に夫と娘2人(中2、小5)が合流

◎グエン・ティ・ビック・タオさん(大学院に留学)

・2020年から筑波大学大学院(博士課程)で留学中
・2022年2月に夫と子ども2人が合流

住宅

――皆さんは日本でどうやって住宅を探しましたか?

住宅は会社が用意:ニンさん

私は2005年から4年間、文部科学省の奨学金で東京海洋大学の大学院に留学後、ベトナムに帰って働いていました。そして2018年、日本の船舶管理会社に就職し、福岡県で働き始めました。日本語はあまりできません。

私が来日して約3年半後に妻と長男が合流しました。私たちの住宅は会社が用意してくれました。家賃は自己負担ですが、最初の5年間は毎月、家賃補助がありました。

住宅は自分で契約:ヴァンさん

私は京都の私立大学の大学院に留学中です。以前、国立の九州大学(福岡県)に留学したときも家族で滞在し、これが2回目です。最初の留学のときは大学の留学生寮に住みましたが、今回は自分で家を探して契約しました。

子どもたちの学校

インターナショナルスクール(イメージ写真)

インターナショナルに通学:ニンさん

私は長男(来日当初は中学生)をインターナショナルスクール(授業は英語)に行かせました。授業料が年間約200万円と高く、会社の補助もないので大変でした。

娘は公立小学校で日本語をマスター:ヴァンさん

外国人への日本語教育(イメージ写真)

初めて日本に住んだときから娘2人を地元の公立小学校(授業料無料、給食は有料)に通わせました。

長女は小4の途中で転入したので、言葉が大変でした。学校は毎日放課後、娘たちのために特別に国語(日本語)を教えてくれました。また、娘たちは当初、毎週2回、放課後に約5km離れた別の小学校に通い、外国人向けの日本語支援クラスに参加しました。しかし、これは大変だったので、数カ月後、日本語支援クラスのある別の学校に転校するために家を引っ越しました。

こうして、長女は1年で日本語を約50 %理解できるようになり、さらに1年経つと約90%理解できるようになりました。一方、1年生で転入した次女は比較的楽に日本語をマスターしていきました。2回目の日本滞在では、娘たちは小中学校で言葉の不自由なく授業を受けています。

つくば市は外国人児童への対応が充実:タオさん

私たちは今年(2022年)から日本に住み始め、長男(小4)と長女(小1)は日本の公立小学校(授業料無料、給食は有料)に通っています。

つくば市には外国人の子どもが多い

私は子どもたちを呼び寄せる前につくば市教育委員会に相談しました。茨城県つくば市は国がつくった「研究学園都市」で、約300の研究機関があり、多国籍の約2万人の研究者がいます。

このため、つくば市の公立小中学校には外国人の子どもがたくさんいます。私の子どもたちが通うつくば市立東小学校では、長男のクラスの33人のうち5人が外国人、長女のクラスの31人のうち5人が外国人です。

日本語支援プログラム

外国人への日本語教育(イメージ写真)

・東小学校には、外国人向けの日本語教育プログラム(週4回の特別授業)があります。このプログラムでは、各児童の到達度に応じて指導してくれます。

東小学校はわが家(大学の寮)の最寄りの学校ではなく、約4 km離れています。しかし、外国人教育のノウハウが高いので、この学校を選びました。子どもたちはバスで通学しています。

・4年生の長男のクラスには1年生のときから在籍しているベトナム人がおり、長男をサポートしてくれます。授業でわからない場面でも、その子が通訳してくれます。

COEやビザのとり方

在留資格認定証明書(COE)のコピー

サラリーマンや留学生の家族は「家族滞在」という在留資格で日本に住むことができます。そのためには、次の2種類の許可書類が必要です。

① 在留資格認定証明書(COE)

:日本の入管に申請します。

② ビザ

:COEを取得後、ベトナムの日本大使館や総領事館に申請します。

COEの申請書類

在留資格認定証明書交付申請書
写真(縦4cm×横3cm)
返信用封筒
*宛名と住所を記入
*440円分の郵便切手をはる
*在留資格認定証明書など返送に使います
扶養者と本人とのの関係を証明する文書(下のいずれか)
*戸籍謄本
*婚姻届受理証明書
*結婚証明書
*出生証明書
*これらの書類に代わるもの
扶養者の在留カードかパスポート(コピー)
扶養者の職業や収入を証明する書類
①申請者が経営者やサラリーマンの場合
*在職証明書か営業許可書(コピー)
*住民税の課税証明書と納税証明書(1年間の総所得と納税状況が記載されていれば、どちらか1種類でOK:市役所などが発行)
②留学生などの場合
*預金残高証明書か奨学金に関する証明書

家族のCOE申請に会社も協力:ニンさん

左から長男、妻、私。右はしは日本で留学していた長女。

私が来日する前、私の在留資格やビザの取得は会社がやってくれました。しかし、家族を呼び寄せるときは、会社に協力してもらって自分で書類を用意しました。私は息子の在留資格認定証明書(COE)やビザを取るために、次のような書類を用意しました。

〈COE〉
・COE交付申請書(自分で記入)
・息子の出生証明書(ベトナムで取得)
・住民票(コンビニで発行)
・在職証明書(勤務先の会社が発行)
・労働契約書(会社が発行)
・納税証明書(日本語)
・給与に関する証明書(会社が発行)
・通帳(コピー)
・在留カード(コピー)
・息子のパスポート(コピー)
・息子が結核にかかっていない証明書(ベトナムで取得)

〈VISA〉
・VISA交付申請書
・息子のCOE
・身元保証書(会社が発行)
・招へい理由書(会社が発行)
・息子のパスポート(原本)
・息子の出生証明書

COEを取得後、在ベトナム日本国大使館にビザを申請する際は、代理店を使いました。大使館のホームページに資格のあるエージェントのリストが載っています。

家族のCOE申請は独力で:ヴァンさん

大阪入管

2022年3月にまず私が来日し、翌月、大阪入管に家族のCOEを申請しました。長くても3週間でCOEが発行されると思っていましたが、今回はCOEを申請してから受け取るまで6週間かかりました。

次に、このCOEをハノイの日本大使館に提出してビザを申請しました。私のビザを取得するときには申請から3週間かかりましたが、家族のビザは1週間もかかかりませんでした。多分、ビザ発給の申請数が減っているからでしょう。

入管への申請書類(日本語)はすべて自分で作成し、大学は何もサポートしてくれませんでした。大学によっては、留学生のCOEを入管に申請する際に、家族を連れてくるかどうかを聞いて、家族のCOEも同時に申請してくれる場合もあります。しかし、今回はサポートがなく、来日後に自分で申請せざるを得ませんでした。

家族のCOE申請は自力で:タオさん

筑波大学

私も夫と子どもたちのCOEを水戸入管に自分で申請しました。インターネットで申請書の用紙をダウンロードし、日本語と英語を選べるので、私は英語で記入しました。

これに、家族のパスポート(コピー)や子どもたちの出生証明書、夫との結婚証明書、私の学生証(コピー)、在留カード(コピー)などを添えて入管に提出しました。筑波大学では、奨学金受給証明書は学生証を学内の機械に挿入すれば簡単に取得できます。

私は申請から約1カ月後(2021年1月)に家族のCOEを受け取り、その後、家族のビザも取得しました。しかし、新型コロナの影響で来日が遅れ、2022年2月にやっと来日できました。

日本での生活

ヴァンさんと家族

――住宅や学校以外で日本での生活について教えてください。

ニンさん

① 職場で使う言語

私は日本語を話せません。しかし、船の管理会社で航海中の船を管理するのが私の仕事で、業務で一般的に英語が使われており、日本人も英語を使っています。また、社内会議は日本語ですが、私が関係する仕事については、参加者が英語で話してくれるので、大丈夫です。

② 公共交通

日本では電車やバスが発達していますが、日本語の車内アナウンスや路線図を理解できないので、「予習」が大事です。どこに行く場合でも、何時にどのプラットホームから電車に乗ればよいか、いくつ先の駅で降りるか、どの駅で乗り換えるかなどを、事前にきちんと調べています。

最初は「乗換案内」というYahooアプリを使っていましたが、昔は日本語版しかなかったので大変でした。最近はベトナム語や英語でGoogle mapなどを利用しています。

③ 公的証明書

住民票などの公的書類の一部はコンビニの機械でも取得できます。それ以外の書類も、市役所のホームページで事前に調べ、必要な提出物を準備してから市役所に行けば、あまり日本語が話せなくても何とかなります。

ヴァンさん

① SIMカード

私はベトナムの電気通信業界で働いていますが、日本の携帯電話のSIMカードの販売は次のような点が不可解です。

・日本でSIMカードを使うにはキャリアとの契約が必要

・キャリアと契約するには日本の銀行口座が必要

・ところが、口座の開設には電話番号が必要

ゆうちょ銀行なら、電話番号は後で登録してもよいので、私はゆうちょ銀行で口座を開設しました。その後、キャリアと契約してやっとSIMを入手できました。

② 大学によってサポートに違い

九州大学

最初に留学した九州大学には24時間受付の外国人サポートシステムがありました。たとえば、急病などで困った場合、サポートデスクにメッセージを送ると、チームが助けてくれます。私の友人が腹痛で苦しんだときは、チームが救急車を手配してくれました。しかし、今の大学にはこうした制度はありません。

タオさん

① 行政手続き(勤務先のサポート)

私が来日したときは、筑波大学が手配したチューター(世話係)の日本人学生が市役所への届出など行政関係の手続きを手伝ってくれました。しかし、家族を呼び寄せるときは、自分で手続きをしました。私は日本語を少ししか話せませんが、難しい話では英語を使い、それで通じなければGoogle翻訳を使っています。また、ビデオ電話で通訳サービスを使うときもあります。

② 生活費

夫が来日後、週28時間、寿司屋でアルバイトをしています。 私の学費や子どもの授業は無料ですが、子どもたちの教育にさまざまな費用がかかります。夫のアルバイト代を使ってランドセルや文具など必要なものを少しずつ買い足しています。

まとめ

日本に住むベトナム人のエンジニアや留学生が家族を日本に呼び寄せた際の手続きや生活の様子について紹介しました。子どもたちの学校についても体験談を語っていただきました。

最近は、日本の小中学校も外国人の子どもたちをサポートする機会が増えました。学校によってサポート内容に違いがありますが、手厚い日本語教育支援を受けた小学生の場合、2、3年で日本語の授業をほとんど理解できるようになるケースが多いようです。

皆さんが日本でご家族と一緒に暮らす際、この記事が参考になると思います。また、身近にそういう知人がいる方はこの記事をその方々にシェアしていただけますと、幸いです。