体験談(留学・高度)
今回の先輩
Duong Phuc Tin(ズオン・フック・ティン)さん
- 2013年6月Yến Dung So3高校 卒業
- 2013年9月ベトナムの外国語学校入学
- 2014年4月東京都内の日本語学校入学
- 2016年3月日本語学校卒業
- 2016年4月開知国際大学入学
- 2019年8月開知国際大学中退
〈1995年生まれ、バックジャン(Bac Giang)市出身〉
はじめに
私はベトナムの日本語学校で半年間勉強して訪日し、東京の日本語学校に2年間在籍後、千葉県柏市の開智国際大学に入りました。楽しい大学生活を送っていましたが、4年生の夏、在留期間を更新できず、卒業目前で大学を中退して2019年8月15日にベトナムに帰国しました。在留期間を更新できなかったのは、アルバイトの勤務時間が法律の制限を大きく超えたからです。今では、「アルバイトを少し減らし、もっと勉強をすればよかった」と悔やんでいます。今後、ベトナム人の仲間や後輩が同じ目にあわないよう、入管とのやり取りなど、私の具体的な体験をお伝えします。
【編集部からのアドバイス】
日本で留学したり働いたりするためには「在留資格」が必要です。「在留資格」と「ビザ」は本当は違うものですが、在留資格のことを「ビザ」と呼ぶケースも多いので、在留資格とビザを似たようなものと理解してもかまいません。「留学」の在留資格の場合、原則として就労はできませんが、「資格外活動許可」を取得すれば、アルバイトはできます。ただし、勤務時間は週28時間以内(学校の長期休暇時は週40時間以内)と制限があり、違反すると在留資格を失う(=在留期間を更新できない)原因になります。
私の日本での在留期間更新
私が訪日してからの在留期間更新の流れは次の通りでした。
① 2014年【東京の日本語学校入学】
「留学」の在留資格で訪日(在留期間は1年間)
☆在留資格取得許可申請は日本語学校が代行
② 2015年【日本語学校2年目】
在留期間更新(1年間)
☆更新許可申請は日本語学校が代行
③ 2016年【大学入学】
在留期間更新(2年間)
☆更新許可申請は自分で行った
☆日本語学校の成績がある程度良かったので、2年間の期間更新ができた。同じ大学に、入学時に4年間の期間更新を許可されたベトナム人も複数いた。
④ 2018年【大学3年】
在留期間更新(1年間)
☆更新許可申請は自分で行った
☆1年間しか期間更新できなかったのは、大学での取得単位数が少なかったことが原因か。
⑤ 2019年【大学4年】
在留期間更新(不許可)→大学中退、帰国
長時間アルバイトと暮らし
私の訪日後の最初のアルバイトは学校からの紹介で、倉庫での荷物仕分けでした。訪日して2年目以降は、大手チェーンの焼き鳥店と牛丼店で働きました。焼き鳥店では夜勤(22時~朝5時半)が多く、夜勤の時給は1,370円(約290,000ドン)もありました。私は週に2、3回(夏休みなどには週5回)、夜勤を担当しました。牛丼店では、夜勤(22時~9時)で時給1,250円、それ以外の時間で時給1,005円をもらいました。
留学生のアルバイトは日本の法律で週28時間以内と決まっていますが、私は週40時間ぐらい働いていました。また、夏休みなど長期休暇時は法律では週40時間以内なのに、私は50~60時間働きました。その結果、年間約240万円の給料をもらっていました。一方、大学での成績は低迷しました。
私の家計簿(1カ月の平均)
※100円=21,195 VND(2019年11月30日現在)
収入(合計180,000円~250,000円) | |
アルバイト2件(牛丼店、焼き鳥店) |
合計180,000円~250,000円 ※税引き後の手取り給料 ※約250,000円は学校の長期休暇時 |
支出(合計 150,000円~162,000円) | |
家賃 |
35,000円 ※1人暮らし ※東京に比べると相当安い ※ワンルーム、シャワー&バス |
光熱費 |
7,000円 ※電気・水道・ガスの合計 |
携帯電話+自宅のインターネット |
10,000円 |
食費 |
28,000円~30,000円 ※バイト先の飲食店で格安で食べる日もある ※外食費含む |
授業料 |
60,000円 ※奨学金や授業料減免なし(対象は成績優秀者のみ) |
雑費 |
10,000~20,000円 ※衣類、交通費など |
差額(30,000~90,000円) | |
差額 |
30,000~90,000円 ※貯まったお金は家族への仕送りや旅行、一時帰国、保険などに使った ※実家への仕送りは5年間で200万円以上 |
入国管理局とのやり取り
私は2016年の大学進学時、東京出入国在留管理局千葉出張所に在留期間更新許可を申請しました。この時は在留期間を2年間更新でき、2018年(大学3年)は1年間更新できました。
更新許可申請では、最初に許可申請書や在学証明書、成績証明書などを提出しました。すると、後日、入管から自宅にはがきが届き、課税証明書や給与明細、通帳(3カ月分のコピー)を追加で提出するように求められました。これらは、多くの留学生が求められるのと同じ資料です。
私は、二つのアルバイト先の書類を出すと勤務時間超過がばれると思い、焼き鳥店の課税証明書と給与明細だけを提出しました。通帳も、焼き鳥店からの給料が振り込まれる口座と牛丼店からの振込口座をわけていたので、焼き鳥店からの振込口座の通帳だけを提出し、在留期間を更新することができました。
しかし、2019年の更新許可申請時は違いました。入管から届いたはがきに「賃金台帳」も提出するように書かれていました。賃金台帳は、勤務先が従業員の労働時間や給与などを記載する書類で、給与明細よりも詳しい内容になっています。しかも、はがきには、焼き鳥店だけではなく牛丼店の賃金台帳も提出するように書かれていました。入管が私の勤務先のことをどこかで調査し、両方の賃金台帳を提出するように指定してきたのです。
仕方なく両店で賃金台帳を発行してもらって入管に提出すると、再度はがきが届き、入管に出頭するよう求められました。指定日時に入管に行くと、個室に連れて行かれ、私のアルバイト勤務に関する調査資料を見せられました。担当官から「あなたは規定の時間を超えて働いたので、在留期間を更新出来ない」と言われ、私は日本に在留し続けることができなくなりました。
在留資格更新の分かれ目
私は留学のために約150万円の借金をしました。ベトナムの日本語学校に支払った学費や寮費以外に紹介手数料なども含まれています。日本での学費と生活費をまかない、借金も返済するためには、週28時間のアルバイトだけでは無理でした。しかし、今にして思うと、アルバイトをもう少し減らすことはできました。
【編集部からのアドバイス】
・ティンさんがアルバイトをしすぎたのは、留学前につくった多額の借金が背景にあります。少ない借金で留学できるケースはたくさんあります。情報を集め、なるべく借金をせずに訪日しましょう。
・ティンさん以外にもアルバイト時間の超過で在留期間を更新できず、途中で帰国する人はたくさんいます。ティンさんは「在留期間更新は学校の成績にも左右される。大学入学時は在留期間を2年間更新できたが、3年の時は1年間しか更新できなかった。大学での取得単位数が少なかったことが影響したと思う。今回も成績は悪かったので、厳しく調査されたのかも知れない」と話しています。
写真で見る私の日本留学
私は、日本で大学を卒業して日本で就職しようと思って訪日しました。その後、ベトナムの日系企業で働きたいと希望が変わりましたが、残念ながら卒業目前で帰国するはめになりました。たくさん仕送りをして家族に喜んでもらおうと思って働きましたが、こういうことになって残念です。今にして思えば、アルバイトを少し減らして、もう少し勉強すればよかったと思います。
帰国後すぐに仕事が見つかり、今はハノイの技能実習生送出機関で働いていますが、これから訪日するベトナムの後輩には同じ過ちを繰り返してほしくないと思い、私の失敗談を紹介しました。
最後に、私の留学生活を写真で振り返り、日本のよさ、留学の素晴らしさをベトナム人の後輩の皆さんにお伝えできればと思います。
■ 2015年冬・東京
日本語学校の仲間たちと宴会。ベトナムや中国、ネパール、台湾などアジア各地から留学生が集まり、会話の共通言語は日本語でした。学期末試験の後などには、こうして大勢で飲みに行きました。
■ 2015年12月・箱根
■ 2016年3月・日本語学校卒業
日本語学校の卒業式の会場前で記念撮影。いろんな国の人と一緒に学びました。【東京都内で】
■ 2017年・大学2年(アルバイト仲間)
■ 2019年・大学4年
■ 2019年・大学4年(帰国直前)
焼き鳥店や牛丼屋でアルバイトをする日は、このような「まかない(従業員に格安で提供される食事)」をよく食べました。
今回の先輩
Duong Phuc Tin(ズオン・フック・ティン)さん
- 2013年6月Yến Dung So3高校 卒業
- 2013年9月ベトナムの外国語学校入学
- 2014年4月東京都内の日本語学校入学
- 2016年3月日本語学校卒業
- 2016年4月開知国際大学入学
- 2019年8月開知国際大学中退
〈1995年生まれ、バックジャン(Bac Giang)市出身〉
はじめに
私はベトナムの日本語学校で半年間勉強して訪日し、東京の日本語学校に2年間在籍後、千葉県柏市の開智国際大学に入りました。楽しい大学生活を送っていましたが、4年生の夏、在留期間を更新できず、卒業目前で大学を中退して2019年8月15日にベトナムに帰国しました。在留期間を更新できなかったのは、アルバイトの勤務時間が法律の制限を大きく超えたからです。今では、「アルバイトを少し減らし、もっと勉強をすればよかった」と悔やんでいます。今後、ベトナム人の仲間や後輩が同じ目にあわないよう、入管とのやり取りなど、私の具体的な体験をお伝えします。
【編集部からのアドバイス】
日本で留学したり働いたりするためには「在留資格」が必要です。「在留資格」と「ビザ」は本当は違うものですが、在留資格のことを「ビザ」と呼ぶケースも多いので、在留資格とビザを似たようなものと理解してもかまいません。「留学」の在留資格の場合、原則として就労はできませんが、「資格外活動許可」を取得すれば、アルバイトはできます。ただし、勤務時間は週28時間以内(学校の長期休暇時は週40時間以内)と制限があり、違反すると在留資格を失う(=在留期間を更新できない)原因になります。
私の日本での在留期間更新
私が訪日してからの在留期間更新の流れは次の通りでした。
① 2014年【東京の日本語学校入学】
「留学」の在留資格で訪日(在留期間は1年間)
☆在留資格取得許可申請は日本語学校が代行
② 2015年【日本語学校2年目】
在留期間更新(1年間)
☆更新許可申請は日本語学校が代行
③ 2016年【大学入学】
在留期間更新(2年間)
☆更新許可申請は自分で行った
☆日本語学校の成績がある程度良かったので、2年間の期間更新ができた。同じ大学に、入学時に4年間の期間更新を許可されたベトナム人も複数いた。
④ 2018年【大学3年】
在留期間更新(1年間)
☆更新許可申請は自分で行った
☆1年間しか期間更新できなかったのは、大学での取得単位数が少なかったことが原因か。
⑤ 2019年【大学4年】
在留期間更新(不許可)→大学中退、帰国
長時間アルバイトと暮らし
私の訪日後の最初のアルバイトは学校からの紹介で、倉庫での荷物仕分けでした。訪日して2年目以降は、大手チェーンの焼き鳥店と牛丼店で働きました。焼き鳥店では夜勤(22時~朝5時半)が多く、夜勤の時給は1,370円(約290,000ドン)もありました。私は週に2、3回(夏休みなどには週5回)、夜勤を担当しました。牛丼店では、夜勤(22時~9時)で時給1,250円、それ以外の時間で時給1,005円をもらいました。
留学生のアルバイトは日本の法律で週28時間以内と決まっていますが、私は週40時間ぐらい働いていました。また、夏休みなど長期休暇時は法律では週40時間以内なのに、私は50~60時間働きました。その結果、年間約240万円の給料をもらっていました。一方、大学での成績は低迷しました。
私の家計簿(1カ月の平均)
※100円=21,195 VND(2019年11月30日現在)
収入(合計180,000円~250,000円) | |
アルバイト2件(牛丼店、焼き鳥店) |
合計180,000円~250,000円 ※税引き後の手取り給料 ※約250,000円は学校の長期休暇時 |
支出(合計 150,000円~162,000円) | |
家賃 |
35,000円 ※1人暮らし ※東京に比べると相当安い ※ワンルーム、シャワー&バス |
光熱費 |
7,000円 ※電気・水道・ガスの合計 |
携帯電話+自宅のインターネット |
10,000円 |
食費 |
28,000円~30,000円 ※バイト先の飲食店で格安で食べる日もある ※外食費含む |
授業料 |
60,000円 ※奨学金や授業料減免なし(対象は成績優秀者のみ) |
雑費 |
10,000~20,000円 ※衣類、交通費など |
差額(30,000~90,000円) | |
差額 |
30,000~90,000円 ※貯まったお金は家族への仕送りや旅行、一時帰国、保険などに使った ※実家への仕送りは5年間で200万円以上 |
入国管理局とのやり取り
私は2016年の大学進学時、東京出入国在留管理局千葉出張所に在留期間更新許可を申請しました。この時は在留期間を2年間更新でき、2018年(大学3年)は1年間更新できました。
更新許可申請では、最初に許可申請書や在学証明書、成績証明書などを提出しました。すると、後日、入管から自宅にはがきが届き、課税証明書や給与明細、通帳(3カ月分のコピー)を追加で提出するように求められました。これらは、多くの留学生が求められるのと同じ資料です。
私は、二つのアルバイト先の書類を出すと勤務時間超過がばれると思い、焼き鳥店の課税証明書と給与明細だけを提出しました。通帳も、焼き鳥店からの給料が振り込まれる口座と牛丼店からの振込口座をわけていたので、焼き鳥店からの振込口座の通帳だけを提出し、在留期間を更新することができました。
しかし、2019年の更新許可申請時は違いました。入管から届いたはがきに「賃金台帳」も提出するように書かれていました。賃金台帳は、勤務先が従業員の労働時間や給与などを記載する書類で、給与明細よりも詳しい内容になっています。しかも、はがきには、焼き鳥店だけではなく牛丼店の賃金台帳も提出するように書かれていました。入管が私の勤務先のことをどこかで調査し、両方の賃金台帳を提出するように指定してきたのです。
仕方なく両店で賃金台帳を発行してもらって入管に提出すると、再度はがきが届き、入管に出頭するよう求められました。指定日時に入管に行くと、個室に連れて行かれ、私のアルバイト勤務に関する調査資料を見せられました。担当官から「あなたは規定の時間を超えて働いたので、在留期間を更新出来ない」と言われ、私は日本に在留し続けることができなくなりました。
在留資格更新の分かれ目
私は留学のために約150万円の借金をしました。ベトナムの日本語学校に支払った学費や寮費以外に紹介手数料なども含まれています。日本での学費と生活費をまかない、借金も返済するためには、週28時間のアルバイトだけでは無理でした。しかし、今にして思うと、アルバイトをもう少し減らすことはできました。
【編集部からのアドバイス】
・ティンさんがアルバイトをしすぎたのは、留学前につくった多額の借金が背景にあります。少ない借金で留学できるケースはたくさんあります。情報を集め、なるべく借金をせずに訪日しましょう。
・ティンさん以外にもアルバイト時間の超過で在留期間を更新できず、途中で帰国する人はたくさんいます。ティンさんは「在留期間更新は学校の成績にも左右される。大学入学時は在留期間を2年間更新できたが、3年の時は1年間しか更新できなかった。大学での取得単位数が少なかったことが影響したと思う。今回も成績は悪かったので、厳しく調査されたのかも知れない」と話しています。
写真で見る私の日本留学
私は、日本で大学を卒業して日本で就職しようと思って訪日しました。その後、ベトナムの日系企業で働きたいと希望が変わりましたが、残念ながら卒業目前で帰国するはめになりました。たくさん仕送りをして家族に喜んでもらおうと思って働きましたが、こういうことになって残念です。今にして思えば、アルバイトを少し減らして、もう少し勉強すればよかったと思います。
帰国後すぐに仕事が見つかり、今はハノイの技能実習生送出機関で働いていますが、これから訪日するベトナムの後輩には同じ過ちを繰り返してほしくないと思い、私の失敗談を紹介しました。
最後に、私の留学生活を写真で振り返り、日本のよさ、留学の素晴らしさをベトナム人の後輩の皆さんにお伝えできればと思います。
■ 2015年冬・東京
日本語学校の仲間たちと宴会。ベトナムや中国、ネパール、台湾などアジア各地から留学生が集まり、会話の共通言語は日本語でした。学期末試験の後などには、こうして大勢で飲みに行きました。
■ 2015年12月・箱根
■ 2016年3月・日本語学校卒業
日本語学校の卒業式の会場前で記念撮影。いろんな国の人と一緒に学びました。【東京都内で】
■ 2017年・大学2年(アルバイト仲間)
■ 2019年・大学4年
■ 2019年・大学4年(帰国直前)
焼き鳥店や牛丼屋でアルバイトをする日は、このような「まかない(従業員に格安で提供される食事)」をよく食べました。